3-25 比類なき脳筋、武神流・剛、武神宗司①
ごめんなさい(土下座)……戦いはまだ始まりません……宗司と魔獣の説明を書いてたら思いのほか話が長くなりました……。あとお気づきの方も多いと思いますが、しばらく3人称視点になります。矛盾点があれば指摘くださると助かります。
武神流は2つの系統に分かれている。
1つは柔。現在、武神流の門下のほぼすべてがこれに当たる。舞や舞の母親が得意としている系統で、主に様々な型に沿った動きを反復して身体に覚えこませることによって汎用性を追求したもの。反面、既定の型に大部分を依存するため、宗司のような理不尽な脳筋が相手だとやや攻め手に欠ける。良くも悪くも万能型。
しかし、攻撃や防御、投げや極め、また武器の種類や有無などによって細かく型が設定されており、それらをなぞることでバランスよく体の動きを習得し、誰でも、どんな状況においても一定以上のパフォーマンスを発揮できるのが強みでもある。相手の武器や動きに合わせて自分のスタイルを変え、有利に場面をコントロールできる可能性がある。舞の母親などは戦闘時の分析能力に非常に長けており、相手の嫌がることを的確に突いてくる。
もう1つは剛。現在、宗司と舞の父親のみが修めている系統。型は柔と同じだが、限りなく無手に特化し、己の肉体の限界を突き詰めていくスタイル。昔の人は『パンが無ければ、ケーキを食べればいいじゃない』と言ったそうだが、武神流・剛は『武器が無ければ、拳で殴ればいいじゃない』と言わざるを得ない。この系統を修めた者は基本的に頭の中も筋肉で構成され、多少の問題は力で解決できるようになる。力こそが全てであり、正義である。美しい筋肉こそが至高。つまりは、筋肉至上主義であり、比類なき脳筋。
1対1の近接戦闘では無類のパフォーマンスを発揮するが、戦況によっては不利な状況も多々ある。罠があろうとなかろうと、正面から圧倒的な力で踏みつぶす。知能戦などは圧倒的に不向き。ただし、見るからに勝てない勝負の場合、多少は考える。この系統を習得するにあたり、必要なものは努力、忍耐、根性、筋肉である。日々、己の肉体と技を研鑽し、絶対に折れることのない不屈の精神を持ち、そして何より、真の意味での武神の信念を胸に抱く者だけが到達しうる極地。
己の大切な者たちを守るために戦うこと、勝つためならどんな手段をとることも厭わないこと、そしてやるからには絶対に『負けない』こと。武神流を始める際に、必ず教えられるこの言葉。この表の教えの中に含まれている、裏の意味とは、一体何なのか……。
それは、武神流初代の悲願、子々孫々に脈々と受け継がれてきた切なる想い。武神流・剛とは、すなわち初代の想いの体現者である。
宗司と魔獣。四つに組み合った状態でのにらみ合いは、永遠には続かなかった。先に動いたのは魔獣。彼は己の本能に従い、宗司を押しつぶさんと力をかける。それは、力比べをして自分が負けるわけがない、とでも言わんばかりの行動だった。
立てば3メートルを超える魔獣の大きな身体と比べて、その相手をしている宗司の身体のなんと矮小なことか。
しかし、先ほどは舞を簡単に身体ごと吹き飛ばした魔獣の怪力を受けているのに、宗司は潰れない。そして、一歩も引くことがない。それどころか、これで終わりか? とでも言いそうなくらいの余裕が見てとれる。
魔獣はさらに苛立ちを募らせ、全身の体重を使って宗司に襲い掛かる。1トン以上の体重を受ければ、人間には太刀打ちできるはずもない。普通に考えて、宗司に待っているのは潰れたトマトのような結末だ。
だが、今まさに魔獣の相手をしている、武神流・剛の人間は、決して普通の人間ではない。
それは、ただ1つの確固たる信念を胸に抱きしもの。
それは、如何なる常識をも覆す、この世で最も理不尽な存在。
それは、荒ぶる鬼神の体現者。
宗司の全身から強烈な怒気が吹き上がる。それと同時に、宗司の顔に鬼の形相が浮かんだ。普段、至って穏やかな存在ほど、怒らせると怖いモノはない。宗司の怒りはまさにソレだ。最愛の妹を傷つけられたこと、それは万死に値する。
その怒気を受けてか、圧倒的な体格差があるにもかかわらず、魔獣の顔に怒り以外の、感情的な何かが浮かぶ。それは魔獣にとっては初めての経験で、おそらく無意識のことだろう。
本来、野性の獣は本能的に相手との力量差を感じ取る。そして、明確な理由がない時を除き、勝てない相手に挑むようなことは滅多にすることがない。それは野生の獣にとって、自分自身が生き残ることを、子孫を残すことを最優先に考えた結果なのだから。
だが、この魔獣は違う。死兵は戦場で恐れなど抱いてはならない。そんなものは障害にしかならない。使い捨ての兵には戦う以外の余計な思考は必要がない。だからこそ、そういった機能はあらかじめ制限されている。
目的のために戦い、そして死ぬこと。己の闘争本能のままに、忠実に目的を遂行すること。魔獣に求められているのは、たったのこれだけ。故に、魔獣はとても歪な存在なのだ。
しかし、その無いはずの魔獣の感情を脅かすほどの存在が、ついに現れた。
宗司とは一体何者なのだろう……(棒読
また、本話に出てくるルビは超意訳していますので、正しい英語ではありません。
力こそ正義 Might is rightとか、力こそ全て、強さこそ全て All we need is power,All we need is the strengthとかだと思います。




