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275:リザオ

「なんだ!? 一体何が起こっている!!」


 ここ、クコロー領「アイヅァルム」は、どこからかいきなり襲いかかって来たリザードマンと交戦していた。

 まだ二十代であろう金髪青目が戦場によく映える男、領軍長の一人「イズン」は突然の事態に困惑する。


「イズン様! 斥候魔法により分かりました!! 敵背後よりさらに強大なナニカが現れ、リザードマンを駆逐しているそうです!!」

「報告は正確にしろ! ナニカとは何だ!?」

「そ、それが。ラーマンと、子犬? らしいと」

「俺は聞き間違ったのか? え~と、ラーマンと子犬と聞こえたが?」

「はい、間違いありません」

「……馬鹿にしているのか?」

「ほ、本当なんです!! 斥候魔法使いが三度確かめました!!」

「あ~わかった。よし、それは千歩譲って信じよう。で、なんでトカゲ共は止まっている?」

「あの……怒りませんか?」


 その問に報告を持ってきた領兵は顔色を悪くし、頬を引きつらせる。それを訝しげに見るイズンは、アゴをしゃくって続きをうながす。


「聞かないと怒りようもない」

「ぅ、実はその二匹を使役していると思われる男がいます。それが……人じゃ無さそうだ……と」

「ハァ~? なんだそ――」


 その時だった、伝令が焦ってイズンの元へと駆けつける。


「イズン様大変です!! これを機と見たセリア様が、直衛二十騎と共に討って出られました!!」

「何だとッ!? クソッ、あのジャジャ馬めが! 後方で大人しくしていればいいものを!! 至急連れ戻してこい!!」

「ハッ!!」

「チッ……面倒な事をしてくれる」


 イズンはこの戦闘をさらなる出世の道具にしようと考え、あえてゆっくりと殲滅して、敵の強大さを喧伝するつもりであった。

 だが意味のわからない奴らの登場で、それが誤算となる。さらにクコロー伯爵の娘であるセリアが暴走し、直衛の二十騎と共に討って出たという。

 ますます計算が狂いだし、イラつく頭を掻きむしりながらイズンは防壁の上から戦場を睨む。


(クソ! 次から次へと何だ!? 子犬? ラーマン? アホか!! そして人じゃないヤツだと? 意味が分からん。セリアは俺の嫁にしてやるから、まだ殺すわけにはいかねぇし……チッ。こうなら一気にやっちまうか? いや、もう少し苦戦しねぇと軽い相手だと思われてもダメだ)


 そんな打算を重ねるが、状況は自分の思惑とは真逆の方向へと進む。

 まずは謎のナニカが後方から恐ろしい速さで、リザードマンどもを蹴散らしているのが見える。

 さらにセリアの部隊が、これも予想以上に善戦しており、敵の分断に成功しつつあった。


「どうしてこうなる……」

「イズン様なにか?」

「何でも無い!! それより後方の奴らの詳細は分かったのか!?」

「いえ、今はあの情報が最新です」

「クソ、つかえねぇ!」


 そうイズンは言うと、報告しに来た男を蹴り飛ばし、南門前へと歩き始めたのだった。



 ◇◇◇



「ギャヴァアアアア!!」

「――百三十っと」

『違いますよ、百と三十二です』

「あ~もぅ数えるの面倒だなっ――セイッ! 百三十三」


 恐怖で動けなくなった、リザードマンを容赦なく斬り伏せる流。

 リザードマンたちはその状況にやっと気が付き、迫る死の恐怖から逃れるために、本能が「生きるため」の戦いを選ぶ。

 圧倒的な力で人間を蹂躙して、四肢をもぎ、首をハネ、内蔵をぶちまけて楽しんでいたはずの自分たちだった。

 だが状況は一変し、意味のわからない恐怖が自分たちの首をハネ、体を真っ二つにされ、眉間を穿(つらぬ)かれた。


「っと、そっちに固まってる場所に人間がいるな?」

『戦闘音が激しくなっています。間違いないと思うよ』

「一気に蹴散らす、美琴!」

『うん、使って!!』


 美琴から妖力をもらい、さらに自分の妖力と混ぜ合わせ一気に数メートル飛び上がる。


「纏めてここを襲ったことを後悔しやがれ! ジジイ流・参式! 七連斬!! 【極】」


 拡散型の参式を、流だけが使える七連の斬撃を放つ。

 それを美琴と流の妖力を合わせて、その業最強の【極】にまで昇華させる。


 上方から放たれた七連の白紫の斬撃は、通常の斬撃より威力が半減する。が、妖力で通常の威力を凌駕した威力で、倍の十四の弧を描く。

 それが極にまで高まった妖力を付与された斬撃は、爆散しながら小さな斬撃となってリザードマンへと襲いかかる。


 ◇◇◇


 突然の事に誰も対処が不可能な状況、次々と仲間が倒れていくのを尻目に、リザオは眼前に迫る白紫色のナニカから視線が外せない。

 それが自分の左肩に当った瞬間、強烈な衝撃と激痛が走る。

 さっき人間の左肩を自慢のスピアで貫いて、もがく様を見て笑ったが、アイツも自分を見て笑うのだろうか? と、マヌケな事を考える。

 だがそんなマヌケな思考は、続けてくる白紫色のナニカが胸を貫通した事で終わりを迎える。


 ただ最後にリザオは思う――(アイツの口車に乗って、人間狩りを楽しもうなんて思わなかきゃよかった!! こんな所へ来るんじゃなかったギャ)と。


 ◇◇◇


 自分で放った業ながらも、あまりの威力に額に冷や汗を浮かべながら着地する流。

 見れば数十匹は大地に転がっていた。


「えぇっと……一・二・三・四・五……いっぱい、いっぱい、いっぱい」

『もぅ! 数えるのが面倒だからって適当に!! なんです、いっぱいって!?』

「えー、ギルドに申告する時数わからないとダメだろ? はぁ、もういいか。面倒だ……うん。美琴、エルシアの気持ちで頼む」

『えるしあ:ナガレさん、それで何体のリザードマンを倒したんですか?』

「いっぱいです! よし、コレで行こう!!」

『はぁ、もういいです――ッ!? 左斜め上!!』

「なッ!?」


 突如襲いかかる一本のスピア。それは流の心臓を確実に狙うコースで空から降ってきたのだった。

 本当にいつも読んでいただき、ありがとうございます! もし面白かったらブックマークと、広告の下にある評価をポチポチ押して頂いたら、作者はこうなります→✧*。٩(ˊᗜˋ*)و✧*。


 特に☆☆☆☆☆を、このように★★★★★にして頂けたら、もう ランタロウ٩(´тωт`)وカンゲキです。


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