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以前のわたしだったら、おとなしく黙っていただろう。獣人がいるのが当たり前だったから、そういうものだと、あっさり納得したかもしれない。
――でも、今のわたしは違う。前世の記憶が蘇ったことで、強烈な違和感として、目の前の光景をとらえてしまう。
なんて、気持ちの悪い。
今は獣の姿でも、本来は人と変わらないはずなのに。人を、檻に入れるなんて。
平和な世界で生きた前世。人が不自由に拘束されている場面なんて、実際に見たことがない。
「――なんで、嫌われてるんですか?」
言ってから、直球過ぎると思った。カインくんも、そういう反応をされるとは思っていなかったのか、目を丸くしている。地味姫だから、何も言わないと思ったのかもしれない。
「あー……なんでだと思います?」
なんで……なんで、か。
――……。
「……獣人が優秀だから?」
獣人は身体能力に優れている。人間と獣人が丸腰で戦ったとして、獣人に勝てる人は早々いないと聞く。頭脳に関しては人間とそう変わらないらしいけど。
でも、優秀な者であれば、思うように扱うのが難しくなるだろう。そういうのを、国の重鎮は嫌う。――だからこそ、わたしは『地味姫』なんてあだ名をつけられても、そういう人たちからは割と気に入られていたのだが。
だって、黙ってなんでも言うことを聞き入れ、反抗しないから。
わたしの答えを聞いて、カインくんは少し黙ったあと、声をだして笑い出した。
「そ、そんなに変なこと言いました?」
「いやー、初めてそんなこと言われたんで!」
ごほごほと咳き込むカインくん。……そんなに笑わなくてもいいのに。
ひとしきり笑った彼は、ぴっと指を二本立てた。
「嫌われている理由は主に二つっすね。一つは獣化した獣人が怖いんすよ」
そういえば、ハウントさんも言ってたっけ。獣化すると皆怖がるって。
だから檻に入れよう、っていうのはちょっと短絡的な気もするけど……。
「もう一つは、昔は獣人が差別されてたからです。今は第二騎士団っていう重要な役目を任されてますし、貴族入りっていう制度もありますけど。でも、獣人が酷く差別されていた数十年前を知る世代は、今でも嫌っているみたいっすね」
そして、その数十年前を知る世代が、丁度国の重鎮やお偉いさんに多い、ということなのか。
現王が即位されてからは獣人差別がなくなり、あれこれ騎士団の体制等も見直されたけど……前王の時代は獣人差別が酷かったのだろう。
これから先、もっと手を取り合っていければいいのに……。




