表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

142/539

141:落ちた燕は凶悪なケモノになりて

ここ数日、ブクマの登録増加が本当にありがたいです。

あなたの優しさに感謝です! (*ᴗˬᴗ)⁾⁾ペコリ

 さらに今度は相性の悪さからなのかダメージまでも貫通しており、血反吐を吐きつつ流は立ち上がる。


「オオオ! 素晴らしいぞ人間。よくぞあの攻撃より生還した!」

「ぐぽッ……。ペッ……はぁはぁ、それはどうも……そろそろ満足したら、お帰り願えませんかねぇ?」


 そう言いつつ、流はマジックバッグから紫の回復薬を飲む。


「ブルハハハ。それもまぁ良いが、貴様は戦いの中で成長する面白き男よ。なればもう少し見たいと思うのも、武人なれば当然と思うのではないかな?」

「大人しく王様だけしていてくださいよ……」

「ブルハハハ! それは良く言われるのだがな、まぁ性分ゆえ許せ。ふむ、では余に一撃を与えられたら引くとしよう」

「それはまた……一撃で山を吹き飛ばすかのようなご注文で」

「ブルハハハ、本当に面白い男よの。どうだ、やってみぬか?」

「分かったよ、どの道選択肢は無いと同じだからな」


 オークキングは満足気に頷くと、王笏をドンと床だった場所に打ち付ける。


「うむ! それでこそ勇者と言う物よ!! なればその生きざまに敬意を表し、余の拳の一撃をくれてやろう」


 そんなやり取りを見ていた回りのオークは、血を吐いて弱った今がチャンスとばかりに、一斉に流へと襲い掛かる。

 それを一瞥したオークキングは呆れたように怒りの一撃を放つ。


「ブルアアアアアア!! 馬鹿共が、戦士の戦いを汚す事は許さん!!」


 その怒気一発で、オーク達が消し飛び肉片に変わる。

 それを見た流は額に冷や汗を滲ませながらお願いする。


「……お手柔らかにドーゾ」

「うむ」


 鷹揚に頷く豚の王、しかしその姿は威風堂々とした武人そのものであった。

 その堂々とした態度は人間ですら見た事が無いと思う程、その姿は自信と威厳に満ち溢れていた。

 そしてその時が訪れる。


 オークキングは右手に力を込め、流へと打ち付ける。

 それはとてもゆっくりと、実に緩慢に見えるが、実際は早かった。

 あまりの事に脳内の処理が追いつかず、そう見えたのかもしれない。だから災いしたのだろう。

 

 流は回復中の体に鞭を打ち、回避しようと右へ飛とぼうとした。

 しかし思ったよりも体は回復しておらず、読み間違った攻撃速度も合わせ、このまま直撃すると思われた刹那、突如自分と拳の間に青い影が割り込む。


「なッ!? ら、嵐影!!」


 嵐影は流を抱くように庇うと、体毛を針の様に逆立て、オークキングの痛恨の一撃をその身に受ける。

 流は嵐影が庇ったままの姿で壁へとぶつかり、その壁が崩壊すると動きが止まる。


「嵐影! どうしてっ!! お前っ!!」

「……マァ」

「心配したってお前……馬鹿だよ、そんな事で俺を庇うなんて」

「…………マ」

「待っていてくれ、コレを飲んで休んでろ」


 マジックバッグから緑の回復薬を取り出し、嵐影の口元へと運ぶ。

 しかし嵐影は口を開ける元気すらなくなっており、無理やり口を開き中へと入れる。

 すると何とか飲みこんだようで、一瞬目が開くが、そのまままた目を閉じて動かなくなった。


「ブルアアア……。貴様、そのラーマンは友なのか?」

「ああそうだ。こいつはな、俺の相棒の嵐影だ」

「うむ、見事なり! それにしてもラーマンを友と呼ぶ? 確か『書庫』に……コレか。そうか、そのラーマン……。いやそれこそ『聖獣人』と呼ばれる伝説の存在になりうるのか?」

「アンタ、何を言っている?」

「ブルハハハ。そうか、知らずに友となったか。やはり貴様は面白い逸材だ。うむ、そのラーマンに免じて最後の一勝負と行こう。見事この一撃を防ぎきったら貴様の勝ちとする」


 流は倒れている嵐影を一瞥し、返す視線でオークキングを鋭く睨みつける。


「分かった、俺も全力でお相手する」

「うむ、そう来なくてはな! ブルハハハハ!! では行くぞ? ぬぅん!」


 オークキングは力を込め、闘気を右拳に集中する。


 流も美琴を納刀すると、腰から鞘を抜き地面へと静かに正座する。

 そして納刀したまで右側へ美琴を置くと、静かに目を閉じて膝の上に左手を乗せ、右手は美琴の鞘へそっと乗せた。

 

「ブルルル……何の、真似だ?」

「気にするな、これが俺流のアンタへの返事だ」

「そうか。なればその腑抜けた姿勢で逝くがよい! ヌウウウウン!!」


 右手に強大な闘気を纏ったオークキングは、周囲の空間がぼやける程の威力で流へと右の拳を打ち下ろす。


 その砲弾のような質量を持った拳が、頭部へ着弾するまで残り僅かで流は動き出す。


 手を添えて置いてあった「美琴の鞘だけ」を流は右手で後ろへ飛ばすと、即美琴の(つか)を掴み、刃を上に向けてオークキングの迫り来る右手の籠手の「一部分」を狙う。


「ジジイ流納刀術! 奥義・陸翔燕斬(りしょうえんざん)!!」


 ――陸翔(りしょう)燕斬(えんざん)右側に刀を置いた状態で鞘へ手を触れ、内部へ気を溜める事で刀の重さを極限まで軽くし、右手で触れていた鞘のみを、勢いよく後ろへと飛ばす事で、一気に刃へ気を通し斬れ味を増す。それを流は妖力を使って行い、そして――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ