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505/539

504:雅御前

 ――水昇双牙。この業は水中戦用に特化した業だ。その本来の型は水底に気の力で足を固定し、気の力で圧縮した水圧を斬撃に乗せ敵を(ほふ)るもの。

 だが流は自身の妖力と、美琴の妖力。さらに魔力を込めることで元々二連斬の水昇双牙を、三叉の銛と化して放つ。しかも水中のどこでもそれは可能だった――。


「くっ……こいつぁやばいねぇッ!!」


 童子切は焦る。明らかに異質な力が混ざった斬撃というだけじゃなく、斬撃そのものが具現化しているほどの力。だからこそ童子切は、さらに業を使わざるをえない。

 大きく背後へと飛びながら童子切は、酒を呑みながら右手の日本刀へと神気を込める。そのまま大きく振りかぶると、迫る三叉の斬撃へと狙いをすまし叫ぶ。


「神刀流・冥月我斬(めいげつがざん)!!」


 大きく振りかぶったまま淀んだ赤黒い妖気を込め、刀身がその色に染まった瞬間、思いきり振り抜く。

 赤黒い冥界の月が出現しかと思える禍々しい三日月の斬撃は、縦に紫の三叉の銛へと〝ゾウン〟と異音を立てながら空気を斬り裂き迫る。

 互いの斬撃がぶつかった瞬間、重く鈍い音が周囲に響き斬撃同士が拮抗。だが流が放った水中戦用の斬撃、〝水昇双牙〟により童子切の〝冥月我斬〟がヌルリと斬られ始め、やがて真っ二つになり左右へとふき飛ぶ。

 

 その様子を流は水中から飛び出しながら睨みつけ、さらに妖力を思いきり悲恋へと込める。

 妖力を込めたと同時に空中から赤黒い閃光が見え、それを確認すると流は悲恋を高速納刀。

 業の二連撃など普通なら無理というものだが、そこは童子切。もう一撃〝冥月我斬〟を放ち三叉の鉾に挑む。

 ヌルリと冥月我斬を半分まで斬り進めるが、途中で力尽き互いに斬撃が消滅。その背後から童子切が刀を納刀したまま降ってくる。


 お互いに刀を納刀――つまり、抜刀術の構えで向き合いながら童子切は水面へと向かう。

 二人は妖力と淀んだ神気を刀へと込めつつ、童子切が水面へと着地した瞬間互いに動き出す。

 抜刀術だと言うのに二人とも水面を蹴り進み、水柱を上げながら爆走。やがて距離が五メートルになった瞬間、刀の鞘に超高密度に互いの力で圧縮された力を解き放つ。


「ジジイ流納刀術! 奥義・陸翔燕斬(りしょうえんざん)【極】!!」

「神刀流・無響羅刹!!」


 流は自分の妖力・美琴の妖力・そして新しい力の魔力を練り合わせ、悲恋の刃紋の娘へと力を注ぎこむ。

 刃紋の主、狂鎌天女と異名を持つ『雅御前』へと全てを託す。膨大な未知の力を練り込んだ悲恋は悲鳴をあげるように甲高い共鳴音をあげた刹那、刀身より雅御前が姿をあらわす。


 その表情は実に冷酷であり、目の前の銀色に迫る斬撃群の奥にいる不敵な男を睨むと「ちッ」と舌打ちし振り向かず流へと悲恋を通じて苦言。


(流ぇ……分かっていて私を呼んだんでしょうけれど、この貸しは高いんだからね?)

(あぁ、天女ちゃんの言うことを一つだけ聞いてやるよ)

(バ、バカッ! そんな事言っている暇ないんだからネッ!!)


 そう言うと雅御前は、周囲に旋回している青いツバメ群に命ずる。あの銀閃を落とせ、と。

 色と音が抜け落ちたはずだが、銀色と青色の光が交差し光を放って消し飛ぶ。それが全て消えると同時に世界に色がもどる。

 それと同時に雅御前は愛用の鎌を振り回しながら、自分へと向かってくる童子切への首を狩るコースで大鎌を薙狩った。


私の流(・・・)の敵は全部死ねぇぇぇぇぇぇッ!!」

「おっかねぇ女だなぁおぃぃ。だが――まだまだだねぇ!!」


 童子切は鎌を刀を斜めに当ていなし、その直後すぐに斬り返して逆に雅御前の首を落とす。


「殺らせるかよ!!」


 そこに割って入る流は、悲恋を童子切の刀へと当て軌道をそらして斬撃を防ぐ。ギリギリの攻防で雅御前は冷や汗をながしつつ背後へと飛び退く。

 そのまま童子切の死角たる左側へと移動し、流と共闘して童子切を追い詰めるのだった。

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