特産品計画
ルノールやラエルと商店の話を詰めた俺はすぐに建設に移れるようにローグとギレムに紹介した。
俺のスキルを使えばすぐにでも店を建てることはできる。後は商売をしやすいように、どのような内装にすればいいか話し合うだけだ。
後は希望に沿って模型で修正を重ねて俺が拡大してやればいいだけだ。
まさか民家までそのような形で増産していると知らなかったラエルは、顔をひきつらせながら「反則ですね」と言っていた。
少ない時間、労力、資材で店を建てられるのだ。自分でも反則だと思う。
「ラエル、少し見てほしい商品があるんだが畑に来てくれないか?」
「ええ、ぜひ」
商店の方を任せた俺は、ラエルに新たなる商品を売りつけるべく動いていた。
それは以前からこの領地の特産品にしようとしていたものである。
ラエルを連れて、俺は試験的に栽培している畑へと移動する。
「ここにある畑を見てくれ」
「……オレの実をはじめとする一般的な野菜などの畑が広がっていますね」
ここらで栽培しているのは大根、レタス、ニンジン、オレの実、ネギ、いんげん、玉ねぎ、トマトといった野菜類。ビッグスモール領でもよく育てられているものだ。
それがわかっているからこそラエルは戸惑っている。いつも見て買っている商品を今更売り込むはずがないからな。
「そう、何の変哲もないうちの領地で育てられる野菜だが味は違うんだ」
「味ですか?」
怪訝な表情を浮かべるラエル。
俺は畑に生っているオレの実をもぎ取って割り、剥き出しになった橙色の果肉を差し出す。
「食べてみてくれ」
「では……」
俺が差し出すとラエルはおそるおそるといった風に果肉をつまんで口の中に入れる。
すると、ラエルの涼しげな瞳が大きく見開かれた。
「甘いっ!」
「だろう?」
「私の知っているオレの実とは比べ物にならないくらい濃厚で甘いです。一体どうやってこのような味を?」
これを食べた後にこのような疑問を抱くのは当然だろう。
企業秘密にしたいところだが懇意にしているラエルにはこれらを多く買い取ってほしいので、どのような原理で出来ているかを教えてあげる。
「なるほど、【縮小】にそのような使い道があったとは。ノクト様にしかできない栽培の仕方ですね」
「まあな。俺にしかできないし育てるのも時間がかかるから大量生産とはいかないが、ちょっとした特産品にはできるだろう?」
「ええ、間違いなく売れます。特に食通の貴族や料理人には飛ぶように売れるでしょう」
前世でも美味しくて稀少な野菜なんかはとんでもない値段がついていたからな。
ラエルはこの特産品を見て、すぐにそのように売る方向にシフトしているのだろう。
「平民向けというより、富裕層向けというわけだな?」
「ええ、そのように絞って売りつけた方が価値も高まり儲かります」
シレッとえげつない商法を提案するラエル。
プレミア感をつけるということだろう。
その気になれば大量生産も不可能ではないが、俺には領主という立場と仕事もあるしな。
いくら金策とはいえ、これにばかり構っていられないので少数販売というのはありがたいことだ。
「他のやつも試食してもいいでしょうか?」
「ああ、勿論だ」
俺が許可すると、ラエルは他の野菜を手に取って軽く土をぬぐうとそのまま生で食べる。
随分と野性的であるが顔立ちがいいと、そんな姿でさえも絵になるな。
「うん? こちらの木の実はなんでしょう?」
しばらくいくつもの野菜を試食していたラエルだが、ナデルの実を前にして首を傾げた。
そう、それはベルデナが住んでいた山に生えていたナデルだ。
そちらはメアのスキルと俺のスキルを掛け合わせることで、ここでの栽培に成功していた。
「ああ、それはベルデナの住み家の近くに生えていた木の実だ。多分、それはここにしかないんじゃないだろうか?」
「ええ、他の国ではわかりませんが、少なくとも見たことがないですね」
そう言いながらラエルが「これも食べても?」と視線で尋ねてくるので、俺は頷いた。
「おお、ブドウと似ていますが味の濃さや深みはこちらの方が断然……」
ぱくりと食べたラエルは感動の面持ちで二つ目、三つ目を食べていた。
中々に気に入ったのかもしれない。
屋敷にはメアが作ってくれたナデルジャムがあるので、渡したら喜びそうだな。
「他の野菜やナデルも素晴らしいですね。これらはどの食材でもいけるのでしょうか?」
「多分それほど癖のない奴ならいけると思う。まだ試してないやつもあるが失敗はしていない」
「そうですか。今度いくつか稀少価値の高いものの苗を持ってきます」
「高級品を育てさせるつもりだな?」
「ええ、そうすればさらに利益が見込めそうですから」
俺とラエルはニヤニヤとした笑みを浮かべて笑い合う。
これはいいビジネスになりそうだ。
今までこういう金策が何もできない領地だったので、それができるとなるとこうも楽しいとは。それが引いては領民のためにもなると尚更だ。
「しかし、これらはノクト様しか作ることができないのが問題ですね」
確かに。今はあまり想像できないがいずれは領地を離れる用事があるかもしれない。それに俺が死んでしまったら生産できません。というのは未来のことを考えると不安だ。
「……俺と同じような効力を持つスキル持ちがいれば、雇って育てさせることができるかもな」
「ノクト様と同じスキル……というのは難しいでしょうが【縮小】と同じ効果を持つスキル持ちがどこかにいるかもしれませんね」
「領民の中にいるか探してみるよ」
「私の方も他の村や街で探してみます」
今のところ忙しくて領民全員のスキルを把握することはできていない。
神殿の影響の強い街や村なら領民全員のスキルの帳簿をしているらしいが、一般的な領地では行き届いていないのがほとんどだ。何せ人が多すぎるし調べるのも一苦労だからな。
今のうちの領民であれば、それほどの人数もいないし調べることもできるだろう。
今後の仕事の割り振りや、施策のために知っておいて損はない。
「畑に関してはこんな感じですかね?」
「いや、まだ売り込みたい商品がある」
「まだ他にも何か?」
どこか呆れ気味のラエルを連れて、俺は少し離れた畑へ連れていく。
そちらではカブ、ジャガイモ、コマツナ、ホウレンソウ、ソラマメといった冬に育てることしかできない野菜が栽培されていた。
「これは!? 冬にしか育てることのできない野菜がこんなに!」
今日一日でラエルを驚かせるのは何回目だろうか。普段は冷静な奴をここまで驚かせることができて楽しい。
「俺とメアのスキルをかけ合わせれば、季節外れの野菜だって育てることができるんだ。どうだ? これも売れるだろ?」
「……ええ、売れます。ビッグスモール領に店を出す決断をしてよかったと心から思っていますよ」
「そうか。それはよかった。これからも末永く頼むよ」
どこか戦慄しているラエルの肩を叩いて言う。
何せうちとの唯一の取引相手だからな。領地の繁栄のためにもラエルとはよろしくやっていきたいものだ。
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