3-20 武神の少女は出発そうそうに食糧問題に直面する the food problem
唐突に始まった絶叫体験から30分ほど経過しました。私たちはスタート地点から、兎神さんに言われたとおりに真っすぐ東に走っていき、大きな河にぶつかりました。まぁ、河を見つけたのはリリなんですけどね。河の手前で停止して、リリがどうしましょうか? となったところで、一旦休憩をしています。
途中、大きくて不細工なトカゲみたいなのが何匹かいましたけど、リリの圧倒的な脚力に追いつけるわけもなく、ぶっちぎりの一等賞で、この場所までゴールインしました。えっ? リリの騎乗はどうなったかって? もう慣れましたとも。ええ、慣れざるを得ないとも言いますけどね。フフフフフ。……おっと、またうっかりダークサイドの闇に堕ちてしまいそうになりました。イケナイイケナイ。
頂いた資料によると、もうちょっと南のほうに橋があるようですね。そして、河を超えたその先は草原になっているようです。そこからさらに東へ進み、いくつかの河と湿原と草原を超えると、司さんが目的地としていた森があるという配置ですかね。
時間もあまりありませんでしたから、ざっと流し読みして、重要なポイントだけ細かく読んだので、情報の漏れもあるかもしれませんが、まぁおそらく大丈夫でしょう。とりあえず進んでみて、何か不都合があったらその都度考えればいいと思います。
私、あまり考えるのは得意じゃありませんし。こういう知能的なことは、うちのグループでは優と澪の担当ですからね。ちなみに、私は体力と武力防衛担当です。特にナンパを撃退するときとか大活躍しますよ? ……あの、何か文句でも?
「リリ、この先をどうやって進めばいいか、わかりましたよ。そろそろ出発しましょう、南に進むわけですから、あっちですね。リリ、あっちへ行きましょう。橋があるはずです」
「はーい」
再びリリに跨って進みます。もう慣れましたから、あんな失態は犯しませんよ?それにしても、この世界も地球の日本と同じで北半球の太陽位置なんですね。方角がわかりやすくて助かります。念のためコンパスでも確認しましたけど、多少の誤差はありますが概ね同じ法則のようです。
そのまま10分ほどで、次のチェックポイントの橋が見えてきました。わあ、本当に自然の木でできている橋なんですね。すごい光景です。それにあの木の上に建ってる家みたいなのも、よくこんなところに家を作りましたね。変人の考えh……げふんげふん、独創的な人は発想が素晴らしいですね。
「リリ、とりあえずあそこに見えるお家に行きましょう。そこで水分補給をしながら、少し休憩をしてから先に進みましょうか」
「わかりましたー」
リリは私を背中に乗せたまま、ぴょんぴょんと木の上を器用にジャンプして渡っていきます。リリはすごいですね、こんなに上下運動をしているのに、着地の時にはちゃんと衝撃を消してくれています。あっという間に、樹上の家にたどり着きました。
家の中は石材と木材でできているようですね。歩いても跳ねてもビクともしないので強度も十分のようです。
さて、ここの辺りに生えている木は水上樹というらしいです。河から水を吸って生息しているみたいで、枝を切ると内部を流れている水を得られるとのこと。
あの流し台のようなところで試してみましょう。荷物からサバイバルナイフとカップを取り出して枝を切ってみると、結構な勢いで水が染み出してきました。これは便利ですね。カップにたまった水は先にリリに飲ませます。運動している分、水分の消費は多いはずですからね。水を飲む、水を溜める、飲む、溜めると繰り返して1リットル分くらいの水を飲んだところで、リリが満足したので私も頂くことにします。うーん、おいしいですね。山の湧水に近い清涼感がします。
ついでに少し間食しておきましょうか。私は固形栄養食、リリにはナッツとドライフルーツ(橙花さんの手作りらしいです)にしましょうかね。この固形栄養食は味に関してはおいしいにはおいしいのですけれど、食べたときに口の中がモソモソする感じがあまり好きではありませんね。保存食ですし、手軽に高カロリーなので便利なのですけれど。ふとリリのほうを見ると、嬉々としてナッツとドライフルーツを食べていました。尻尾が無意識にわさわさと振られているので、リリの口に合ったのでしょう。
「舞さん、これおいしいです! リンゴほどではありませんが、甘くておいしいです! リンゴには敵いませんが! こっちのは森でいつも食べてた木の実に似てます! おいしいです!」
うん、大きくなってもリリはリリ、いつも通りですね。それにしても、この形態のリリはよく食べますね……。ナッツとフルーツ合わせて500グラムはあったんですけど、あっという間にペロリでした。確かにこれでは食べ物が少なくなる冬には食料が足りなくなるでしょう。この先の草原には確か果実の木が点在しているようなので、道中で何か仕入れていかないとリリの食料が枯渇しそうです……。出発そうそうにいきなり食糧問題に直面してしまいました。ああ、どこでも豊富で安全な食べ物が入手できる、日本というのはなんて恵まれた国なのでしょうか。
軽食を済ませてから、リリの食休みを兼ねて30分ほど休憩し、休憩後に水上樹から水を頂いてからこの拠点を出発しました。河を渡ると、今まで赤茶色だった景色が打って変わって、今度は見渡す限り一面が緑色。
これはまたリリが走りやすそうな環境ですね……。ああ、リリの尻尾が無意識にフリフリしていますよ、きっと、またいっぱい走れるの? やったーとか思っているのでしょう。そして始まる恐怖体験のおかわりです。いえ、もうある程度は慣れたんですけれどね。ある程度は。ほら、ジェットコースターも昇るときは毎回新鮮なドキドキ感があるっていうじゃないですか。きっとソレと同じです……私、ジェットコースター乗ったことありませんけど。




