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逃亡先は、魔女のいない国でした -でも翠の瞳の聖騎士様に溺愛されてるから大丈夫です-  作者: 伊賀海栗
初めての体験

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第14話 魔女は王子様に嵌められる


 未来永劫の愛と言えば聞こえはいいが、生まれ変わった先ではそれぞれ違う人生があり、違う出会いがあるのだ。必ず同じ魂を愛するとは限らない。その自由を縛っているのだ。縛りが厳しいほど、効果も大きくなる。


「じゃあ本当に欲しかった効果って、魔力の分割譲渡?」


「そう。それこそが俺たちに魔力がある理由だ」


「俺……たち?」


「レナートは僕の従兄弟なんだけどね、譲渡の対象者は王家の血を引く一部の男子に限られてる。その証として、翠の目をしているんだそうだよ」


 テネリはレナートとアレッシオの瞳を交互に見比べた。確かにふたりとも綺麗なエメラルドグリーンをしている。


 でもどうしてそんな面倒なことを、とレナートから聞かされた話を整理する。

 聖女がひっきりなしに生まれ変わるだけでは駄目だったのか、と。


「次の聖女の目覚めまでの空白期間を埋めるため? いや、それだけじゃないわ。そっか、聖魔法の使い手を増やせるんだわ。こんなのほとんど禁忌の領域じゃない……」


「すごい、テネリ嬢は見た目によらず賢いんだな」


「一言余計だよね?」


 睨みつけるテネリに気づかない振りをして、アレッシオが楽しそうに言葉を続けた。


「もうひとつ、面白い話がある。実は、誓約の対価は『未来永劫の愛』だけじゃない。『情報共有者の制限』もあるんだよね」


 沈黙が落ちる。ソフィアはその言葉の意味を理解していないようで、きょとんとアレッシオを見つめていた。レナートは頭を抱えながらアレッシオを睨みつけている。

 そしてテネリは、意味を理解することを脳が拒否していた。情報共有者の制限は、契約や誓約の効果を高める条件としてはかなりありきたりなものの一つだが。


「……なんで私に言ったの?」


 魔女であるテネリは、「共有者」の範囲外にあるのは間違いない。つまり、話を聞かされたことによって誓約の効果が薄れてしまったのだ。


「まって、忘却魔法あるよ、ちょっと待って。薬! すぐ忘却の薬作るから!」


「落ち着いてくれ、テネリ」


「だだだだだだって、だめじゃん! 魔力譲渡も聖女の生まれ変わりまでの条件? だったら私が知ったらレナートたちの魔力切れる可能性だってあるでしょ? それとも弱くなるタイプ? いやまじで何やってんの、国防に関わることでしょ? このクソバカ王子!」


 テネリが罵倒するたびに、アレッシオは腹を抱えて笑っている。このまま呼吸困難で死んでしまえばいいのに、と思ってしまう。


「きっと何かお考えがあってお話しくださったんですよね?」


 ソフィアが柔らかな声で問いかける。その優しささえ、テネリには腹立たしい。この手の馬鹿王子は優しくするから図に乗るに違いないのだから。


「あははは! いやー僕はテネリ嬢が気に入ったなぁ。あとはレナートが良きにはからってよ」


「ほんとにブン殴っていい?」


「俺に免じてつねるだけにしてくれ。……この共有者の範囲は、翠の目の持ち主とその伴侶、と決められてるんだ」


 今度こそ理解を拒むテネリの横で、ソフィアは「わぁ~」と言いながらパチパチと手を叩いた。


「では、テネリ様がレナート様のお嫁さんになったら解決ってことですね!」


「はぁっ?」


「秘密を知ってしまった以上は、身内になるか死ぬかの二択だよ。なんと、ここには聖魔法を使える人物がたまたま3人もいるようだねぇ」


 左手をぶんぶんと振るが、レナートの手は全く剥がれる気配もない。ソフィアも隣へやって来てテネリの右手を握ったが、恐らくこれに悪気はないのだろう。悪気がないほうが厄介だというのがよくわかる。


「ちゃんと忘れるから勘弁して」


「忘却の証明ができない以上、それは飲めないなぁ。それにレナートが言ってたろ、後戻りできないって」


「詐欺だわ……待って。最初の聖王の生まれ変わりは殿下で決まりなの?」


 そもそも。レナートはソフィアのことを好いているのではなかったか、と思い出す。


「あれ、聞きたい?」


「どっちみち選択肢が二つしかないなら、全部聞いてから選ぶわ」


 リサスレニスにおいて、聖女が必ず王妃になるという話は有名だ。だからアレッシオのもとに嫁ぐのだろうと思っていた。

 だが、誓約の話が本当であれば王家の血筋よりそちらが優先されるはず。最初の聖王の魂を持つ者こそが、聖女の伴侶となるのではないか。


 レナートがソフィアと結婚する未来があり得ない話ではないのなら、彼は犠牲になるべきではないじゃないか……と考えて、テネリはハッとする。

 自分が自由になることが最優先であり、レナートの気持ちなんてどうだっていいのに。


「実は――」


 アレッシオが口を開きかけたとき、休憩室の扉が大きく何度も叩かれた。


「殿下! お休みのところ申し訳ありません」


「いいよ、入ってくれ」


 休憩室へとやって来たのは、親衛隊の制服を着た人物だ。親衛隊は近衛や一般の騎士団とは違い、国内であればアレッシオの権限で自由に動かすことができる。

 席を外そうとしたテネリをアレッシオが制し、隊員へ報告を促した。


「報告いたします! 調査中であったベッファ・グラッソですが、先ほど死体で見つかりました」


「わぁ、そう来たかー。妖術対策庁のベッファはね、ソフィアを魔女と誤認した件に関係してる疑いがあるんだ」


 アレッシオは「だから調べてたんだけどねー」と楽しげに笑って、テネリに視線を投げた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 読んでいて面白いです。 設定がとても練られています。しかも完結保証なので安心して読めます。 [一言] 楽しく読ませて頂いています。
[良い点] 殿下超楽しそうwww これは逃げられないwww
[一言] アレッシオウキウキでワロタwww
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