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嫌われ者の俺がいじめを救い、学校のヒーローになるようです。  作者: 松竹梅竹松
第2章 体育祭

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第2章 第8話 勝利宣言

〇新斗




「やってくれましたね、校長」



 校長が千堂に退学を告げたところを遠くから見ていた俺は、こいつが校長室に戻るのを待って突撃した。



「これでボイコットに参加した連中はビビって動けなくなる。たった一手で千堂の努力がパーだ。権力者は楽でいいですね」

「体育祭を気にしてる場合かな? これで君の後輩は退学になるわけだが……」


「できるわけねぇだろ。退学には犯罪相当の出来事が必須。いくら校長と言えどボイコットを率いただけの罪で退学にする権利なんてない。んなこともわからねぇで来てると思ってんのかよ」

「目上の人間には敬語を使えと君の先輩から教わらなかったのかな」


「俺は目上の人間には敬語を使うし、敬語を使ってほしいのならまずてめぇが俺を敬い奉れ」

「……まったく。先輩が先輩なら後輩は後輩だな」



 校長……いや小暮力(こぐれちから)という人間は臆病で考えの浅い人物だ。何とか言い返しているつもりだが、その汚い顔に冷や汗が垂れていることにすら気づいていない。そもそもこの状況を理解できてすらいないはずだ。俺と学校は不干渉の約束を結んでいる。それを事もなさげに瞬時に破った俺に内心焦っていることが見て取れる。だがそれでも、権力を持っているというのは事実。



「あまり学校という組織を舐めない方がいい。いくらでもでっちあげれるんだよ、退学の理由なんて」



 そう。俺は高校生で、こいつはその学校の長。この力関係は絶対的なものだ。学校という檻の中ではどうやっても俺たちが不利になることは間違いない。



「だがそれは君にとっても不本意だろう。せっかくできたかわいい後輩を退学にさせるなんて耐えられないはずだ。そこで私からの恩情だ」



 校長は心底楽しそうに、笑う。



「千堂雪華さんの代わりに君が退学する。それで彼女は見逃してあげよう。君が大好きな先輩と同じことができて光栄だろう?」



 そう、初めから千堂ではなく俺が標的だということはわかっていた。そしてこれこそがこいつの悲願だと。



「さっきはいくらでも退学の理由なんてでっちあげられると言ったが、こっちだってなるべくなら危ない橋は渡りたくないんだ。だから君が自主退学を選んでくれると非常に助かるんだが」



 やはり臆病。本気で退学にさせたいのなら危険を顧みず退学にさせればいいのに。まぁこれが大人ってやつだ。せっかく何十年も積み上げたキャリアをこんなことで壊したくはないのだろう。



「やっぱりあいつの親からの圧力が強いんですかね?」

「そうなんだよ聞いてくれるかい? 射丹務くんがいるとご子息が思う存分学生生活を楽しめないとクレームを入れてくるんだ。そんなんじゃ寄付金を出さないぞってね。おかしな話だよね、君のご両親が亡くなったのは彼のせいじゃない。不幸な事故だったんだから。そういうことになってるんだろう? 多額の金を受け取って。なんだ君も私と一緒じゃないかぁ」



 俺の口数が少なく敬語を使ったことから完全に勝ったと思ったのだろう。恥ずかしげもなく机に身を乗り出し、俺の顔を舐めるように覗き込んでくる。



「そもそも君が。いや、君と馬鹿な先輩が悪いんだ。散々大人を小馬鹿にして楽しんできたんだからね。これからは仲良く底辺として身の丈に合った人生を送ってろばぁぁぁぁか! ははははは!」



 なるほど、こいつは俺のいないところで先輩にもこんな態度を取っていたのか。そして先輩は何も言い返さず、俺のために自分から退学の道を選んだのか。こんな奴の自分勝手な自己利益のために。



「知れてよかった。おかげで心置きなく暴れられる」

「あぁ? 何か言ったかぁ?」


「俺がここに来たのは停戦協定のためでも宣戦布告のためでもないって言ってんだよ。もう勝負は終わってるんだからな」

「確かに終わってるな。千堂雪華を利用した俺の勝利によって!」


「違う違う。千堂は一切関係ないんだよ。あんたはとっくのとうに俺を怒らせてるんだから」

「そう怒るなよ。万陽火が退学になったのは自分の意思なんだからさ」


「だから違うって言ってんだろハゲ。それは先輩が俺のためにやってくれたことだ。なんで俺が先輩の行動に腹を立てるんだよ」

「……何を言ってるんだ?」


「それがわからないからお前は負けたんだよ。先に約束を破ったのはあんたの方だ。俺は先輩との約束を破ってない。そのことだけ理解してろ。後は勝手に事が済む」

「おい待て! おい!」



 校長が何か言っているが、今さら聞く必要もない。こいつは近い内に校長の座から滑り落ちることになるのだから。

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