【第357話】終わりの話⑦ 婚儀(下)
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356日間毎日続いた本更新も、明日、357日目で最後となります。
願わくば、最後までお楽しみいただければ幸いです。
婚礼の儀式が終わり、祝宴会場に移動した僕らは、様々な人々から祝福の言葉を受けながら時を過ごす。
「本当におめでとうございます、、、けれど、私がこの場にいて良いのでしょうか?」
各国の要人に混じって少々遠慮がちに僕らの前にやってきたのは、旅一座のゾディアだ。
自由を愛する彼女達だけど、今回ばかりは僕らの予定に合わせてこの地へやってきてくれたのだ。
「もちろんだよ。ゾディアは絶対に呼びたかったからね」
なんなら皇帝よりもゾディアの予定を優先したいところだよ。ゾディアがいなければ、僕らはこの場所でのほほんとしていることもなかったかもしれないのだから。
「とりあえず、後でゆっくりお話ししましょう」
ラピリアの言葉を受けて、ゾディアは頷く。親しい人たちとは明日の夜、要人を見送った後に改めて内輪だけの小さな祝宴を行う予定。もちろんゾディアも誘っている。
ゾディアが離れてしばらくしたら、今度はダスさんがひょっこりと顔を出す。ルルリアの祖国フェザリスの外交官で、僕とも何かとご縁のある人だ。
特に大陸全土を襲った大飢饉においては、南の大陸での食糧の買い付けに随分と奔走してもらっていた。
「この度はおめでとうございます。いやあ、誠にめでたい」
そのように言うダスさんは、心なしかふっくらした気がする。元々恰幅の良い人ではあったけれど。
ルルリアに聞いた話によれば、フェザリスは今回の食糧買い付けの一件によって、南の大陸で格が大きく上がったそうだ。ついでに利益も存分に稼いだらしい。
元々フェザリスは南の大陸の中では小国であり、後ろ盾を求めて帝国に政略結婚を申し込んだのだ。
結果だけ見れば、フェザリスは北の大陸で2強となったルデクと帝国。そこに非常に太いパイプを持つ国となったのだから成果としてはこれ以上ない。
「なかなかきちんと挨拶できなくてすみません」
僕の言葉にダスさんはすごい勢いで手を振る。
「とんでもない。こちらこそです。いやぁ、おかげさまで忙しくて、忙しくて」
そんな風に言いながら、挨拶を終えてほくほくと下がってゆく。これからツァナデフォルとも商売の話をするそうだ。全く、彼の国の人々は商魂逞しい。
挨拶が一段落したところで、グリードル帝国の皇帝ドラクがやってきた。皇帝とは先ほど挨拶を交わしたので、なんだろうと思ったら、
「おう。あの計画は順調なのか?」と聞いてくる。
「はい。もう少し時間はかかりそうですけどね」
「そうか、、、、せっかくルデクまできたからな。足を伸ばしてもいいかと思ったが、、、」
「連動して色々準備しないといけませんからね。街道の整備の方にも時間がかかっていますし」
「まあ、でかい話だからな。そうだ、街道の話だが、人手が必要なら言え、スキットの奴らを貸してやる」
「グリードルの方はどうなんですか?」
「まあ順調だ。人手に余裕がある程度にはな」
帝国とゴルベルとは、新街道を繋ぐことで既に話がついている。ツァナデフォルも興味があるらしく、昨日もゼウラシア王と話をしていた。
こうして婚儀の予定はつつがなく終わり。
最後に4国の国家元首による和平宣言が行われ、その宣言は歴史に長く刻まれることとなった。
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婚儀の翌日の夜。
特別に用意してもらった会場に集まったのは、僕、ラピリア、ウィックハルト、サザビーとネルフィア、ユイメイの双子。
思えばこの仲間たちと様々な場所に行ったなぁ、少し感慨深い。
そんないつものメンバーに加えて、ルルリア、ツェツィー。それにゾディア。
そして、
僕にとってはこちらも欠かせない大切な仲間、
フレイン、リュゼル、ディック、ルファ。
今日ここに集まってもらったのは他でもない。フレインやルファたちに、僕の秘密を話すためだ。ルルリア、ツェツィー、ゾディアの3人もいるときに話したかった。
僕が未来を知っていたという”過去”を。
4人はあくまで身内の祝宴と思って会場に来ている。みんなどんな反応をするだろうか?
フレインは「話すのが遅い」と怒るかな?
リュゼルはどうだろう? 「お前らしい」なんて言いそうな気がする。
ディックはいつもと変わらないと思うんだ。
ルファは、、、、、笑って受け入れてくれるかもしれない。そうなるといいな。
全員が席について落ち着いたところで、僕は四人を見渡す。
そして、
「乾杯の前に少しだけ話を聞いてほしい。いや、少しじゃないかな。けれど、とても大事な話なんだ」
と、切り出した。




