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【第64、65話】ならし任務⑤ 氷のニーズホック

話数が64、65になっておりますが、ナンバリング間違えたため応急処置です!ご了承くださいませ。



 氷のニーズホック。


 それが第二騎士団の団長の通り名だ。


 常に無表情で言葉少な。端正な容姿と相まって、その姿は、世の淑女から称賛の眼差しを受けている。


 女性人気に限れば、レイズ様やルシファルとひけをとらない存在だ。


 さらに戦場では、氷の刃を振り下ろすが如く、一閃で戦況をひっくり返す果断さから敵将から恐れられる。


 ゆえに氷のニーズホック。


 そのニーズホック様のいる、ユフェの砦に迎え入れられた僕ら。


 砦に入ってすぐに、ウィックハルトが僕らを呼び止めた。


「すみませんが、ニーズホック殿は少しクセのある御仁でして、できれば対面する人数を絞りたいのですが、、、」ウィックハルトの言葉に、レゾール隊長も追随する。


「強制ではありませんが、できればそのように配慮していただけると助かります。少々気難しい方ですので」


 レゾール隊長にも頼まれては、僕らも無理にとは言い辛い。


「ならば俺たちは第二騎士団の部隊長と話をさせてもらいたい。ディックは、どうする?」あっさりと引き下がるリュゼルとフレイン。問われたディックは「俺はぁ、ロアのそばにいるのが仕事だぁ」と答えた。


「そうか。ではレゾール隊長。そのように手配していただけるだろうか?」


「では、先にリュゼル殿とフレイン殿を兵舎の方へご案内しましょう。ロア殿達はすみませんが少しお待ちいただけますか」


 そう言ってリュゼルとフレインを連れてゆくレゾール隊長。後ろ姿を見送ってから、僕はウィックハルトへそっと聞いてみる。


「ニーズホック様はそんなに気難しいのかい?」


 だが、僕の問いに返ってきたのはどうにも曖昧な返事。


「そうですね。気難しいというか、、、、ま、とにかく会ってみれば分かります」


 ウィックハルトはそれ以上説明するつもりがないらしく、僕も仕方なくレゾール隊長の帰りを待つ。




 しばらくしてレゾール隊長が戻ってきた。


「お待たせしました。では参りましょう」


 レゾール隊長の先導で砦の最上階へ。


「失礼致します。第10騎士団、ロア殿とウィックハルト殿をお連れしました」


 レゾール隊長の言葉に「入れ」と短い返事があった。


 ぎぎぃと重そうな扉が開かれ目に飛び込んできたのは、第三騎士団のザックハート様にも負けぬ体躯に、整った顔立ちの将。遠目に見たことのある、ニーズホック様その人だ。




 まずは挨拶を、と、僕が口を開く隙もないまま、次の瞬間、僕はなぜ人数を絞ったのかを理解することになる。



 その人形のような端正な顔がふにゃりと砕けると


「あーら! 本当にウィックハルトちゃんじゃないの〜! あらあら! 久しぶりねぇ!」


 と、氷のニーズホックが駆け寄ってきた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「そう、あなたはロアちゃんね! 初めまして。ニーズホックよ。気軽にホックさんなんて呼んでくれると嬉しいわぁ」


「あ、はい。よろしくお願いします」


 理解しているようで全く頭の処理が追いついていない僕は、ぎこちなくウィックハルトを見る。


「ご覧のとおり。ニーズホックはこういう性格なのです。やはり第二騎士団長というイメージがありますので、公の場では喋るな、大人しくしていろと、王が」


「失礼な話よね〜何が悪いというのかしら!? ま、代わりに第二騎士団を好きに動かしていいと言われているから、不満はないのよ〜。あ、紅茶飲む? 美味しい焼き菓子があるわよ! みんなで食べましょ? レゾールも一緒に、ね!」


「は。では準備いたします」レゾールは慣れたもので、早々に準備を始めた。





「それで、なんの用でこんな場所まで来たのかしら?」


 一旦落ち着いたところで、ニーズホック様が切り込んできた。


 なんの用で、、、、、一言で言えば「貴方はルデクを裏切っていますか?」ということを確認しに来たのだけど、間違っても口にはできない。


「そうですね、、、単純に挨拶に来たんですが、、」


「挨拶に? こう言ってはなんだけど、それだけのためにわざわざ来るのは、、、信じられないわね」


「そうですか? なんというか、、、、仁義を切るべきだと思った、というか、、」


「仁義?」


「はい。この辺りは第二騎士団の持ち場です、そこにお邪魔するので、やはり一言あって然るべきかと。もちろん事前に騎士団間で連絡がいっているとは思いますが。こういうのって直接挨拶したほうが良い気がしたので」


 僕の言葉にニーズホック様ははて、と首を横に傾げ、そのままの体勢で手を顎に当てると、僕をまじまじと見つめる。


「あなた、、、、若いのに随分と古臭いことを言うのね」


 これでもあと40年を先に生きてきたので、古臭い考えは仕方ないかと。年の功というのであれば、この中で僕が一番経験を積んでいるのである。その40年の中で身についたものだ。


「そうですかね?」僕が空とぼけて見せると、ニーズホック様はニヤリと笑う。


「ま、その考え方は嫌いじゃないわ。分かった。せっかく来たんだもの。ゆっくりしていきなさい」


 どうやら一応気に入られたみたいだ。さて、ニーズホック様、、ホックさんからどこまで話を引き出せるか。本番はこれからだ。




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― 新着の感想 ―
[一言] 今や異世界もので姫騎士と並んでマッチョお姉はお約束。 しかし、それが騎士団長とは(笑) さらに、この人がもう一人の裏切り者設定だと凄い展開の予感しかしない。
[良い点] …ホックさん…おねぇさんでしたのね…(笑)…気のいい人のようですが…はたして… [気になる点] …ロアの考え方が古臭い…か…でも、最悪の未来を生きてきた記憶があり…それは革新的な考え方…
[一言] オネエはいい人で古事記も書いてある(ない) でも王の無理解で裏切るの線も…
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