204:三兄妹の挽歌~天骸神書
「なあ、お前さぁ~。そんな体になっちまって後悔してねーの?」
「別に? 何か強くなったし、美琴もカッコいいって言ってくれるし」
「なら別にいいがヨ、お前はもう普通に死ねねーぞ? むしろ死なないと言った方がいい」
「……は? どう言う事だよ」
「やっぱ分かって無かったか、お前は半分『あやかし』になった『妖人』って訳だ。つまり寿命がほぼ無くなったと言っていい」
その言葉に流は一瞬驚く、が。
「マジかよ!! ずっと美琴といれるな!!」
「ええええ!! 本当ですか!? 嬉しすぎるんですけど!!」
「はい、馬鹿! クソ馬鹿を頂きました!! お前らなぁ……。ハァ~、そう言う気がしてたぜ。でも忘れるなよ、お前は人の敵になった。そう言う存在だと認識して生きるんだな」
「ああ、それは過去に会った人からも言われて来た」
「分かってるならいい。なら俺からのプレゼントだ、手の平を上にして両手を出せ。いいか、動くなよ? そして目を閉じろ」
流は訝しげに両手を差し出し、両目を閉じる。それを心配そうに美琴は見つめる。
「じゃあ俺の愛情のこもった、ギフトってやつだ。受け取れ! じん★ちゅうううううッ!!」
傾奇者の変な男は両手の平を合わせ、人差し指のみを突き出す形にすると、流の人中――つまり「鼻の下の窪み」へ向けて高速で指を突き出す!
流はあまりの事に何も反応が出来ず、そのまま人中を〝ぐりっ〟と突かれたと同時に気絶する。
「ちょ!! 流様に何をするんですかあああ!? 手の平関係ないし!!」
「まぁ落ち着けたまへよ美琴クン。ほれ、流を見ろや」
「ほぇ……? あ! 人に戻っている!?」
泡を吹いて気絶している流は徐々に髪が黒く戻り、そして腕の模様や爪等も元に戻ってゆく。
「と、ま~ぁこ~んな感じ~よ?」
「…………凄いのは認めますけど、他に方法は無かったのですか!?」
「無い! あっても知らないふりをする!!」
「ハァ~。どうして私の周りの男の人って変な人ばかりなのでしょうか……」
「お主、俺が変だと申すのか? 変な妖刀に変って言われるなんて、大ショックな俺」
「っく、もういいです! それより流様は何時お目覚めに?」
「んんん? しらね」
ガクリと肩を落とす美琴は、この男とまともに話をする事を諦める。
「さってとよ~美琴クン。流が目覚めたら伝えてくれねーか。人中から人と妖の制御術式を送り込んだからよ、オンオフは額に力込めるようにし、人差し指を眉間に当てて『変人』と言えば良いってな」
「へ、変人ですか? まぁそのままの人ですが……」
「てか、変態だろこいつ?」
気絶している事を言い事に二人は流をディスる。でも本当の事なので、悪口になっていないのが悲しい現実だったりするのだが。
「ん? そろそろか……。美琴クン。お別れの時間だぜ? 馬鹿共の決着が付きそうだ」
「そうですか。お世話になったと言うより、ムカっと来ましたがありがとうございました」
「ハハハン、素直でよろしいぢゃねーのよ。だから褒美をやるぜ」
「い、いりませんよ! アナタのは特に!」
「そう嫌うもんじゃあ~ないってよ。ほれ」
傾奇者の変な男は、青金色の綺麗な糸で紡がれた繭を美琴に放り投げる。
「えっと、これは?」
「ん~。何でも羽化するかはどうかはお前次第だが、上手くいけばいい事があるってよ」
「何ですかそれは……」
「しらね。んじゃ~まったな~。流の旦那にもよろしくな!」
「あ! ちょっと待ってくだ――」
美琴が傾奇者の変な男に詰め寄ろうとした瞬間、白い世界は崩壊し青い世界へと向かうのだった。
◇◇◇
「参! どうなっている!?」
「指定時間まで残り百二十五秒です!!」
「くっそ、祝福の女神と言えどそこまで耐えられんぞ……」
攻撃より防御・拘束が主体の祝福の女神、ア・ラヴィ・オールはすでに満身創痍だった。
本来は名前の通り祝福をもたらす女神であり、強力なバフを召喚者の指示で対象へと付与する。
だが今回は〆を拘束し、そのすきに流を復活させるのが目的であったために、強大な力を持つ八本の足が召喚理由だった。
しかし八本あった足は〆に食いちぎられ、引き裂かれ、雷撃に撃たれ、業火に炭にされ、氷漬けの後砕かれ、九尾に細切れにされた。いくら天界へと戻れば復活するとは言え、ここまでのダメージを受けるとはア・ラヴィ・オールも思っていなかったろう。
だからピンチ言っても、祝福されたその身には強大な力をまだ保有しており、残る三本の足で〆を束縛しつつ、穂先が燭台のような槍で首を床に縫い付ける。
「フムウウッ。兄上申し訳ない、全ての術発動リソースが反魂祭壇へと封印されている状態で……」
「分かっとるわい! 『理』めぇ何時も肝心な時に邪魔しくさりおる。これだけは使いたくは無かったんやが」
思わず壱はエセ関西弁になってしまうが、覚悟を決めて新たな召喚術を使う事にする。
「〆ぇ恨むなよ! 《聖印術! 天骸神書、第八章・七項の聖骸を召喚!》」
光り輝く羽が一瞬のうちに壱の周りに現れ、それが右手に即座に吸い込まれるように集まると、そこには白より純白な一冊の神々しい本になる。
その光り輝く純白の本が勢いよく、〝千七百八十五ページ〟を開いた次の瞬間、壱の体の手・足・胸・額に直径二センチ程の穴が空き、そこから鮮血が滴り出す。
「《天上の御使いに封印されし聖骸よ、砂海の神域より蘇りその契約を果たせ……顕現せよ、イミダゾール・ラドゥース!!》」
そう神詞を唱え終わると、壱の足元と頭上に立体魔法陣が出来上がる。
魔法陣は壱を飲み込む形で積み上がり、体に開いた穴から光が溢れると、壱とは違う別人に変貌する。
始めは老人のような萎びた様子で、まるでミイラのようであったが、次第に時間が巻き戻る様に一人の精悍な顔の男になる。その体には白い鎧を纏っており、手には二股の大剣が握られていたのだった。
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