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嫌われ者の俺がいじめを救い、学校のヒーローになるようです。  作者: 松竹梅竹松
第2章 体育祭

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第2章 第11話 交渉

「校長先生、私の目的はたった一つ。体育祭をやり遂げることです」



 うずくまっている校長先生に告げます。これは交渉です。みんなが幸せになるための、交渉。



「だから協力してください。そうすればこれ以上あなたを責めることはしません」



 たとえ誰に反対されても、私が貫きたい正義です。



「聞き間違いかな。こいつは君を退学にしようとしたんだよ? いやおそらく本当の目的は新斗を退学にさせること。そして実際にボクは退学させられてる。そんな悪人を見逃すっていうの?」

「今体育祭実行委員会の方々は地域の方や先生の対応に追われています。それでは体育祭を本当に楽しめてるとは言いません。そして突然の体育祭の開催で迷惑をかけているのも事実です。そしてそれを解決するには立場ある校長先生のお力添えが必須だと思います」



 イラついたような表情をしている万さんに私の考えを伝えます。



「確かに校長先生は悪いことをしました。でも万さんも悪いことをしたんですよね? 学校に迷惑をかけたと得意げに言っていたじゃないですか。処分は当然だと思いますが」

「君さ……どっちの味方?」

「私は正義の味方です。こんなことをした以上退学は当然だと思っていますし、校長先生も一定の処分を受けるでしょう。悪いことをした人が罰を受け、一生懸命がんばっていた人が報われる。これこそが正義です」



 みなさん難しく考えすぎなんです。いじめをしたら謝る。悪いことをしたら裁かれる。だからこそ正しく生きることが尊重される。これこそがあるべき世界です。



「ありえない……体育祭は中止だ……!」



 しかしそうは思っていない人がいます。校長先生です。



「中止にさせなきゃ問題になるんだよ! 生徒が勝手にやったこと! 校長は事件にすぐさま気づき早急に対処し問題生徒を処分した! これ以外に道はない! そうしないとキャリアが終わるんだ! 俺の人生が終わるんだよぉ!」



 子どものように泣きながら駄々をこねる校長先生。情けない……とは思いません。そう思うのも当然でしょうから。



「勝手なことをしたのは謝ります。許してください」

「許すわけないだろうが! お前らが全部悪いんだ! 俺は悪くない! なにが楽しいだなにが正義だ! んなことはクソだ! お前らガキは大人の言うことを黙って聞いて実績のためにいい大学に入ってればいいんだよ! それ以外に何も考えるなぁ!」

「……千堂さん。先輩がお手本を見せてあげるよ」



 自分勝手な都合を喚いている校長先生に詰め寄る万さん。言葉に怒気を孕んでいましたが、その表情はやはり楽し気です。



「校長、確かにボクは問題を起こした。でも犯罪はやってないんだよ。厳密に言えば罪は犯していないんだ。騒音は常識の範囲内。文化祭で花火を打ち上げた際も消防に許可はもらった。確かに迷惑かもしれないけど、法の範疇で認められる最大限の自由を行使したに過ぎない。それなのに校長はボクに退学を命じた。結果は自主退学だけど、気の弱い一生徒であったボクが校長先生にそう言われたら従わざるを得ない。これは間違いなく校長によるひどく身勝手な脅迫だと思うんだ。ところで中卒と大卒の生涯年収の差って知ってる? 一億に届くほどの額なんだって。加えて薔薇色の青春という名の高校生活と、華のキャンパスライフを奪った罪を加算して。税抜きで一億円払ってくれたら誠意をと判断してあげてもいい。そうしてくれたらあんたのキャリアが終わらないよう最大限協力してあげる……なんてのが新斗のやり方かな」



 万さんはまるで先輩を思わせるような詭弁を用いたまくしたて方で校長先生に多額の慰謝料を要求しました。しかしそれだけでは終わりません。



「ボクだったらこうする。体育祭は一旦中止にしてあげてもいい。ただし止めるのは主催者側。校長がやってきた事実を全て白日の下に晒すための行動だったと告げてね。そうすれば全国的にニュースになること間違いなし! テレビで校長の必死の釈明が見られるし、後日体育祭も正式に開催できる。それが一番楽しいと思わない? 新斗に比べれば充分に優しいね」



 それが楽しいかはさておき。どの主張も筋が通っているように思えます。それだけのことを校長先生はしたのですから。



「千堂さん、みんな自分のメリットを押し通すために本気でがんばってるんだよ。こっちが圧倒的に優位な状況で譲る必要はない。正義? 正しさ? つまらない。もっと欲を出さなきゃ。だからこそ人生は楽しいんだよ!」



 先輩が尊敬する先輩の言葉を聞いた私の答えは、こうです。



「この体育祭の開催によって多くの方々に迷惑をかけたのは事実です。主催者である私と責任者であるあなたが処分を受ける。その代わりがんばった方たちのために体育祭は完遂させる。誰がなんと言おうと絶対に譲れません」



 先輩は今回私に任せてくださいました。万さんの意思も、新斗先輩ならこうするというのも関係ありません。これこそが私が本当にやりたいことだから。そして万さんはいいことを言ってくれました。



「さっきの二案に比べれば私の提案は優しいものだと思います。一緒に誠心誠意、謝りましょう」



 ギャップと拳の下ろし所を与える。最後に先輩に教わったことを行い。私は高校を去る決意を固めたのでした。

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