427:超適当に名付けられた娘
「こっちもかよ!? 一体どうなっていやがるんだ……」
ラースがそう言うのも無理はない。Lは森長へ対し、紙一重で爪の猛攻を躱し、宝槍・白で受けながす。
その動き、まるで柳の枝。その捌き、激流を下る落ち葉が岩を避けるようにギリギリ。いや、もはや当たっているとしか思えない状態で躱していた。
「ふぁ~あ。なぁ~にぃ~そのバッカ見て~な攻撃ぃ? 当たる気がしないんだけどぉ」
「クッ!? 貴様、何故当タラナイノダッ!」
「え? やだ~ぁ。逆にどうやったら当たると思っているわけぇ? あたし、あなたの頭がシンパイデス」
「馬鹿ニシオッテ! ダガ、貴様モ避ケルダケ。手一杯デハナイカ?」
森長は思う。この人間は余裕ぶってはいるが、実際は余裕など微塵も無いのではないのかと?
事実。攻撃は当たりそうだし、それによって攻撃すら出来ないのではないか? と。
そう思うと森長は一度背後へと飛び退く。と、同時に両手の先より爪を二メートルほど伸ばし、回転しながら襲いかかる。
どうやらこの長さの爪は森長しか出せないようで、他の蜜熊は爪を出してもせいぜい五十センチほど。
凶悪にして槍のような長さの鋭利な爪。その先端からは紫の液体が滴り落ちる。〝ぽたり〟と紫の液体が地面に落ちると、異臭が漂う。どうやら……。
「毒ねぇ……。へぇ~あんたも毒とか使っちゃうタイプ? 意外と姑息なのねぇ」
「ダマレ、最早ナリフリ。カマワナイ。今スグ、滅ベ」
森長はそう言うと二本足で右へジャンプしたと思えば、左にも移動する。その動き、不規則なスプリングの玩具のように動いては跳ね、Lを翻弄する。
やがてLを中心に、森長は残像が残るほどに動きを早めると、四方から一気にLへと毒爪を振り下ろす。
動けないL。その爪が確実にLを捉えたかと思った刹那、Lは宝槍・白を地面に突き刺しその上に飛び上がる。
四方より伸びた毒爪は、持ち手部分である柄へと当たってその動きを止めた。
「ぶぁ~っか! そんな大味な攻撃なんて、あたしに当たると思ったの? メデタイ熊ねぇ~。今日から『メデッ熊』に改名しなよ」
「クソッ! ナラ、コレナラ。ドウダッ!!」
森長は右手の爪を下からすくい上げるようにLを切り裂く。が、Lは白を森長の爪の間に差し入れてしまう。
流石の蜜熊の長とはいえ、それには激痛を感じたようで悶え苦しむ。
そのまま白の石突と呼ばれる、槍の一番下の部分で森熊の頬を殴り飛ばす。
森長は巨体を宙に浮かせながら、熊とは思えない動きで一回転すると、Lと距離を取る。
「グルルゥ……。女、オ前。凄イ使イ手ダナ。ダガ、マダマダト、言エヨウ」
「なぁ~にぃ? 嫌ねぇ。御託はいいからかかってきなよ~」
森長は「是非モ無シ」と人間臭い事を言ったと思えば、突然前転するように回転しながらLを襲う。
Lは思う。馬鹿な熊だと。あんな背中むき出しなら、宝槍・白で串刺しにしてやると、舌なめずりをして待つ。
「串刺しになっちゃえ♪ ほ~らッ――って、なんでッ!?」
思いっきり森長の背中へ宝槍・白を投擲する。しかしかなりの力を入れて投擲したのにも関わらず、槍は刺さらず弾き飛ばされてしまう。
そのまま森長はLへと突っ込んでくると、そのままLを跳ね飛ばす。
「きゃぐぅぅぅぅ!? 痛ったあい! もう何なの、あのメデッ熊!! って、また来た!?」
Lを跳ね飛ばした森長は、そのまま過ぎ去るかと思えば驚く事に跳ねて頭上から襲ってる。
思わずそれに驚くLだったが、そこは龍人。瞬時に拾った宝槍・白を構え直し、降ってくる巨体に向けて真っ向勝負する。
龍人と言う存在。もともと驚異的な力を持ち、普通の熊なら片手で投げることすら可能。
しかも流に適当に名付けられたとは言え、その効果は未だ未知数の進化とも言っていい別物になった。
それをLは誰におしえられるでもなく理解している。だからこの無謀とも言える真っ向勝負。
迫る黄金の毛玉を睨みつけると、宝槍・白を斜め下に刃先を下ろし迎え撃つ。
Lまで残り四メートル。いきなり毛玉から剣のような黒い爪が伸びると、それがLを真っ二つにしようと黒い線となり襲いかかる。
(あちゃ~ちょっとやばくない!? あれ、受けそこねたら多分死ぬうううう)
焦るL。それは予想以上に質量がありそうに見え、しかも高速回転で威力もましている凶爪。
それをなんとか回避しようと、一瞬考えるが――。
「――逃げたらマイ・マスターに蔑まれるッ! 絶ッ対ッに受けきってやる!!」
そう決意を新たにLは、黒い凶爪を受ける事にする。直後ぶつかる宝槍・白と凶爪!!
まるで金属同士のように火花が出た次の瞬間、黄金の毛玉は空中で静止する。
そうなのだ、Lが森長を宝槍・白で見事に耐えきりそのまま一瞬止まる。
Lの顔は湯でタコのように赤くなり、その後――。
「ぬぐぐあああああああ!! 吹っ飛べえええええええええええ!!」
気合一閃。宝槍・白で森長をさらに上空へと弾き返したのだった。
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