表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

342/539

341:レッド・ドラゴン

 イルミスの町へ嵐影で駆ければ、八分もかからないであろう場所。

 そこは小川をはさみ、石で作られた太鼓橋いがいに隠れる場所もないような、背丈の短い草が生える平原であった。

 丁度その橋へさしかかる目前での襲撃である。そのあまりにも大きい、赤い巨体は全長十三メートルはありそうだ。

 

 その顔は怒りに震えており、水色の眼球で〝ギョロリ〟と睨みつけながら、上空を三度旋回(せんかい)する。

 その後、流たちの正面に来ると、真っ赤な鱗の生えた翼をバサッと開き、そのままイルミスの町への退路を阻むように降りたつ。

 緊迫が走る流たち一行。それを嘲笑うかのようにレッド・ドラゴンは口を開く。


「オイ!! キサマら、一体どういうつもりかな?」

「うぉッ、コイツも話すのか。だがエッジ・エッジより流暢だぞ?」


 流のその言葉を聞いたレッド・ドラゴンは、怒りの顔を忘れたかのように、得意げな顔に変わる。

 そして馬鹿にしているのがアリアリと分かる表情で、流へと話し始める。


「フン。あやつは、『四竜の中でも最弱よ』! 我ら他の三――」

「もっ!? も、も、も、もう一度言ってくれ!!」


 流は思わずレッド・ドラゴンの言葉にかぶせるように、焦り始める。その様子をみたセリアは、いつか見たデジャブを思い出しながら、こめかみを抑えた。またか、と。


「は、えぇ? 何を……だ?」

「だから、お前の自己紹介だ!! ほら! お前の下のやつを言ったソレ!!」

「あ、あぁ。う、うむ。まぁ本当の事だし、気分も良いので言ってやろうではないか!! そうだ、あの爪しか飛ばす事しか出来ない無能は愚か者よ。なにせ――」

「違う!! そうじゃない、いいか、もう一度だけ言うぞ……エッジドラゴンは『何番目だったんだ?』と聞いている……ワカルナ?」


 瞬間、流は妖人(あやかしびと)となり、レッド・ドラゴンを鋭く睨む。

 突然の事にレッド・ドラゴンは目を見開き、「ひぅ」と情けない息を呑み込み後ずさる。

 よくわからないが、命の危機だと感じ素直に震える口を開く。


「そ、そんな顔しても怖くないぞ!! ひぅッ!? 睨むな!! わ、分かったあれだ……え~っと。そうだ! ふふふ、心して聞くが良いわ。あやつはな……我ら四竜の中で一番弱いのだ!! どうだ、満足した――ぎゃあああ!?」

「馬鹿にしているのか? もういい。シネ――ジジイ流」

『ちょ、ちょっと流様。お怒りは分かるけれど、赤いトカゲさんのお話聞いてあげましょうよ?』

「む。すまん、怒りのあまりつい」


 セリアたちは思う。どっちが悪党か分からないと。そして、どこの怒る部分があったのだろうか、と。

 呆然としつつも呆れながら、流をジト目で見つめる一行。無論Lはシャドーボクシングのように右手をシュッシュとしながら、やっちゃぇマイ・マスター!! と大歓声だ。


「で、何のためにここへ来たんだ? ことと次第によっては、斬りかかることもやぶさかではない」

「今斬りかかろうとしたではないか!? なんと言う人間? だ。我らよりも傲慢な人間なと初めて見たわ。で、その用事だがな。お前を殺し――」

「ジジイ流・壱式! 三連斬!!」


 うん、お前もういいわ。とばかりに流は通常の三連斬を放つ。レッド・ドラゴンはビクリとすると、強者の余裕なのか、右手の爪で三連斬を弾き返す。

 爪には傷一つなく、どうやら自分の爪の硬さは最強じゃないのか? と思うと、笑いがこみ上げる。


「く、ククク……ハァ~ハッハッハ!! 一瞬焦ったぞ、だが……その程度かぁ人間? と、言うよりだ……我の話を最後まで聞けええええ!?」

「え、いやだって。続きは『お前を殺し、全員道連れだ!』とか言うんだろ?」

「バカ言え。そんな事はしない。全員殺したあと、頭からまるかじりしてやるわ、そのジジイ以外はな!!」


 ルーセントは「誰がジジイじゃ!!」とお怒りだが、本当の事なので誰も何も言えない。

 それを見たルーセントは〝ぐぬぬ〟すると、怒りのまま流へと急かす。


「おい小僧!! 憎きレッド・ドラゴンを真っ二つにしてしまえ!!」

「だ、そうだ。うちのお爺ちゃんは短気でな――そろそろ」

「――殺してやる。ドラゴンをなめ過ぎだ」


 流の攻撃を思いの外、完全に防いだ事にドラゴンとしてのプライドが戻る。

 すると、あれだけ恐怖していた体は自然と動くようになり、目の前の人間のような男を殺そうと動き出す。


「セリアとルーセント。それとエルヴィスは、石橋の下に隠れていろ!!」

「分かったわ! 私達がいると足手まといだものね。気をつけて!!」

「ワン太郎は全員を守れ、Lは俺のサポートに付け!」


 流の言葉で全員機敏に動く。流は嵐影に騎乗しなおすと、レッド・ドラゴンの周りを高速で周回する。

 その隙にLは上空へと昇り、レッド・ドラゴンが飛ばないように牽制しながら、逃さないと白の宝槍を投擲(とうてき)しようと構えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ