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領民たちの頑張り


「アースシールド!」


 うちの領地にやってきてくれた土魔法使いのリオネ、ジュノ、セトは早速防壁作りにとりかかった。


 俺としては長旅で疲れているだろうし、領地に慣れる意味でも数日くらい休んでからと勧めたのだが、三人の気持ちの昂ぶりに負けてしまった。


 今までこんな風に必要とされたことが少なかったので嬉しくて仕方がないのだろう。


 俺も最近は領主として必要にされるようになり、嬉しくて仕方がないので気持ちは痛いほどわかるので無理に止められないや。


 今は三人揃ってアースシールドをどんどんと量産しているところだ。


 俺のスキルで拡大すればいいとわかっているので、魔力消費を極限まで抑えたミニチュアサイズ。


 やはり、小さいと楽なのかサクサクとできていく。


「すみません、領主様。並べる間隔が合っているか確認したいので大きくしてもらえますか?」


「わかったよ」


 リオネに頼まれて俺はミニチュアサイズのアースシールドを一つ拡大。


 すると、出来上がっている防壁の隣にピッチリと出来上がった。


 すごい。拡大されて防壁になった時の間隔を完全に把握している。


 試しにジュノやセトが作ったものも拡大してみると、隙間ができることなくピッタリと合わさっていた。


「ありがとうございます! この間隔で大丈夫そうね!」


「なら、俺たちはドンドン並べていくか」


「後は領主様が大きくしてくれるからね」


 本当に念のための確認だったのだろう。


 土魔法でいくつものパーツを組み合わせ、陣地を作っていた彼女たちにとって、同じ大きさのアースシールドを作って並べるなんて朝飯前なんだろう。


 俺なんて最初の頃は作っては位置を調整してとすごく時間をかけてやっていたのに。


 いや、落ち込む必要はない。彼女たちは土魔法のプロなんだから、歴然とした差があるのは当然だ。


 そんなことを考えながらリオネたちが作っていくアースシールドをドンドンと拡大していく。


 それだけで防壁がズラリと並んでいく。自分一人でやっていたのとは雲泥の差だ。


 こちらがスキルを使用するのが追い付かないくらい。


 でも、このペースでやれるのであれば、何十年という時間をかけることなく領地の全てを覆ってしまうこともできそうだな。


「ノクト様―! ちょっといいですかい?」


 拡大をかけながらそんな希望を抱いていると、後ろから俺を呼ぶ声が。


 振り返ると、グレッグをはじめとした領民たちが何人か。


 顔ぶれを見る限り、オークとの戦いの時に率先して前に出ていた戦士たちだ。


「ああ、構わないよ」


「……彼女たちは?」


 見知らぬ魔法使いたちが気になるのか、グレッグがリオネたちに視線を向けながら尋ねる。


「ああ、ついさっきここで住んでくれることになった魔法使いたちだよ。今は防壁作りをやってくれている。仲良くしてあげてくれ」


「なるほど。それでドンドンと防壁ができていたんですね。こりゃ頼もしい」


 遠くからでも防壁が出来上がる様子は見えていたのだろう。


「グレッグたちがやってきたのは防壁が気になったからかい?」


「いえ、違います。それとは別にノクト様にお願いしたいことがありまして……」


 防壁が急激に増えていくことが気になったわけではなく、これとは別に要件があるようだ。


「なんだい?」


「俺たちで自警団を設立してもいいでしょうか?」


 自警団。それは軍などの公安的な組織が機能していない時に、編成される私設軍だ。


 領主であれば、私兵といえる戦力を抱えているのが普通だ。


 しかし、ビッグスモール領の前領主は亡くなり、領民が逃亡した際に私兵と呼べる者もいなくなってしまった。今の俺たちは公的な戦力組織を所持していない。


 オークの襲撃の際は戦える領民を総動員して撃退したわけだが、本来の領地防衛という観点から見ると正しい戦い方ではないのは明らかだ。


 魔物の襲撃や災害、治安維持を担当してくれるような組織を作らなければいけない。


「そうだね。またいつ大森林から魔物がやってくるかわからない現状なんだ。きちんとそれに対処してくれるような人材は必要だね」


「それもありますが、やっぱり自分たちの住んでいる場所なんで。自分たちで守りたいんです」


「領主であるノクト様が前に出ているのに、俺たちが前に出ないわけにはいかないしな!」


「巨人族とはいえベルデナちゃんにばっかり負担をかけるのも男として情けねえしな」


「そんなこと言って、いざ彼女と戦ったらボコボコにされるだろ」


「うっせ! それはお前も同じだろ!」


 グレッグだけでなく他の領民も笑いながらそんなことを言う。


 領民がここまで領地のことを考えて、実際に行動に移してくれるなんて感激だ。


 グレッグたちの正直な想いに涙が出そうになる。


「皆、ありがとう。そして、すまない。本来なら俺から頼まないといけなかったことなのに」


「謝らないでくださいノクト様。俺たちがやりたくて言ってることですから。それで自警団の設立はどうですか?」


「是非ともお願いするよ。自警団の設立を許可するよ」


「「ありがとうございます」」


 自警団の設立を許可するとグレッグをはじめとする領民たちが頭を下げる。


 頭を下げたいのはむしろこちらの方だった。


「現状、ビッグスモール領では君たち以外に戦力と呼べる組織はない。そのことを肝に命じて実力を高めてほしい」


「わかりました」


「それとグレッグたちも日々の生活がある中、自警団としての活動をしてくれるわけだ。活動をするにあたって資金も必要になる。俺が定期的な支援をするよ」


「それってお金がもらえるっていうことですか!?」


「バカ。言葉を慎め」


 俺の説明に若者が興奮し、年長者に頭を叩かれる。


 失礼になる言葉かもしれないけど、その素直さが好ましい。


 別に相手は貴族というわけでもないんだ。俺も迂遠にではなくハッキリと口にして保障してやるべきだろう。


「気持ち程度のものだけど払うよ」


「「おお!」」


 私設軍とはいえ、現状我が領地に戦力はない。


 そうなると必然的に自警団の皆に対処を頼むことになる。


 彼らにだってそれぞれの生活がある。貴重な時間の隙間を縫って自警団の活動をしてくれる。時には魔物と戦って命を張ることだってある。


 俺に雇われた私兵でもないからといって、ロクな保障もせずに使うのは違うと思った。


 通常の役割や関係性とは違ったものかもしれない。


 でも、彼らが彼らなりにできることをやるように、領主である俺も領主なりにできることをやれば上手くいくような気がした。


 ラエルが宝石で儲けた莫大な利益があることだし問題もない。


 それにゆくゆくは将来的に自警団の人たちが、ビッグスモール家の私兵になってくれればとも思っている。


 今からお金を払っておくことは、その時にもきっと無駄にならないはずだ。


「自警団になってくれそうな人は大体何人くらいかわかるかい?」


 俺がそう尋ねると、グレッグは少し考え込む。


「……俺たちを含めて三十人くらいは集まるかと」


 ふむ、三十人くらい集まってくれそうなのか。復興で何かと忙しい現状を考えると、集まりはいい方かもしれない。


「わかった。正式に団員が決まったら名簿を書いてメアに渡しておいてくれ。それと団員を引っ張ることになる団長についても」


「わかりました! では、失礼します!」


 自警団とはいえ、きちんと報酬を出す以上は団員の確認はしておきたい。


 そのように指示するとグレッグたちは意気揚々と去っていった。


 頑張ってくれる領民を見ると、こちらもやる気が出てくるな。


「俺もリオネたちが作ってくれたアースシールドを拡大しないと……」


 リオネたちはどこまで進んだのだろうと確認すると、既に彼女たちは何百メートルも先にいた。


 ……追い付く気がしないや。






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