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483:って、思うじゃん?

 三枚におろされた太刀魚は、銀鱗を撒き散らせながら消え去る。それに見た童子切は口角さらにあげ、鬼が笑うように流を見つめる、が!?


「誰が太刀魚が一頭だけといった?」


 流の姿に童子切は目を見開き驚く。それは連続しての抜刀術の構えであり、つまり――。


「童子切、あんたを俺は武人として(・・・・・)信頼している。それが良くも悪くもな。ジジイ流・抜刀術! 奥義・太刀魚【極】!!」


 流は美琴より急速にもらった妖気と、自分の妖気を練り上げて【極】まで高めた妖気を、悲恋の柄内部に高圧縮する。

 驚く童子切の体の中心へと銀龍と化した太刀魚を放つ。その威力、流が放てる業の中でも最大級の威力を持ち、敵を鏡のように光る牙で噛み砕こうと襲いかかる!

 だが童子切も黙っていはない。一瞬たしかに驚きはした。そう、一瞬だけだ。だからこそ、次の行動も素早く、冷静に見たこともない太刀魚へと反撃をする。


「ちッ、舐められたものだねぇ――迎え撃て、紅時雨!!」


 童子切は刀を親指を下にして刀を逆手に持つと、空中に刀身を下にし突き刺す。そのまま抜き放ち、銀龍とかした太刀魚を真っ赤に散った花びらが襲う。

 それに容赦なく削られていく銀龍……だがそれを超えて銀龍は次々と赤き壁を喰い破り、最後の赤き抵抗もむなしく消え去り、童子切本人が銀龍の前に姿をあらわす。


「チィッ! ここまでとはねぇッ!!」


 手に持った刀で童子切は今にも噛み砕こうとする、銀龍の顎門(あぎと)に裂帛の気合とともに打ち込む!


「オオオオオオオオオッ!!」


 童子切が〝神々しくも淀んだ力〟を込め、太刀魚へと真横に一閃。硬質な金属音で〝ガギャ〟と不快な音が響き、その直後に銀龍は爆散する。

 それを見た童子切は「甘いねぇ」と漏らす。だが爆散している銀鱗の向こう側から、一筋の銀閃が童子切の首を狩るコースで出現。


「甘いのはどっちだろうな?」


 流はそのまま童子切の首を狙い斬る。が、童子切も苦々しくそれを受けきってしまう。

 だが流の攻撃はこれで終わらない。真上に弾かれた悲恋美琴を、その弾かれた力を利用して手を使わずバク転をしながら、童子切のアゴへと右足のケリを放つ。

 

 それをのけぞることで(かわ)した童子切は、体重の芯が後方へと傾く。それを流は見逃さないし、するつもりもない。

 そのままバク転を終え、地面に足がついたと同時に流は童子切の右太ももを斬りつける。だがそこは童子切。体重が後方へと傾きながら刀で太ももをしっかりガードし、即攻撃体勢へとうつる。


 しゃがみ気味な流を見下ろし、「やるねぇ」と言いながら手に持っている刀を振り下げる。

 それを刀身の先を左肩から右上へと払い除け、童子切へとさらに斬りかかる。


「ジジイ流・参式! 三連斬!!」


 拡散型の三連斬を放ち計六連にする。しかしそんなものは武神のような男に効くはずもなく、あっという間に相殺してしまう。

 だがそれも想定内。流は手数をつかった童子切が微妙に動きが鈍るのを予想し、さらなる連斬を叩き込む。


「オレ(りゅう)(よん)式! 七連斬【改】!!」


 流独自の業である七連斬。その中でも斬撃があたっただけで、防いでも次に来る衝撃と振動。

 そのインパクト機械のような斬撃が、童子切の刀めがけて集中する。そう、流は童子切を斬る事を諦め、まずは最大の脅威である〝武器を破壊〟をする、が。


「グウウウウッ、痛てぇじゃねぇの。だが残念だったねぇ……もう一息だったんだがねぇ」

「そうでも無いさ?」


 流は余裕の表情で煽り、童子切にさらなる追撃をかける。だが内心は焦っていた、それは先程放った銀龍に関すること。つまりあの銀龍は――。


(――クソ、童子切の言うとおりだ。先程二人が防いでくれたのは助かったが、そのおかげでパワーダウンが著しい。まさかこんなに影響するとはな)


 悲恋の中から美琴と三左衛門が攻撃すると、流の妖力をかなり持っていかれ、それの回復に時間がかかる。それを妖人(あやかしびと)となったことで、無理やり妖力を極に近くまで上げたが、【極】本来の威力には程遠い。

 だからこそ油断していた(・・・・・・)童子切を仕留めきれず、最大のチャンスを逃すことになるのだった。

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