表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/278

4-11 休日のお父さんのような日々②

 司と橙花の目の前にはハグハグと一心不乱にリンゴを食べているリリがいる。相変わらずの良い食べっぷりである。ここまでおいしそうに食べてもらえると、見ているこちらが気持ちいいくらいだ。


 他のウルの民たちもそれぞれにリンゴなどの果実類や鶏ジャーキーなどを食べていた。どうやら、ヴォルフをはじめとした雄は鶏ジャーキーを好んでおり、ルーヴたち雌は果実類が好物のようだ。雄雌で好みが違うのはなかなか面白い特徴でもある。味覚の性質が違うのかもしれない。


 どうやらウルの民は現在、雄が4匹、雌が4匹(うち1匹が子供のリリ)で構成されているようだ。彼らの寿命がどれくらいあるのかわからないが、生活が落ち着いたら、これからは数を増やすことも考えたほうがいいのかもしれない。



 食事も終わり、それぞれは思い思いに食休みを始めた。橙花は大樹様のところで護衛をしている1匹の元へ差し入れを運んで行った。ついでにモンスタープラントにも差し入れをするそうだ。


 リンゴを綺麗に平らげて、お腹が膨れてウトウトし始めたリリ。そのリリを膝に乗っけて休んでいた司のもとにヴォルフとルーヴがやってきた。


「司、いつもありがとう。大樹様を助けて頂いただけでなく、ウルの民の全員を受け入れてくれたこと、とても感謝している。一度はバラバラになった我々全員がこうして一堂に会して大樹様にお仕えできるのも、すべては司のおかげだ」


「それに巫女としての使命で、この地を訪れたリリまで救って頂いて。私たちにとって司さんは大樹様の、一族の、家族の恩人です。改めて、深い感謝を。それにリリがこんなにも懐くなんて……まるで、この子に兄弟ができたみたいでとても嬉しいです」


 ヴォルフたちが話し始めた内容が、自分たちにも関係するとわかったのか、ほかのウルの民たちもそれぞれ司に対して頭を垂れて伏せていた。まるで人間が教会で神に祈るようなポーズだった。……リリだけは相変わらず、司の膝の上ですぴすぴとお昼寝中だったが。


「俺はそんな感謝されるほどの、たいしたことはしてないよ。リリがな……リリが小さい身体で一生懸命にしている姿を見ていると、俺もしっかりしないととか、俺も自分にできることをやらないととか思っただけだよ。その結果が今ある現状だ。だから俺よりもリリの頑張りを褒めてやってくれ。この子は純粋で、頑張り屋で、とても賢い。きっと将来大物になるよ」


 リリの頭を優しく撫でながら司がヴォルフたちに言った。撫でられたリリは顔をふにゃっと綻ばせ、少しもぞもぞとしたと思ったら、また穏やかな寝息を立て始めた。なにかいい夢でも見ているのだろうか。


「そうか……ありがとう。子は親の知らぬ間に大きく成長するものなのだな。私たちはいい娘を持った。とても誇りに思うよ」


「リリだけに任せていないで、私たちも一族としてできることをしっかりやりましょうね。ヴォルフ」


「ああ、もちろんだ。自分の娘にお役目で負けるわけにはいかないからな」


 ヴォルフとルーヴは感慨深くリリを見つめながらそう呟いた。周りで話を聞いていたウルの民たちもうんうんと頷きながら、次世代が順調に成長していることを喜んでいる様だった。



「司様、差し入れをお渡してまいりました」


 しばらくして橙花が戻ってきたようだ。


「橙花、ありがとう」


「ウルの民の方には果実類を、苗木にはお水を、ついでにプラントたちにも肉を差し入れとして与えました。それにしてもあの子たち、なぜか少しずつ成長している気がするんですよね……今まで全くそういう兆しはまったく見えなかったというのに。最近は実の生りもかなりいいですし。一体なにが影響しているのでしょうか」


 橙花が何やら不穏な内容の発言を呟く。


「それはきっと大樹様が成長されたからだろう。大樹様は我々が知る限り唯一の、魔素を作り出して周りの者に分け与えることのできるお方だ。ウルの民の祖先は大樹様の魔素のおかげで生まれたと口伝されている」


 そして、ヴォルフから何気なくさらりと重要そうな事実が告げられる。


「なるほど、そういうことですか。光合成の原理と同じか……それであればアレがあるはず。ちょっと確認すべき事項が発生しましたので、私はここで失礼します。皆さまはごゆるりと」


 橙花が走り去っていった。よほど急ぎの案件のようだ。


「司、私は何かマズイことを話しただろうか?」


「いや、問題はないと思うぞ。むしろ、いいアドバイスだったんじゃないか?」


「ならばいいのだが……」


「……まぁ、俺たちはゆっくりしていよう。何か問題があれば連絡をくれるだろう。せっかくなんだからヴォルフも昼寝してみたらどうだ? リリを見ていたら俺も眠くなってきたよ」


 司は学んでいるのだ。自分がよくわかっていないことに無理やりに手を出すと、高確率で失敗すると。それよりも、たまの休みくらいは家でゆっくりしたい。なんとも所帯染みた感覚である。


「今日は穏やかな良い日だなぁ、こんな日が続くといいなぁ」


 ……あ、それ、あかん発言やで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング  ← 1日1回ぽちっと応援下さると嬉しいです(*´ω`*)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ