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3-31 大樹様の麓で②

 どれくらいの時間が経ったのだろうか? リリの再会シーンに見入っていた舞は、ふと我に返った。隣を見ると自分と同じようにリリを穏やかな目で見ている司が目に入る。いつの間にか、司へのお説教も止めてしまっていた。あの光景を見た後だと、このままお説教を再開するのは、何となく気まずいなぁ、と舞が思っていたところに声がかけられた。


「改めて、二人には私の娘が世話になっているようで、ありがとう。娘から聞いたよ。ずいぶんと良くしてもらったと、とても感謝している」


「私からも。こうしてお互い無事に再会できたのも、お二人のおかげです。本当にありがとうございます。あの時はやむを得ない理由とはいえ、リリを突然一人で放り出すような別れ方をしてしまって、本当に心配しました。特に、司さんには感謝しても、し足りないくらいです……なのに、ヴォルフったら、恩人の司さんに怪我をさせるなんて……」


 さっきまでの威厳のある態度はどこへやら、急に奥さんに怒られたリリの父親、名前はヴォルフというらしい、は申し訳なさそうな顔をして尻尾を垂れさがらせた。見るからに、しゅーんとしているのがわかる。


「リリにも少し話を聞きましたが、司さんに助けてもらっていなかったら、もしかしたらリリは死んでいたかもしれません。あなたは娘の恩人であり、私たちの恩人です。本当にありがとうございました」


「それに、私たちが見ていない間も、リリは思っていた以上に立派に成長してくれていたようで嬉しいです。大樹様の巫女として、しっかりと務めを果たしているとか。私たちも娘のことをとても誇らしく思います」


 母親、名前はルーヴというらしい、から急に褒められたリリは照れくさそうにしていた。


「そうですね。リリはいつも頑張り屋さんですよ。今回もリリが司さんの異常を察知して、私に教えてくれたんです。友達想いのいい子です。それに、いつもとっても元気で、周りの人たちもリリに元気をもらって、いつも笑顔なんですよ」


「そうだな。俺ももしリリがお守りを持たせてくれなかったら、ここに立っていられなかったかもしれないからな。もちろん、ここまで心配して駆けつけてくれたことにも感謝している。リリ、本当にありがとうな」


 司はそう言って、いつも通り、リリの頭を撫でる。舞と司の言葉を聞いたルーヴは、目を細めて、司がリリを撫でているのを見守っていた。お互いの姿かたちは違っても、まるで本当の兄妹のような、そんな関係に見えるのがとても嬉しい、そう思える優しい眼差しだった。



 それからしばらくの間、リリは両親と別れてから自分がどうやって過ごしてきたのかを話している様だった。リリの両親も時折リリを毛づくろいをしたり、身体を擦り付けたりして楽しそうに話を聞いていた。司とリリと両親の様子を眺めつつ、舞にこれからどうするのかを相談する。


「数日前と比べると、無理をしない範囲でなら身体も動くようになったし、そろそろ戻らないとだな。大幅に当初の予定を超えてるし……というか、食料問題とか、風呂とかがそろそろ辛い。そういえば、舞は学校大丈夫なのか?」


 舞は自分の匂いを嗅いで、ちょっと顔をしかめた。最後にお風呂に入ってからもう1週間以上、最後に身体を拭いてから4日は経つ。現代を生きる綺麗好きの女子としては、これ以上は本当に許容ができない。むしろサバイバル慣れしている舞だからこそ、これだけで済んでいるのであって、他の人ならこの環境が続けば、発狂するのではなかろうか?


「そうですね。私も衛生面でかなり問題です。女子としては、お風呂が本当に死活問題です。あ、司さん、それ以上は近づかないでもらえます? 割と本気で、今、不味いので。学校は、念のため親に休学届を出してもらっているはずなので、ある程度は大丈夫ですね」


「休学……それは本当に悪かったな。俺がヘタ打たなければ、舞に迷惑かけなかったし……今度、道場にお礼に行くよ。舞のご両親にもお礼を伝えたいし」


「いえ、それは別に気にしないでください。両親の許可ももらってここにきてますから。司さんが無事なのも確認できましたし、結果オーライです。前に言ったでしょう? 司さんが一人で解決できないような出来事が起こったら、私はあなたを助けに行くと。私はその約束を果たしたまでです」


「それに、こういう時は、何と言えばいいか、わかっていますよね?」


「……そうだな。ありがとう、感謝している」


「はい、どういたしまして。……あ、そうです。今まで完全に忘れてましたけど、宗司兄も来ていたんでした。回収は……しなくていいですかね。まぁこの世界に置いて行ったほうが、後々の人類のためです」


 舞はさらりと恐ろしいことを宣った。しかし、噂をすればなんとやら、である。


「……呼ばれて飛び出て、武神流・武神宗司、推、参っ!とうっ!」


 変な掛け声とともに、大きなサイのような動物に跨って宗司が現れた。そして、宗司はその動物の背中から大きく跳躍すると、空中で大きくひねりを加えて、舞と司の前で綺麗な着地を決めた。体操で言えば10点満点級の見事な着地だったが、この場では全くの無意味である。


 いきなりの登場シーンに唖然とする周囲。しかし、この男はそんな空気はまったく読めないし、むしろ読む気もない。まさしく生粋のKYである。


「ふはははは、司よ、元気そうではないか!」


 古の森に、場違いに明るい、宗司の野太い声が響き渡った。

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