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380:四本目

「ジジイ流・参式! 四連斬!!」


 拡散型の連斬を放ちながら、屋根より飛来。八人の賊はそれに反応できず、眉間に斬撃をもらい、そのまま倒れる。

 着地と同時に、流はまだ立っている賊へ斬りかかり、二人の賊の首を跳ねた。

 それを見た娘は、助かったと心から安堵したかのように、流へと感謝をのべるのだが。


「あ、ありがとうございます!! あの、これ解いてもらえませんか?」

「いやぁ~そしたいのは山々なんだが、まだボスさんが健在なんでねぇ」

「そ、そんなぁ……」


 茶色い髪の十代後半くらいの娘は、そばかす顔を歪め涙目になる。そして叫ぶように助けを求めた。


「お願い!! もう足が痛いし、服も剥ぎ取られそうなの! 助けてください!!」

「わかったわかった。少し待っててくださいねぇ~?」

「ぐがあああああ!!」

「おいおい、眉間に打ち込んでもまだ生きてるのか? 巨漢は強いねぇ」


 巨漢の男は、野球のバッド十本分くらいの棍棒を流へと叩きつける。

 それを悲恋で弾くように斬り上げると、巨漢の男の顔面に棍棒がめり込む。

 たまらず倒れる巨漢の男。死んでいるようだが、なぜか攻撃されると生者のような行動をとるのが不思議だ。


 そのまま流はジャンプし、巨漢の男の喉に美琴を突き刺しトドメを刺す。

 ビクンと一度巨漢を揺らすと、そのまま動かなくなった。どうやら倒せたらしい。

 流は「やれやれ」と呟くと、そのまま逆さに吊るされた娘の元へと行く。

 衣服は破られ、下着がチラリと見えている。さらに縛られた足首からは血がにじみ出ており、傷が深いのがわかる。


「またせたな。俺は別に待ってないが」

「な、何を言っているの? お願い助けてください! もう耐えられないの!」

「はいはい。じゃあ動かないでね?」


 担いだ悲恋をロープめがけて一閃。地上二メートルの高さに、逆さで吊るされていた娘は、そのまま地面へと落下し……〝ボギッ〟と鈍い音を響かせ、首の骨を折って死亡する。


「あらまぁ、死んじゃった」

『鬼畜ですね。ほんと』

「だってねぇ……」

『まぁねぇ……』


 流はそのまま娘の遺体へと近寄ると、悲恋を振りかぶる。そして無表情で娘の首を斬り飛ばす。

 その後ゆっくりと広場中央に生えている木を見上げると、おもむろに左後方へと悲恋を構える。


「そろそろ顔を見せたらどうなんだ? なぁ、アンデッド使いさんよ? ジジイ流・薙払術(ていふつじゅつ)! 巨木斬!!」


 目の前の巨木へ放つ、巨木斬。その無骨で巨木をもへし折る斬撃は、斬ると言うより「へし折った」かのように巨木をなぎ倒す。

 メキメキとへし折られた中から出てきたのは、繭のような白い物に包まれた物体。

 その繭に亀裂が入ると、そこから羽の生えた虫のような顔つきの生き物が現れる。


「おぉ~虫人間?」

『ネーミングセンスって何でしたっけ?』

「ウルサイわ! それよりアレ」

『ええ。人質……ですかね?』


 流が見たその先にいるもの。虫人間と呼んだメスぽい体つきの、人間と虫の中間みたいな存在が左手に持つもの、それは人間の女だった。

 これと言った特徴のない茶髪の女は、気絶しているらしく、まったく動かない。その女の髪を持ったまま、虫人間は流の前に降りてくる。


「オイ。よくも私の巣を粉々にしてくれたな? この礼はキッチリとさせてもらおう」

「なに、礼を言われるほどのものじゃない。あぁ、ついでにコイツもくれてやろう。ジジイ流・刺突術(しとつじゅつ)! 針孔三寸(しんくさんずん)!!」


 複眼で三つの刺突を見つめる虫人間。手に持つ短剣でそれらを二つまで弾き飛ばす、が。


「そんな安物でそこまで防げば上等」

「チィッ!!」


 虫人間は短剣が持たないと判断し、そのまま放置するように投げ捨てながら回避する。

 流石いい目を持っているようで、その行動に迷いがない。

 その際に左手に持っていた女を放り投げると、その衝撃で女が目覚めたようだ。

 虫人間はもう一本の短剣で流へと斬りつける。しかし流は何事もないように、あくびをしながらそれを弾き返している。

 

「ふぁ~あ。俺早起きしたろ? だから眠いんだよ。だから早く、次の休める所へ行って寝たいのよ」

「黙れッ!! くそッ」

「うぅん……ここは一体……って、ヒィィィッ!? 一体何が起きているの!!」


 そう女が言うのも無理はない。女の目の前でいきなり火花が複数回散ったのだから。

 見れば知らない男と、虫のような羽を生やした人間らしいものが戦っていた。


「よ~目覚めたかい? 今すぐ終わらせるから、待っていろよな」

「クソ、もう勝った気でいるのか!!」

「当然だろ? だってこうだろう?」


 流は左手に妖気を込めると、それを具現化する。そして――。


「ジジイ流・投擲術(とうてきじゅつ)! 飛竜牙!!」


 虫人間へ投擲された、妖気で出来た四本のクナイ。それが三本、虫人間の眉間・喉・鳩尾に当たり絶命し――。


「ギャグゥッ!?」

「あぁすまない。手元が狂った」


 最後の一本が虫人間の股の下を通過し、後ろにいた女の右肩へと突き刺さる。

 怯んだ虫人間を袈裟懸けに一閃し、それを駆除すると、流はゆっくりと女へと近寄る。


「おまたせ、大丈夫かい?」

「ど、どの口がいうの!?」

「だってなぁ……茶番は終わりだ」


 流は女の喉元へ悲恋を突きつけると、女の正体を暴くのだった。

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