296:威光を示せ
光のまゆが割れ、その中から出てくる二人。『R』と名付けられた男は、ボコボコだった無残な顔は綺麗に治っており、無くした角の断面に「忠」と刻印がなされていた。
顔は元々いい男だったが、爬虫類っぽかった顔つきが消え、セクシーな魅力溢れるものになっていた。
年齢は元は三十代前半頃だったが、明らかに若返っており見た目は十代後半に見える。
さらにどういう仕組か分からないが、服装まで変わっており、艶やかな赤い和装のようなものを粋に着崩したものだった。
さらに『L』と名付けられた娘も、元は二十代後半のようだったが、こちらも十代後半まで見た目が変わっていた。
顔つきも男性のようであり、体型もそれに近かったはずだが、今は実に愛嬌のある可愛らしい顔だ。
さらに体型も大幅に変わっていて、女らしい丸みのある魅力的な……いや、妖艶なものになっている。
こちらも執事服のようなモノを着ていたはずだったが、今は黒い巫女服を改造したような露出感が溢れる、ちょっと見た目がヤバイものだ。そして無くした角後には「義」と刻印されているのだった。
「うぅ……これは一体? 我はどうしたと言うのだ……?」
「あぅぅ……体が何か変……でも力が沸いてくる……?」
「お、お前ら一体どうなってる? 見た目も服装も何もかも違うぞ!?」
そんな流の言葉で二人はお互いを見る。すると面影はあるが、まったくと言っていいほど違う容姿になっており、困惑気味に確認する。
「ええ!? 殿下? いや、Rですか?」
「そうだ。そういうお前はレティシャ……いや、Lか?」
「「こいつは驚いた……」」
「そらこっちのセリフだわ。一体どういう事だ……」
そこにワン太郎が〝ふふん〟と得意げに話し始める。
「あるじぃ。ほれ、これ見て~ワレの首についてるやつ覚えているワン?」
「ん? ああ!! そうだったな、もともとその紅白の注連縄は付いて無かったんだったな」
「そうだワンよ。それと語尾もこの姿だと強制的に『ワン』となるの……かなしぃ。それと同じで、あるじと契約したから、主の好みに変わったんだワン」
「つまり、コイツらの変化は俺の趣味だと?」
「多分そうだワンねぇ。Lなんか、あるじの趣味全開だワン」
「違うわ!! たぶん……」
そんな二人を凍る目で見つめる目線が二つ。一つはセリアであり、もう一つは言わずもがな妖刀の中の人である。
「ナガレ龍人の娘を……あ、あんな破廉恥な格好に!! ハッ!? 私にもあんな格好を望んで……だめよダメダメ」
「流様ぁ? またそうやって、節操なく増やしていくのかなぁ?」
背中に突き刺さる〝ゾッ〟とする冷気を伴う視線。それを感じ、まるで油の切れたオートマタのように〝ギギギ〟と異音がするように振り向く。
「な、何を言っているんだキミたち……誤解だよ、ごかい」
「流様ぁ? ワンちゃんの言う通りで、五階も六階も無いと思うんだけどなぁ?」
「ヒィ!?」
「ナガレ……あのね……言いにくいんだけどね。さすがにもう少し名前を考えてあげようよ?」
「ぐぅ!?」
「姫様、それにそこの娘ご。大殿様に常識とか、常識やら、百歩譲って常識を求めるのは間違いかと思われますが?」
「パンツまるだしで寝てるやつに、常識を言われたくないんだが!?」
「男の子はそんな細かい事を言ってはモテませんよ?」
「あいにく、今はその方がいい気がするんですがね」
「失言でした、ではおやすみなさい。ふぇ~」
「だからパンツ出したまま寝るな!!」
もう収集がつかないような状況を、嵐影は楽しげに見ている。
一時は死ぬほど落ち込んでいた主だったが、今はとても元気になってよかった。
そう嵐影はちょっと前の主を思い出し、小鳥を頭に乗せながら優しい目で流たちを見つめているのだった。
そんな混乱の状況であったが、やがて龍人たちが目覚め始める。とくにLの父であるエルギスは、娘たちの変身の余波をくらい気絶していた。
だが目覚めるとそこには知らない男女がおり、よく見れば自分の娘と仕える主だと気がつく。
「くぅ……一体なんだと言うのだ……ん? は……? ま、まさか殿下!? それにレティシャなのか!?」
「目覚めたかエルギス。そうだ、我は生まれ変わったのだ……天上の御方であるナガレ様によってなぁ!!」
「ふふふふ父上。Rの言うとおりです。我らは天上の御方である主様により、名を授けられ生まれ変わったのです!! そして私はLとお呼びください」
「ええええええ!? なんなのそれええええ!?」
思わず素っ頓狂な声でまぬけな事を言うエルギス。目覚めたら娘は若返り顔つきも体つきも何もかも変わっており、仕える主も歓楽街で遊んでいる若い男に見えたのだから。
「Rそれでこの後どうする? このまま龍人がここに居たら収集がつかん」
「マイ・マスター。まずはこのRがバカどもを率いて城に戻り、天上の御方たるナガレ様の威光を知らしめてまいりましょうぞ!! 口惜しいですが、マイ・マスターの護衛にLを置いておきますれば」
「R、その役目任せておいてくださいな。あたしがマイ・マスターを守ります……どこにいても、ずっと……ふ、フへへへ」
「怖いんだけど!! つか、マイ・マスターになったのか俺? まぁいい、じゃあ頼むぞR。それと別に威光なんか知らしめるなよ? 普通に仲良くできればそれでいい」
「はい、お任せをマイ・マスター。必ず貴方様の威光を世界に知らしめてやります!!」
「あの、言葉のキャッチボールしようよ? 話し聞いてた?」
「お任せください!! 者共! マイ・マスターの仰せだ!! 城に帰還し、兄上と一戦するぞ!!」
その宣言で、一瞬戸惑うもこの隊はエリート部隊。つまりレッドの親衛隊だ。その主の言葉は絶対であり、その兵士の練度も質も龍人一と呼ばれているものだった。
だから混乱の最中空中から落ちても死なず、帰還出来るほどの余裕さもあった。
そんな主からのオーダーに龍人兵は震える、ついにあの愚鈍な兄を追い落とす決意がつき、奮い立ったのだと!!
熱狂の龍人達は、翼に魔力を再充填し大空へと羽ばたく。それを満足げに見たRは困惑のエルギスを引き連れ飛び立つのだった。
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