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485:一進一退

「うわああああ!?」

「ギャアアアア!!」

「こっちに来ぎょべぁッ」

「あははは~さぁこっちよ~」


 いよいよ激しくなる剣戟に流も他者をかばう余裕がなくなる。その余波は童子切が放った業を流が避ければ背後の女が斬られ、流の放った業を童子切が弾けば中年の男が斬られた。

 

「なんという恐ろしい……」

「あら、そうですかえ?」


 エルヴィスがそうもらすと、いつの間にやら隣に流と似た人種の女がいた。妖艶にして艶やかな衣装と容姿。さらにイルミスと同じか、それ以上の絶世の美女が小春日和のような柔らかい微笑みを向ける。

 そのあまりにも美しい表情に一瞬ドキリとするが、この町の支配者の名とウワサを思い出す。


「貴女は……駒那美様ですか?」

「ええそうですえ。発音がお上手ですのねぇ」

「まぁ最近そちら方面の友人が増えましてね。それで貴女の町でこんな事になっていますが、止めずによろしいので?」

「それはもう。この町は私のモノでありますけれど、それはあそこで遊んでいる童子切のモノと同義ですわえ」


 その答えでエルヴィスは「あぁ」と一言つぶやく。そしてなぜこうなったのかを聞いてみる。


「なぜこんな事を? 彼らのような者たちがいるのは知っていましたが、ここまで常軌を逸するとは」

「さてどうなんでしょうえ。この町の住民は死にたがりが多いですから……。誰も強制はしていませんし、誰も嫌がってはいない。それが答えですえ」


 駒那美がそういうさきにあるもの。それは喜んで死んでいく住民たち。

 その異常さに身震いするが、まずは流の無事を祈り、一刻も早くこの町を後にしたかった。

 だからこそ彼女から情報を少しでもとエルヴィスは思う。


「あの方……童子切様とおっしゃいましたか? 彼はナガレを殺そうと?」

「どうなのかしら。今はとても楽しそうに遊んでいるとは思うけれど、いつそうなっても不思議じゃないですえ」

「やはりそうですか。先程までの攻撃では、明らかに手を抜いていたように素人目線でもわかりましたからね」


 そうエルヴィスが言うと、自分のことのように微笑む駒那美。そしてエルヴィスがもう一つ質問をしようとした時、駒那美が一瞬早く話し出す。


「ほら、動きが加速しますえ」

「え? っ、ナガレ!?」


 童子切が放つ豪快な業。それは流を一刀両断する勢いで、左真横から銀光を引きながら一閃。

 それが背後の建物に到着すると、そのまま建物は何事もないようにそのまま建ってた。が、その前にいた男が、嬉しそうに流たちの戦闘に興奮した顔で見ている。

 その姿を見た彼の友人は、いつも騒がしい(・・・・・・・)男の様子の異変に気がつく。


「おい……おい! どうしたんだよ? お前らしくもない、もっと騒ごうぜ!」


 そう友人が言うと、男の肩を揺すろうと右手を彼の肩へとのせ押す。なんの抵抗もなく背後へと倒れる上半身(・・・)。そのまま背後の黒塗りの建物へとぶつかると、建物も横に亀裂が入り、そのまま倒壊してしまう。


「うおおおおおお!? おまえ死んで……そうか、そうだったか。よかったなぁ祭りの柱になれて」


 そいうと男は友人の遺体を瓦礫から引き抜くと、上下合わせてそう語りかけるのだった。


(クソッ、手助けする余裕がない。一体何人が死んだ? 今は一刻も早く童子切を倒すしかねぇ)


 流はそう思い、童子切への攻撃をますます強める。いまだ片手に徳利を持ち、右手のみで闘うその姿に苛つきながら、隙きをうかがう。

 だがあいも変わらず隙きなどなく、いたずらに時間だけが過ぎる。


「だめだねぇ。もっと俺に集中しねぇと、すぐにおっ()んじまうぜ? ほらよっと!」


 童子切が高速で剣をクロス状に振り抜く。それだけで重なる斬撃が出現し、流へと襲いかかる。

 それを流も四連斬で迎撃することで相殺し、さらに童子切へとむけて駆け込む。その勢いを殺さず刺突術を放つ。


「ジジイ流・刺突術(しとつじゅつ)! 針孔三寸(しんくさんずん)【改】!!」


 流の妖力を瞬間的に込めた刺突術・針孔三寸は童子切へとむけ三つの穴を穿(うが)つ。

 それを頭と鳩尾と腹へと放つ。そのタイミングは避けることは不可能だと流は確信する――が。


「おっと、針孔三寸もここまで威力があがるかよ」


 針孔三寸を知っているからこそ、その対処も可能。そう童子切は流へと目線で語りかける。

 それが本当にそうだとすぐにわかる。童子切は両足を前後に大きく開き刀を左肩を覆うようにかまえ、そのまま回転しながら針孔三寸を斬り捨てる。

 その様子に流は驚く。が、いくら必殺のタイミングであっただろうと、この男・童子切には通用しないかもしれないと思い、もう一つの業を放つ準備をしていた。


「ジジイ流・薙払術(ていふつじゅつ)! 巨木斬【改】!!」


 全て弾かれたとはいえ、童子切を建物の壁際へと追い詰めた。そこでさらに巨木斬をかぶせることで逃げ場を無くし、建物ごと童子切を始末しようとするのだった。

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