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445:危険分子は排除しよう

「そう、か……。ヨルム、それが危険だというまでの時間は?」

「分からん。これから再封印をし直すが、もともと爆発間際までいっていた状態だった。再封印をしたからと言って、それが収まるわけではないからな」

「なるほどな、状況は理解した。それで俺にしてほしいと言うのは、どうしたらいいんだ?」


 その話にヨルムはうなずくと、静かに口を開く。


「……それなんだが、状況が変わってしまった。こうなる前に〝封印の樽〟を破壊。もしくは流の世界の力で封印してほしかったのだが、今へたに触るとどうなるか検討もつかない。しばらく様子を見つつ、再検討してみる」

「そうか分かったよ。俺はどうすればいい?」

「それだが流は普段どこにいるんだ?」

「普段はトエトリーの街が拠点だ。そこのお屋敷街と呼ばれる、大きな屋敷に住んでいる」

「ふむ、ならこれを持っていけ」


 ヨルムは下半身から生えている木の幹を伸ばすと、そこから一輪の青い花を咲かせる。その花が急速に枯れ始め、中心から直径三センチほどの青い種が一つ出てきた。


「こいつは精霊が宿る花の種だ。名を『月齢華(げつれいか)』と言う。流の屋敷に鉢植えにでもして、近くに置いておけ。これで連絡をとることにする」

「へぇ、これは便利だな。他にあったらほしいんだが?」

「すまない、華自体は作れるのだが、精霊がいないのだ。もし精霊を見つけたら宿ってもらえるんだがな」

「そうか……なら仕方ないな。俺も宿ってくれる精霊を探してみるさ」

「そうしてくれ。それともう一つ大事な事がある。その月齢華だが、新月の日は使えないから気をつけてくれ」

「新月? あぁ、月の引力に左右されるのか?」


 ヨルムはその言葉に驚きの表情で、流の顔を覗き込むように見つめる。どうやら彼からすれば、秘中の内容なのかもしれない。


「まさにそうだ! よく分かるな。驚きだよ!」

「まぁ、そういう知識は俺達の世界では常識的にあるからな」

「異世界の知識はどこまで進んでいるのか……実に興味深い……っと、今はそれより今後のことだが、状況が激しく変わった。そこで一つ策がある」


 そういうとヨルムは右手を、流たちがやってきた方向へと向ける。

 そこには動く回廊があり、その向こうの蜜熊の宴会場が見えていた。そこを指差しヨルムは話す。


「今回の事を利用させてもらう。蜜熊は全て全滅し、蜜熊の宴会場は火災により消失。そしてそれを起こした変異種・吸血熊はお前が討伐したとし、ここの価値をなくす」

「つまり蜜熊の宴会場自体を、封印するというわけか?」


 ゆっくりとうなずくヨルム。そして重々しい口調で語りだす。


「そうだ。いいか流よ、今一番危険なのは妖力の暴発ではなく、それを感知して寄ってくるハエどもだ」

「弐の手先、か」

「うむ、あの邪神共に感づかれ、ここに本人が乗り込んできたら、待つのは妖力の暴発より恐ろしい未来だけだ。それはなんとしても防がねばならん」

「そう、だな……。分かった、その案を受け入れよう」


 だが流には一つ気がかりがある。そう、彼らの存在(・・・・・)だ。それは当然ヨルムも抱いているだろうと、ヨルムの言葉を待つ。


「その顔は分かっているのだろう? この策には大きな穴がある。そうだ、あの冒険者たちだ。あいつらが生きていれば確実に今回の情報は漏れるだろう。そして待つのは……わかるな?」

「ああ、それは理解している。それでどうする?」

「そこで確実な方法をとりたい。つまり冒険者たちを――」


「「殺す」」


 ここで二人の声が重なる。そしてお互いニヤリと口角を上げると、ヨルムは話を続ける。


「分かってくれて助かる。彼ら六名の命より、世界中の命がはるかに大事だ。ならば確実性のある事をしたい。やってくれるか?」

「ああ任せておけ。奴らの命は俺が――守る」


 不敵に告げる流に、ヨルムは一瞬呆然とした表情から一変、怒りで顔をそめ早口にまくしたてる。


「なッ!? 何を言っているか分かっているのか? 流が情けをかけたばかりに、世界が滅ぶかもしれんのだぞ!!」

「まぁ落ち着け、俺もマヌケじゃない。ただで返すワケにはいかないのは重々承知さ。まぁ俺に任せてはくれないか? どのみちここの森に関しては、俺が適任だし、俺しか出来ないだろう。ただ俺も一度トエトリーへと帰って、うちの傾国の女(ラスボス)と話をしなくてはいけない」


 ヨルムは「しかし……」と言葉に詰まるが、流の言うとおり他に手立てがない。ならば目の前の男へ全てを託す。そう思えるほど流は堂々としており、その言葉に自信が満ちあふれていた。


「……分かった。流を信じよう。それでこれからどうするんだ?」

「まずは王都へ早急に行って、片付けなくてはいけない仕事が一つある。それが終わったら連絡をとるから待っていてくれ」

「分かった。お前の無事をこころより祈ろう。では冒険者たちも開放し、お前と合流できる位置へと戻そう」


 そう言うとヨルムは、勢いよく手を合わせて「解放」とつぶやく。すると遠くから木々の裂ける音が流たちの耳にとどくのだった。

 本当にいつも読んでいただき、ありがとうございます! もし面白かったらブックマークと、広告の下にある評価をポチポチ押して頂いたら、作者はこうなります→✧*。٩(ˊᗜˋ*)و✧*。


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