3-18 武神の少女と紫の乙女、新たな世界に発つ the new world
正直半信半疑だったのですけれど、不思議なことというのは本当にあるんですね。いわゆる神隠しというのは案外こういう世界に意図せずに行ってしまったのかもしれませんね。不謹慎な話ですが、私にとってみれば地球の日本という国が自分の世界の全てでしたから、こういった貴重な体験ができたことは素直に感謝すべきかもしれません。もちろん、司さんを探すことというのが最優先課題ではあるのですけれども。未知の世界というのは、なぜこうもワクワク感を掻き立てるのでしょうか。
準備を終えた私たちは、司さんのお屋敷の地下にエレベーターで降りて、軍事基地みたいな施設に足を踏み入れました。この戦闘用ともとれる多目的の服といい、本当にだれかと戦争でもする気ですかね?普通のお家にこういう施設は絶対に必要ないでしょう。賭けてもいいですよ?
一体どこまで行くのでしょうか?どんどんと奥へ下っていき、最後にやけに厳重そうな両開きの扉の前で止まりました。鉄製?ではなさそうですね、匂いが違います。私には、なんの金属なのかわかりません。
「ここから先は、舞様とリリ様のみでお進みください。私たちがご案内できるのはここまでです。あと、これをお持ちください。同じものを司様もお持ちです。おそらくですが、司様は東に進んでいると推測されますので、東に向かうとよろしいでしょう」
兎神さんはそこまで言うと、手帳のようなものを私に渡してきました。そして、ちらっとリリのほうを見て、
「今回の目的はいくつかありますが、司様はリリ様の故郷の森を探しているものと思われます。その資料には、その場所のおおよその位置が記してあります。あと、彼の地に行かれましたら地球の常識は通じませんし、命の保証もできません。努々お忘れなきよう」
司さんはリリの故郷を探しに行ったのですね。それは確かに必死になるでしょう。あの人の本質は優しさですから。故郷の森と聞いた時に、リリの顔が少し曇ったような気がしましたけど、見間違いでしょうか。
「さぁ、リリ、いきましょうか」
「…はい」
リリの声にいつもの元気がありません。やはり気にしているようですね。この子のことですから、さっきの話を聞いて、司さんが自分のせいで危険なことになっているとでも思ったのでしょう。優しい子ですね。
「大丈夫です。司さんは強い人ですから、きっと無事ですよ。私たち2人で迎えに行ってあげましょうね。それにですよ?あの人のことですから、案外もうリリのご両親にご挨拶でもしているんじゃないでしょうか。私もリリの故郷に旅行にいけるんですから、とても楽しみです。リリのご両親にお会いして、お話ししたいですよ、あなたたちの娘さんは立派に、元気に育っていますよって、私たちにとって無二のお友達ですって」
リリを抱き上げて諭すように優しく話しかけます。大丈夫ですよ。
「…司さん、大丈夫でしょうか?」
「ええ、きっと。早く迎えにいってあげましょうね」
よかった、リリの声に少し元気が戻ってきたような気がします。まだ納得はできていないようですけれど、司さんと会えばそれも消えるでしょう。では、早速行きましょうか。
「では、行ってきます」
「「「司様を、どうか、よろしくお願いいたします」」」
3人が深々と頭を下げて、見送ってくれました。冷静に見えますが、この人たちも必死なはずです。そうでなければ私の装備や荷物をこんなにもすぐにそろえてくれるはずもありませんから。せっかくの厚意を無駄にしないようにしなければなりません。
両開きの扉を超えた先にあったのは、そこにあったのは地下には不釣り合いな代物。朱い朱い鳥居が1つだけ。その鳥居の先は、明らかに周囲と違う景色が広がっています。なるほど、これが門というわけですか。これは完全に異質の存在ですね。まぁ、ここまできて臆すわけもありませんので、さっさと行ってみましょうか。
「リリ、行きますよ。私が先に行きますから、向こうの安全を確認したら呼びかけますのでついてきてください」
「はい、舞さん、わかりました」
リリを地面に降ろして、私が先に鳥居を通過します。通過した瞬間に、モヤッと少し変な感じがしましたが、気にしないことにしましょう。出た先は、薄暗い空間で、正面の奥に光が見えます。足音の響き方からしてけっこう広いですね。周囲に危険な気配なし、匂いにも変化なし、視界も暗順応してやや見づらいですが視覚での確認も問題なし。とりあえずは安全そうです。
「リリ~、大丈夫そうなので来てください」
私は念のため正面を警戒しながら後ろ向きにリリに話しかけます。しばらくして、トコトコとリリの気配が近づいてきて、私のすぐ後ろで止まったのがわかりました。
「では、まずは正面のあの光のほうへ行ってみましょうか。話では扉があるみたいです、まずはここから外に出ましょう」
薄暗い空間から通路のようなところを歩き、光が漏れている壁まで行くと、壁に手を当てます。するとすぐにゴゴゴっと地響きを伴って岩がスライドし、外の光が流れ込んできました。急に光量が増えるとまぶしいですね。5秒くらいすると落ち着いてきたので、リリと2人で外に出ました。外の世界は見渡す限りの、赤茶色一色。確か、ここから東でしたよね。
「それではリリ、これから東に向かいますよ。移動している間に、何かあ…」
私はこれからの方針を話すために、リリのほうへ向き、言葉を失いました。
「えっ!?」




