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防壁門の改良


 東の防壁門にたどり着くと、リオネとジュノとセトが待っていた。


「領主様!」


「待たせてすまない。早速、改良した門を見せてもらえるか?」


 一応、改良案で構造は頭の中に入ってはいるが、きちんと目で確かめておきたいからな。


「わかりました。お見せしますね」


 リオネがそう返事してジュノとセトに視線をやると。


 それだけでジュノとセトは移動して門にかけた梯子を上っていった。


 リオネと並んで進んでいくと、門が閉まっている。


 俺が土魔法で作った簡易的な扉ではなく、もっと頑強で分厚い扉になっていた。


「ジュノ、セト!」


「おうよ!」


 リオネが声をあげると、門を上っていたジュノとセトが巻き上げ機を回し始めた。


 すると、鎖で繋がれた扉がゆっくりと上がっていくが、ちょっとセトの力不足感が見受けられるな。必死に巻き上げ機を動かしているがかなり辛そうだ。


「ちょっとセト! 頑張りなさいよ!」


「これでも精一杯だよ! というか、僕よりリオネの方が力あるよね!?」


「そ、そんなわけないでしょ! やめてよ、そういうこと言うの!」


 セトから思わず口撃を受けてリオネが顔を赤くする。


 確かに小柄で華奢なセトよりも、女性であるリオネの方が力があるのかも――


「領主様?」


「なにも考えてないから」


 なんて考えていると、リオネから不穏なオーラが漂ってきたので慌てて誤魔化す。


 こういう話題に俺が口を挟んでもロクなことにはならないな。


 必死に思考を切り替えていると、ようやく扉が開ききった。


「巻き上げ機はローグとギレムが作ってくれたの?」


「土魔法で作りましたよ。さすがに鎖はローグさんから貰いましたけど」


 苦笑いしながら言うリオネだが、土魔法だけで巻き上げ機を作ってしまうことが十分すごい。そんなもの構造をしっかりと把握していないとできないだろうに。


 さすがは拠点作りのプロだけあって、その辺の知識がしっかりしているな。


 視線を上に向けると天井がアーチ状になっており、ところどころ穴が空いている。


「あれが殺人孔ってやつだね?」



「はい、敵が侵入してきた際はあそこの穴から槍などの武器で突いたり、矢を射かけたり、高熱のお湯や油を落としたりできます」


 リオネがそう説明していると、天井の方からタタタタと足音が聞こえる。


 恐らくジュノやセトが移動しているのだろう。


 二人はそれぞれの穴から顔を覗かせた後に、土魔法で作った槍を穴から突き出した。


 有事の際はこのようなイメージで攻撃するというイメージだろう。



「……確かにこれなら一方的に攻撃ができるね」


 あそこにある穴目がけて的確に攻撃をするのも難しいしな。


 ここまで侵入されること自体、最悪なケースではあるが、これがあるだけでかなり時間を稼ぐことはできそうだ。


 ロクな対策もせずに入れば、バタバタとここで倒れることになるだろうな。


 それに魔法使いや軍人のような戦える人でなくても、それなりの足止め効果は期待できるのでとても有効だ。


 殺人孔を観察しながら歩いていると、天井には落とし格子があるのが見えた。


 先端には鋭い針がついており、落下した際に串刺しにできるようにしてあるのだろう。


 僅かな日の光に反射して先端が鈍く光る。


「……下ろさなければ何ともないとはわかっているけど、ああいうのがぶら下がっていると怖いね」


「はい、ですが有事の際はとても有効ですので」


「うん、わかってる。反対しているわけじゃないから」


 目の前には吊り上げ式の橋が設置されている。もし、そこが突破されてしまった際は、これを下ろすことで敵を閉じ込めることができるのだ。


 仮に魔物が数匹なだれ込んできても、落とし格子があれば閉じ込めて体勢を立て直すことができる。


 しっかりとメンテナンスをして事故が起きないようにだけ気を付ければいい。


 逆に王都の城門にあるやつは結構揺れていたし、変な音も鳴っていたので怖かった。


 あんな風にはならないようにしないと。


 落とし格子の確認を終えると、最後に吊り上げ式の橋だ。


 こちらは格納式になっており巻き上げ機も天井にあるらしい。


 殺人孔の道と繋がっているのかこちらもセトとジュノが下ろしてくれた。


 すると、防壁門の中に眩しい光が入ってきた。


 橋を渡ると平原が広がっており、その奥には大森林が見ている。


「うん、堀にピッタリね」


 架けられた橋がピッタリなことを確認してリオネが満足そうに頷く。


 橋の横側を眺めてみると深く堀が作られており、橋を架けない限りは簡単に入ってくることができない仕掛けになっている。


 まだ防壁に沿ってズラリと堀を作ることはできないが、いずれはやっておきたいと改良案にも載っていたな。


 前世の記憶で西洋の城門なんかにもこういった仕掛けがあるのは、うっすらと知っていたけど実際に目にして説明されるとすごいな。


 ここには先人たちが積み重ねた知恵がとても詰まっている。


 こういうのがあるとわかると、有事の際は少し余裕を持って行動することができそうだ。


「すぐにできる改良として、門をこのようにしてみましたがどうでしょう?」


「うん、すごくいいよ。これならもしものことがあってもかなり時間を稼ぐことができそうだ。この調子で反対側の門の改良も頼むよ」


 改良案のイメージ図やリオネの丁寧な説明もあってとてもわかりやすかった。


「ありがとうございます!」


 そう頼むとリオネが嬉しそうに笑った。


「ノクトー!」


 防壁門の確認が終わると、ベルデナがやってきた。


「ベルデナ、どうかしたのかい?」


「酒場を開けるからグラブが来てほしいんだって」


「まだ夕方よりも前だぞ? 早くないか?」


 そろそろ開店するという報告は聞いていたが現在の時刻は昼過ぎだ。まだ夕方と呼ぶには少し早いと思うのだが。


「なんかローグとかギレムとかが押しかけて早く開けることになったんだって」


「ああ、なるほど」


 どうやら酒場を待ち望んでいた領民たちに押される形になったらしい。


 血走った目で開けろと詰め掛けるドワーフ二人の姿が容易に想像できた。


「そうだとしたら急がないといけないな」


 俺がまだ来ていないということで乾杯が始められないとかなっていそうだ。


「酒場が開いたのか!?」


 俺たちの会話が聞こえたのか防壁門に上っていたジュノとセトが血相を変えて降りてくる。


「そうだけど、まだ東側の門が終わってないわよ?」


「うっ、それもそうだった」


 残念そうな彼女たちを見る限り、酒場の開店を待ちわびていたのだろう。


「まあ、あっちから魔物がやってくることはほとんどないしんだし、今日のところは改良祝いって切り上げていいんじゃないかな?」


「りょ、領主様がそう言うんだったらねえ?」


「やった! 久し振りにお酒が呑める!」


 俺がそう言うと、リオネたちは表情を変えて喜んだ。


 大森林側の改良は済んでいることだし、ここ最近はリオネたちも精力的に作業をしてくれていたしな。ちょっとくらいの息抜きだって必要だ。


 今から作業して夕方になるまで数時間程度しかないわけだし。


「じゃあ、酒場に向かおうか」



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