表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

161/539

160:善吉、そうお前は善吉! 上

「ちょおおおおおおお!? 待って、ウェイ! あんなの無理無理無理ィィ!?」

「己の力を呪うが良いね、雑魚じゃ相手にならないのが悪いさね」

「そうがぞ、ガキんちょ。人生ままならぬものっちゃ」

「何したり顔で人生語っているんだよ!? 俺ってばペチってされるだろ、ペチって!! デカすぎだろ! なんだよそのバケモノ!?」


 真っ青な顔になった流は、あまりの理不尽さに狼狽える。


「グハハハハ!! 何やら騒がしき事ですな。お久しぶりです、前鬼様、後鬼様」

「おお、善吉よう来てくれたがや。元気だったか?」

「悪いね善吉、今日はこの坊やの相手をしておくれ」

「お安い御用です。どうせ誰も来ぬ門ですからな……女狐以外」

「まあ~あそこまで行く馬鹿はそうそうおらんが……お嬢以外」


 ハイライトが消えた目で遠くを見る善吉は、遠い過去に傾国の狐さんが遊びに来た事を懐かしく思い出す。

 その様子を見た事がある前鬼も、不憫そうに善吉を見る。


「じゃあ来て早々悪いけど頼むよ。ほら、坊や! しっかりおしよ!」

「う、うん……」


 思わず幼児化したような流に、苦笑いしつつも善吉は金棒をブオンと一払いする。


「久しぶりの人間界、しかもここは物の質が違う。まさか異界? まあ良い。来たからには楽しませてもらおう」

「うおお……怖えええ……」

「馬鹿ちんが! 見た目に委縮してどうするっちゃ!」

「ほら、さっさと始めな!」

「クッソ! やってやるよ!!」

「その意気だがや、行って来い」


 流はやけ気味に美琴を抜刀すると、善吉の右足へ向けて駆けだす。

 弱点として映ったのは右足のスネたる「弁慶の泣き所」へ向けて一直線に飛び込む。

 そしてまるで巨木のようなスネへ、流は妖力を込めた美琴で斬り倒すべく業を発動する。


「ウオオオオッ!! ジジイ流・薙払術(ていふつじゅつ)! 巨・木・斬!!」


 美琴の刃に更に斧のイメージを乗せ、紫の妖力の斧が善吉へと襲い掛かる。


「っ!? おっと~」


 それが危険と判断した善吉は、巨体と思えない動きで上部へひらりと飛び上がる。

 空中で直径二メートル半程の金棒を軽く掲げ、それを流へと打ち付ける。


「ひぃ! ペチってするなあああ!?」

「ほ~れ」

「くっそ! ジジイ流・投擲術! 飛竜牙!!」


 モグラを叩くように、流へと金棒を振り下ろす善吉に、苦無(くない)状の妖力を左手に持ち、それを四本投擲(とうてき)する。

 善吉はそれは脅威と思わなかったのか、それを金棒で軽く弾こうとした瞬間――。


「バァカ~めぇ!」

「何っ痛っが!?」


 実に悪い顔で馬鹿めと宣言する流の苦無は、金棒を回避し右足のスネへと突き刺さり、その後爆ぜる。

 思わず善吉も立ち止まり、前にコケるような体制になってしまう。

 それを見逃さず流は右のスネにまたしても攻撃をしかける。


「倒れちまええええ!! ジジイ流・薙払術! 巨木斬!!」


 巨木斬を出す刹那、左側より金棒が迫り流へと襲う。

 急遽(きゅうきょ)目標を変更して、流は金棒へと巨木斬を放つ。

 美琴と金棒が鈍い音で重なり合うが、あまりにも善吉の力が強すぎて耐える事で精一杯になる。


「ぐっぞううううッ!!」


 一瞬は均衡(きんこう)するが、押し負けてそのまま吹き飛ぶ流。それを逃さんと善吉の金棒が追撃をする。

 しかし流は同時に両手へ厨二病あふれる「鬼の顔が付いた籠手」を創造すると、それをガードするようにクロスして金棒の追撃を防ぐが、さらに吹き飛び床へバウンドして止まる。


「ガッハッ!! ペッ……。容赦ねえなあ、オイ!」

「何を言う、お前こそ俺のスネによくも酷い事を。それよりも、だ。何故生きている? 最低あちこち骨折しているはずだが?」

「さてね……。この籠手のお陰じゃねーのか?」

「ほぅ、それはまた恰好が良いな!」

「だろう?」


 流は口から血を吐きながら、自分の作品を褒めてくれた善吉に好意を抱く。

 だが目付きは獣のそれになった流は、冷静に善吉の弱点を探る。

 すると先程まで右スネだった場所と、もう一つ新たに右ヒザ裏がぼんやりと透けて光が見えていた。


「スネも良い具合になったな。どれ、お互い少しは回復したろう?」

「ああ、俺もそれなりに回復した。じゃあ始めるとしよう」


 善吉は怪我をしているとは思えない速さで流へと迫る。

 流も美琴を中段に構えると、妖力を刃に纏わせ迫る


(結構ピンチだが、第六感はオークキングほど警鐘を鳴らしていない。精々危険だってくらいだ……やれるのか?)


 以前危険な状況は変わっていないが、図らずしも金棒を受けた事での自信と、第六感の感覚を信じて油断なく善吉を観察する。

 そして流は待つ、善吉が動くその時を。


「どうした、来ないのか?」

「ああ、アンタに殴られた傷が痛いんでね」

「そうか……。ならばそのまま潰れるが良い!」


 善吉は右足を庇うような仕草だったが、それでも大股で流へと迫る。

 金棒を打ち下ろす射程まで残りわずか、それでも流はまだ動かない。

 そしてついに金棒を振りかぶると、善吉は流へと振り下ろす!

修業編も後少し……。

いよいよ「妖刀・悲恋美琴」が……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ