表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

348/539

347:困惑のイルミスの町

「ああ、セリアの言うとおり、討伐する気だな」

「フン。我はあんなか弱い奴らには負けませんぜ!!」

「やめとけ。とりあえずお前は好きにしとけよ。嵐影とつながっているなら、そのうち呼ぶこともあるからさ。それまで人を襲うなよ?」

「そ、それは任しといてくだせぇ!! もちろん! 絶対! 今後! 我は二度と敵対しない人間は襲わないと誓いまさぁ!!」

「……マ」

「了解ですぜ、ランエイさん。ではまたどこかで!!」


 そう言うとレッド・ドラゴンは大きな翼をひろげると、そのまま飛び去る。だが、町の方向へと飛び去りながら、青い炎のブレスを吐いてゆく。

 討伐隊はその様子を見て臨戦態勢に入り、防御陣形を敷きつつも魔法での防御を試みようとしている。

 だがそれを嘲笑うように、レッド・ドラゴンはその周りに青い炎のブレスでサークルを描く。

 それを見て青い顔で防御態勢をとる、討伐隊を笑いながらレッド・ドラゴンは去っていくのだった。


「ったく、余計なことしてないでさっさと行けばいいものを」

『まったくだね。あ、来たよ。どうするの流様?』

「私としては、レッド・ドラゴンが『逃げ出した』と、言うのがベストだと思うわよ」

「だな。嵐影が倒して従者にしたとか、誰も信じないしな」


 流はそう言うと、嵐影の頭に手をのせ数度モフる。やがて討伐隊が大声をあげながら近づいてきた。

 討伐隊は冒険者を主体とした構成で、町の衛兵もかなりおり、総勢五十名はいる感じだ。

 そのなかのリーダーと思われる二人が、流たちの前へと歩み寄る。一人は冒険者の実力者。もう一人は町の衛兵だろう、フルプレートメイルの男だ。


「おい、アンタら。よく無事だったな! とりあえず最精鋭を集められるだけ集めて来たが、驚いたぞ」

「それよりも、アレを撃退したのか? 信じられん……レッド・ドラゴンだぞ!!」

「あぁ。まぁ、あの程度ならな。それよりおたくらは? 俺は極武級の冒険者で古廻流という。だが本業は商人だからヨロシク」


 流はそう言うと、魔力で作り出した極武級のフラッグを右手のひらに出す。

 それを見たリーダー格を含め、全員が感嘆の声をあげる。


「極武級だと!? トエトリーにいる変態の噂を聞いたがアンタか!!」

「ああ、あの変態の召喚師だろ!! 二つ名が『妖艶なる肉だるま』とか言う変態だ」

「チョットマテ、俺はジェニーちゃんじゃないぞ! あの変態はトエトリーでいい趣味の店を経営してるさ」

「そうなのか……まぁ噂と見た目が違うのかと思ったが。と、紹介が遅れたな。俺はイルミスの町を守備している代表、オッグだ。最近上空を飛ぶ、アイツを目撃したと数度報告があったが。助かった、礼を言う」

「俺はあの町の冒険者で、名前はヨシュア。イルミスで最高位の酋滅級を持つものだ。まぁ、あんたからすれば二つランク下だけどな。もうダメかと思ったぞ、あの炎を見たときは。町を守ってくれて感謝する」


 その言葉で、冒険者と衛兵。共に整列し、流に持っている武器を掲げ感謝する。

 本来は嵐影の手柄なので、こころ苦しくチラリと顔を見るが、嵐影はうれしそうに流を見ている。いつの間に来たのか、頭に赤い鳥とワン太郎を乗せて。


「それでどうだ、この事を領主様とギルドへ報告したいのだが、一緒に来てくれるか?」

「まぁ今日はその町へ宿泊予定だからな、時間がかからないなら良いけど……」


 流はセリアとエルヴィスを見る。二人は無言でコクリと小さくうなずく。


「分かった、なら行こう。だが明日も早く出発するから、そのつもりでいてくれたら助かるよ」

「了解した。なら俺は領主様へと報告に行くから、さきに冒険者ギルドで報告してきてくれ。ヨシュア頼む」

「ああ任せとけオッグさん。それじゃ行こうぜ」


 その後冒険者たちに囲まれ、レッド・ドラゴンと戦いと、ドラゴンとはどんなものなのかを、冒険者は目を輝かせて質問攻めにする。

 それに答えながらも流は考える。「この町は大丈夫なのか」と。

 だが先の狂った町、アルザムや、人間狩りの村の人間とは違い、誰もが明るい顔をしている。

 セリアもそれを察し、一番くわしいエルヴィスへと静かに尋ねる。


「ねぇエルヴィス。この町は大丈夫なのよね? 聞いた話では問題ない地域だとの事だけど」

「ええ、ここイルミスは問題ありませんね。派閥で言えばトエトリー子爵派ですから」

「そう……なら安心ね。それで、これからの予定は?」

「まずはイルミスの領主、イルミス・フォン・イルミス様へと挨拶へ向かいましょう。彼女は傑物ですよ。色々と、ね」


 エルヴィスのふくむ言いように眉をひそめるセリア。そうこうしていると、町の門が見えてくる。

 どうやら歓迎されているようで、防壁の上からも門の中からも大歓声が沸きおこる。


「お、おい。来たぞ!」

「ああ、先触れが言っていた冒険者たちだ! しかも極武級だってんだろ? スゲーぜ!!」

「キャー! こっちを見たわ~! 絶対あたしを狙ってるのよ、あのつぶらな瞳は! まるで獣よ~」

「そら、ラーマンだから獣だわな。だれか治療師の所へ連れてってやれ」


 町に入るなり、感謝の言葉と食べ物や飲み物まで差し出される。

 それに驚く流たちであったが、この街の守将であるオッグが住民をちらしてなんとか進む。


「わかった! わかったから! 嬉しいのはよっくわかる! だ・か・ら・道を開けてくれ! 領主様へ報告に行くんだ!」


 そう言いながら後に続く流たちは、あまりの歓迎ぶりにどう対処していいのか困惑するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ