4-15 夏の定番、ぼくのなつやすみけいかく③
時はまた少し流れて、舞たちと旅行に行く日となった。
「リリ、舞と宗司さん以外の人がいるところでは、しゃべっちゃだめだぞ?」
「大丈夫です! お外に出たら、お口にチャックです!」
「それじゃ行ってくる。兎神、留守番よろしく。みんなを頼むな」
「お任せください。司様もお気をつけて。橙花、蒼花、くれぐれもよろしく頼みますよ」
「「行って参ります」」
「いってきまーす!」
色々考えた結果、干支神家からは司、リリ、橙花、蒼花が行くことになった。日頃から屋敷で色々と頑張っている2人の労いも兼ねてバカンスの計画だ。最も、2人にとってはどこまで行っても仕事になりそうなのだが……。
兎神に武神家まで送ってもらい、舞たちと合流する。門の前にはいつも通りに、宗司が仁王立ちで待っていた。もはやここが定位置である。
「わははは! 司よ! よくきた……ぬぁぁ!」
「うるさい! だまれ! 毎回、毎回、恥かかせやがって!」
「ぐは! 妹よ、兄を足蹴にするなんて、ひどいではないか」
そして、いつも通り舞にシバかれた。
それにしても舞。段々と言葉に素の感情が出てきている。猫かぶりはもうやめたのだろうか? 宗司の対応に面倒くさくなってきているのかもしれない。
どうやって反応すればいいのかがわからなかった司たちがポカーンとしていたら、舞がハッと我に返り、無言で宗司を引きずって家の中に消えた。
「舞さん、変でしたね? 何か悪いモノでも食べたのでしょうか?」
リリが無邪気な顔でみんなに問いかけるが、アレが舞の本性なんだよ、とリリに言える人間がここにいるはずもない。純粋なリリが、疑心暗鬼溢れる大人社会の闇を知るにはまだ早すぎるのだ……。
「……どうしたんだろうね?」
結局、司は言葉を濁して煙に巻く作戦にしたようだ。汚い、さすが大人汚い。
「こんにちは、凛さん、お世話になります」
「こんにちは、皆さま、よくお越しいただきました。外は暑いですから中へどうぞ」
今日はすぐに凛さんが現れて、中に案内してくれた。季節は初夏、日中の外の気温は30度を超える。ただそこに立っているだけでも汗がにじんでくるくらいだ。
凛に案内されて司たちが武神家に入ると、玄関の脇に2人がプルプルしながら正座していた……。言わずとしれた舞と宗司である。もはや恒例行事としか思えない。
「あの、舞さんと宗司さんはあそこで何をやっているのですか?」
「あ、リリちゃん、この2人のことは気にしないでくださいね。ささ、こっちへどうぞ」
極めて笑顔でこう話す凛に戦慄を禁じえない。リリも何か言いたげだが、凛の笑顔の圧力に負けた。司たちはもはや触らぬ神に祟りなしである。この世には触れてはいけない事情もあるのだ。
「みなさん、この部屋を自由に使ってくださいね。すぐにお茶をお持ちします。澪ちゃんたちも来たらお通ししますので、それまでゆっくりなさってくださいな」
凛は案内を終えるとすぐに退出していき、間髪入れずに門下の人と思われる人がお茶を持ってきた。予め準備して待機していたとしか思えないくらいの凄まじい接客力である。
司たちが応接間でお茶とお菓子を頂き、まったりと過ごしていると新たな来客があった。部屋に入ってきたのは澪と優だった。
「みなさん、こんにちは。今日はよろしくお願いしますねー……あれ? 舞ちゃんが見当たりませんねー。どうしたんでしょうかー?」
「ハロー、皆の衆。む、御茶菓子……私たちにも甘味を所望する」
「あれ? 舞は玄関にいなかったか? 俺たちが来た時にはいたんだけどな……」
舞がいない疑問を一瞬で横に置いて、さも、ここは我が家のような感覚で2人が寛ぎだす。この辺りは、舞との付き合いの長い2人のほうが慣れているのだろう。
「まー、そのうち来るでしょー。先に説明していきますねー」
「もぐもぐ、もぐもぐ」
澪は早速説明をするようだ。優は出された茶菓子をもう食べ始めている。相変わらずマイペースな2人である。でも、あれ? そういえば、いつものメンバーで1人足りない気が……。
「それではー」
澪の説明を要約するとこうだ。
行先は青葉家が所有する直径3キロほどの小島、そこにある別荘でプライベートビーチ付き。ただし、島の3分の2は観光ビジネスで使用していて、青葉家のプライベートエリアを除いて一般開放もされているから島内に旅行客もいるから気を付けること。
武神家から行き1日、現地滞在7日、帰り1日の予定。武神家からの移動は青葉家の車で近くまで向かい、船に乗り換えて島へ渡る。船に乗る前には知り合いの宿に1泊する。リリの宿泊も事前に連絡済みでペット同室可とのこと。島での行動は特に制限はない。食事に関して、朝は各自自由、昼は浜でバーベキュー、夜は別荘で夕食を予定している。
その他、シュノーケリング等やりたいことがあれば随時言ってもらえれば可能な限り準備するとのこと。まさに至れり尽くせりである。
「では、もう少し休憩したら出発しましょー」
あれ? もう1人……は?




