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450:緑の大人「上位版」

 あまりの光景に冒険者達は固まる。その様子、本日何度目だろうか? という勢いだ。


「な……なぁ、今のってゴブリン酋長……」

「いうなオレオ。それ以上いうんじゃない。アレはただのゴブリン(・・・・・・・)だ。そうだな?」


 ラースに死んだ目でそう言われたオレオは、三度うなずき周りを見る。

 そこには同じ目をした仲間たちが、呆然と窓の外を見ていた。ふと前をみるオレオは、最前列に座る流を見てさらに死んだ目になる。


「よーっし! いいぞ氷狐王!! そのまま人間がいないなら、村ごと凍りつかせてしまえ!!」

「承知!! ……生体はゴブリンのみ確認。リデアル平原の猛者よ、異界に顕現し敵を噛み殺せ!! 《氷狼召喚(ひょうろうしょうかん)!!》」


 氷狐王がそう唱えた瞬間、目の前に青い扉が現れその扉が観音開きに開く。

 開け放たれた扉の中から全長三メートルほどで、青い毛並みが美しい黄金色の眼をもつ狼が複数現れた。

 それらに氷狐王は「行け」と一言命じると、青い獣は一気にゴブリンの村へと散っていく。

 村から悲痛な断末魔が響く。それを窓の外から見ている冒険者は、震えるように見つめる。  

 氷狼が噛みついたそばからゴブリンは氷付き、前足の爪で真っ二つにされ、凍てつくブレスで粉々にされた。


 村と呼ばれるだけあってかなり大きい規模であり、その最奥には砦のようなものまで築きつつあった。

 その砦の場所へと向かった一匹が、いきなり吹き飛んだ。氷狐王は「ふむ」と頷き、その方向を見る。

 すると中から鎧を着込んだ三メートルほどの、緑色の男が出てきた。


「何だこれはッ!? 俺の王国をこの地に作ったばかりだと言うのに……ッ!? キサマらか犬ドモッ!!」

「ほぅ、流暢に話すものだ。主よ、いかが致しますか?」


 その問いに流は窓から身を乗り出し、その方向を見る。そして明らかに違う存在の大きさに思わず漏らしてしまう。


 ――あれは王滅級クラスか? と。


 冒険者たちはまたしても顔面が青くなる。いや、死んだイカのように白い。そもそも目がすでに死んでいたのだから今更ではあるが。

 そんな彼らのことなど、知ったことかと流は氷狐王へと命ずる。


「かまわん、踏み潰せ」

「承知!!」


 そう言うとワン太郎は駆け出し、ゴブリンキングへと飛びかかりつつ、前足から氷の爪を投げつける。

 

「なめるな犬がああああああああ!!」

「キサマがな?」


 持っていた大剣で、氷の爪を弾き場したゴブリンキング。だがいつの間にか挟み込む形で、氷の回転する刃に胴体が切断されてしまう。

 その事実にゴブリンキングは気が付かず、地面に自分が転がったことで下半身を目撃し、それに気がつく。


「ば……かな……何がいったい……」

「それすら気が付かず何が王か。キサマ、王に成り立ての雑魚か?」

「そう……だ……俺はこの……地……来て……力……得……」


 そう言うと、ゴブリンキングは動かなくなる。イルミスと流はその様子見ていたが、気になることがあり窓から飛び降りた。


「ねぇ流。これはやはりあの森の影響かしら?」

「少し待て、鑑定眼――ッ、どうやらそのようだ……」


 このゴブリンの村まで伸びる、地下から漏れ出している妖力。それは全体というわけではなく、ピンポイントでこの村の奥にある場所に通じていたのだから。


「どうやらヨルムの言うとおり、封印の限界は近かったらしいな」

「ええ。魔物が王になるということは、相応の理由がありますわ。それがこの濃密な妖気があれば、簡単かつ短時間で力を得ますわ」

「それをあの『(ことわり)』が手助けする……か」


 村々から聞こえる断末魔を聞きながら、流は今後のことを思うと気が重い。やがて静かになった村を見つめながら、一刻も早くトエトリーへと戻らねばと思うのだった。


「まぁ現状は最悪と言うわけじゃない。何とかするさ」

「ふふ、貴方が言うと本当にそうなりそうですわ」

「ご期待に応えられるように努力するよ。さて、コレをどうしたらいい?」


 見ればゴブリンキングの死体が凍りついており、血液すらながれていない。

 鮮度抜群! 豊洲のマグロもびっくりの瞬間冷凍だ。


「そうですわね。氷狐王、ラースを呼んでちょうだいな」

「いいだろう。ラース、イルミスが呼んでいるから行ってやれ」


 ラースは了解の返事をしたのち、窓から同じように飛び降り、流のもとへと向かう。


「待たせた。それでなにか?」

「何かじゃありませんわ。貴方、三星級(トリプル)なんでしょう? ならコレの価値は分かると思いますわ」

「…………ええっと。まさかと思いますが……コレ、ゴブリン酋長か?」

「おいおい、なにを言ってる。もっと上位のキングだよ」

「キ、キング!? あの王滅級の討伐対象のアレか!?」

「多分な。まぁあの森のせいでチート気味になったようだから、強さは疑問だがな」

「は……ははは……キングがこうもあっさりと……」


 ラースは乾いた笑いで空を見つめる。現実についてこれず心は未だ死んでいるが、視線の先は自分の未来のようだ。

 それはあの大雨を降らせた厚く黒い雲が嘘のように消え、現在はどこまでも続く美しい青空が広がっていたのだから。

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