287:土御門流
「ぶぁ~かめええええ!! そんな地面なぁぅど、いくら攻撃したとて俺様には通用せんわ!!」
「――ゅういしろよ」
「ハァ~ん? き・こ・え・な・いなぁ? このまま上空から攻撃してやるわ」
「だから、『足元には注意しろ』って言ってるんだよ」
「ハァ~ン? 何を言ってぇ~る? こん馬――はぁ?」
アルギッドは上空十メートルほどの高さから真下を見た。先程の地面が隆起した場所を中心に、いびつな蜘蛛の巣のように亀裂が入った瞬間だった。
突如地面が〝ヴァゴ〟と盛り上がり初め、それが加速度的に進む。やがて針山のような様相になった次の瞬間――。
「ジジイ流あらため、オレ流・針山土槍ってかな?」
流はそうつぶやくと、美琴を地面に突き刺しダメ押しとばかりに妖力を注ぎ込む。
すると針山が生きているかのように蠢き飛び上がる――と、言うより射出された。
その勢いは推進力も無いはずだが、かなりの速さでアルギッドへと殺到する。
「クッ!? こんな程度でえええええええ!!」
アルギッドは龍人である。つまり空の戦いは得意中の得意だ。が……。
「な、何だコイツぁあ!? どうして追ってこれる!? 魔法じゃない、一体なんだああ!!」
そう、土の針山は土槍となり、逃げるアルギッドへと殺到する。急上昇・左旋回の後に大回転をしてもなお、土槍は勢いを増し追ってくる。
この理不尽極まる状況、その原因はあの娘だった。
『大殿様、そのネーミングはどうかと? あ、もう少し妖力を絞って繊細に』
『向日葵ちゃん、流様は結構センス無いんだから、そういう事を言うんじゃありませんよ?』
『失言でした姫様。コホン。あらためまして、大殿様。名付けが壊滅的でございまする』
「余計なお世話だ!! お前らちょっと黙っとけ! コントロールが上手くいかねぇ――ぐぎぎぎ」
先の龍人戦で、空中の敵にどう対処したらいいかを、ここまで来る間に悩んでいた時だった。
向日葵が案があると言うので聞いてみると、本来は不可能だが、悲恋に取り殺された事で妖力を自在に操れるようになったという。
そこで向日葵がサポートする形で、土御門流の陰陽術を使い、岩斬破砕で土砂を粉砕・再構築のうえ、式神とする事で今回の攻撃手段となる。
(クッソオオオオ!! こうなったら地面にギリギリ下降して壊してやる!!)
アルギッドはきりもみ状に急降下すると、地面ギリギリへ向けてほぼ垂直に降りてくる。
後ろを振り返れば、土槍も後を追ってきており、このままなら確実に地面へぶつかって壊れるだろうと予測する。
地面まで残り七メートル。翼に魔力を纏わせ強化する。残り三メートル、空気抵抗を最大にあげて、ギリギリのところで回避するように飛ぶことに成功!
「クハハァハハハ!! やったぞおおおおおおうううう――ぎゃヴぉ!?」
「アホめ、その槍は『何で出来てる』かを忘れたのか?」
アルギッドが回避に成功したと思った刹那、突如現れる土の壁。そこに頭から思いっきり激突し、壁にめり込み動きを止める。
『馬鹿ですねぇ。地上に来たらこうなると考えられないなんて』
『姫、馬と鹿に失礼です。それより大殿のセンスの無さが問題です』
「うっさいわ! はぁ疲れた……とんでもなく難しいなコレ」
『まぁ初めての試みですし――向日葵ちゃん?』
『はい、奥で生きていますね。では私は眠いので帰ります。ふぇ~』
「オイ。そこは一緒に戦いますとかじゃねーのか!?」
『ぁ、もう帰っちゃいましたね……』
「悲恋美琴はフリーダムすぎて、ツッコム気も起きねぇわ……来たか」
次の瞬間、土壁が吹き飛ばされる。その中央にはアルギッドが更に顔面血まみれで、死にそうな顔で立っていた。
むしろよく生きいたと流は関心する。さすが龍人だ! と。
「あぁぁぁぁ……りえなぁあい……なぜだ? なぁぜわ・た・し・が!! こんな目に合う?」
血が吹き出る頭を掻きむしりながら、アルギッドは常人とは思えない異常さで髪をむしる。
ちょっとキモチワルイが、流も暇じゃない。だからこそ――。
「おい、そろそろ懺悔の時間だ。その前に一つ聞きたい。お前がこのトカゲ共を連れてきたって聞いたが、なぜそんな事をした?」
「それがどーしたぁ? 人間狩りしないかと言ったら、喜んでぇ来るのは当然! 人間ドモぉ~は、リザードマンを狩りの獲物にしぃぃぃてるぢゃああないか? カワイソーな、ト・カ・ゲちゃんを救うのもぉ~貴族のタ・シ・ナ・ミだッ!!」
「つまり、トカゲ共は一切悪いことをせず、被害者だったと言うわけだな?」
「と・う・ぜ・ん・だッ!! いいか、アイツラはぁ……あいつらは? ん?」
アルギッドは悩む、何かがおかしい。何かが違う。何かが足りない。それが何か分からない。
頭でも打った後遺症か? そう思う。が、やっぱり何かが変だと思う。
「うううううウルサイ!! 黙れえええええええ!!」
アルギッドはアイスブルーの短剣に魔力を込める。すると短剣に冷気が急速に集まりだし、氷の長剣となるのだった。




