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413:くまさんの豪勢な宴がはじまるよ

昨日投稿分の内容の一部を変更しました。

よろしければ見て下さいね(*´ω`*)

キャッシュが残っている場合は昨日のままなので、削除してからごらんください。

 スキンヘッドの冒険者のまとめ役、ラースは森の奥に異変を感じる。

 それは蜜熊のおびき出しが成功したという事であり、その時が目前に迫っていると確信した。そう、失敗だとは微塵も考えずに。


 やがて囮役の三人が侵入した場所から、一人の人影が現れた。ジェスである。


「ジェス! 無事だったか!? 蜜熊はどうした?」

「…………」

「どうした? それより、そこにいると危ないぞ! 早くこっちへ来い!!」

「…………」

「オイ! ふざけている場合じゃない、それにルッガ兄弟はどこだ?」

「…………」


 ジェスは入り口に立ち尽くしたまま、一向に動こうとしない。それを不審に思ったラースは、ジェスに向かって歩き出す。

 その時だった。突如ジェスが動き出したかと思うと、口から血反吐を吐きながら背後に「高速」で消え去る。

 その際にジェスの胸から、「真紅の細長い何か」が生えていたように見えたが、ラースにはソレ(・・)が何かが分からない。

 だからこそ、その光景を呆然と眺めるが、それが異常だと本能が意識より早く早鐘を打つ。


「ッ!? 総員臨機応変に対処! 嬢ちゃんは詠唱開始!!」

「わ、わかったんだゾ! えと、えっと」

「まずは俺らが予定通り一撃を受ける! あとは控えのアタッカーの判断で攻撃開始!!」


 ラースはそう言ったが、一向に森の奥は不気味な静けさに包まれていた。

 そのまま待つこと五分と少し。あまりの緊張感に耐えられなくなった、右側に茂みに潜んでいる冒険者の一人が立ち上がる。

 見た目はトラそのもので、人間より獣の部分が勝ってる外見だ。


「オイ、持ち場を離れるな」

「大丈夫だ、少し様子を見てくるだけだ」

「……わかった。少しでも異常を感じたら、声を上げて知らせてくれ」

「了解だ。じゃあ行って来る」


 ラースはトラの獣人をよく知っている。一人でオークを六匹相手にしても引かない、そんな勇猛果敢な人物だ。

 だからこそ、ラースも思わずうなずいた。しかしそれも……。


 森へトラの獣人が入って数分が経過した頃、森から痛烈な悲鳴が聞こえる。その直後、トラの獣人が勢いよく飛び出すのを見て、冒険者たちが息を飲むような押し殺した悲鳴をあげた。

 見ればトラの獣人の肩から両腕が無くなっており、ヨタヨタと森の中から出てきた瞬間、赤い何かに絡めとられ浮き上がる。

 そのまま斜め上に引っ張られるように消え去った後、トラの獣人の断末魔が静寂の森にこだまし、先程より一層静けさがます。


 あまりの事に言葉を失う冒険者たち。当然だ。相手は力が強く、耐久力が並外れた熊とは言え、今見たような事が起こるはずがないと確信していたのだから。

 やがて蜜熊が森から〝のそり〟と現れる。両手にトラの獣人の別れた上下を持ち、それを両方かじりながら広場へと現れる。

 蜜熊は無残な両手喰いを自慢するように、頭上にかかげると、その血を頭より浴びて嗤うように口を開く。

 血塗れの奥から覗く黒い瞳は無機質な塊に見え、一層の恐怖を見るものにあたえた。


「ラ、ラースさん……蜜熊が人を喰って……」

「見りゃ分かる! クソッ、嬢ちゃん準備は!?」

「ひぅッ!? あ、後は発動キーだけだゾ! いつでもいいんだゾ!」

「へ、なら目にもの見せてやれや。人と熊こうの違いってヤツをなぁ?」

「わかったんだゾ!! いくぞー! 爆炎より圧縮されし其の槍をもって、敵を焼き穿(うが)て! 上級魔法・爆炎の魔槍≪パグブート・カノン!!≫」


 シーラが魔法をリリースする直前、ラースたちはその射線より即座に離脱する。

 先端に赤いクリスタルがはめ込まれた短杖には、青と赤の炎が混ざり合い一つ塊が目の前に出現した。

 やがて燃え盛る三叉の槍へと姿を変え、先端が眩しいほどに白く輝く。だが不思議と周りには熱がもれずに、もしかしたら持てるのでは? と錯覚するほどのものだ。


 それが今、シーラの持つ銀色の短杖から放たれた!



 目の前には何も遮蔽するものがなく高速で飛ぶ燃え盛る槍は、蜜熊を貫通するまで残り三メートル。

 蜜熊は命の危機を悟り、本能でそれを回避する。が――!!


「よっしゃああああ!! どてっ腹にデカイ風穴を開けやがった!!」

「だ、大丈夫だゾ! パグブート・カノンは、魔法処理をしていない城門なら貫通する威力だゾ!!」


 ラースの言葉にシーラは自信たっぷりにそう応える。

 それもそのはずだ。このパグブート・カノンを戦争時に使った魔法師は、真っ先に敵に狙われるほど危険な魔法だ。

 兵に撃てば射線上には死屍累々の道が出来、下手したら死体すら残らない。

 城門に放てば一瞬で消し飛び、魔法防御が施されたものでも、五発は耐えられないだろう。

 だが使える魔法師は、全体数から見れば少ない。そんな高出力の魔法を弱冠、十七歳で使える才能。それがシーラと言う少女だ。

 だからこそ、自分に圧倒的な自信を持ち。他の兄弟より自分は優れていると自惚れる。


「へへん。ボクをいつも子供扱いする、いぢわるな兄上にも見てほしいんだゾ! でも……人が死んじゃったんだゾ……ごめんなさいだゾ……」

「あぁ~気にするな。とは言わねぇが、俺たちは冒険者だ。俺もふくめ、全員そう言う覚悟でここにいる。だからお前が気に病むこと事じゃねぇよ。むしろそれは俺ら冒険者にたいして失礼ってもんだ。覚悟がねぇ半端モンって、言われているようなものだからな?」


 ラースはニヤリと苦笑い気味に笑うと、シーラの頭に手を乗せる。そしてすぐに蜜熊の死体を見て……見て?


「……な、なんで倒れねぇ!?」

「違いますぜラースさん。蜜熊のやつ生きてはいるようだが、動くことすら出来ない瀕死だ」


 隣の冒険者に言われ、ラースはよく観察する。たしかに蜜熊はまだ生きており、肩で息をしている様子。

 ラースはチャンスと思い、左右の遊撃役の冒険者に「トドメを刺す」指示をだすのだった。 

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