3-6 灰色の男は謎世界を彷徨う hallo 謎 monster
今回の俺の目的は3つだ。
1つ、リリの住んでいたと思われるウルの森があるかの調査。もしウルの森が存在するならば、リリの両親の安否を確認すること。また、そのウルの森の中央にあるらしい、タイジュ様とやらの現在の状態を確認すること。リリがひどく気にしていたしな。
2つ、現地で食べれるものの調査及び確保、あと水場。これ重要、手持ちの食料には限りがあるから、できる限り現地調達が望ましい。多少なりとも保存が効くものがあれば尚良し。
3つ、プラちゃんたちのような移住可能な動植物の調査及び可能ならば確保。プラちゃんたちは橙花が種から育てたらしいが、正確な寿命もわからないし、そもそも増えるのかもわからない。今後のことも考えて手持ちの資源は多いほうが良い。
1つ目のウルの森に関しては、屋敷の資料にそれらしい記述があって大体の所在が分かっている。ウルの森かどうかの記述はなかったから現地に行ってみて判断するしかないが、それなりに可能性はあると思う。
2つ目の食料に関しては、これは先人の一人が色々とワイルドな生き方をしていたらしく資料が残っていた。道中で内容を思い出しながら確保していこうかと思う。ただ、結構危険なものもあるので初見のものは注意が必要だ。
3つ目の件に関しては、もう運が良ければ程度でしかない。プラちゃんたちみたいに環境が変わっても図太く生きていける種類が手に入ることを祈るしかない。
以上、脳内のタスクに改めて整理して記憶しておく。
『鳥居』を出たところは薄暗く広い空間だった。靴底の反響音から推測すると高さは10メートルくらい、材質は硬質な石材かな?資料の内容の通りに、出た先は洞窟の中みたいだ。奥には出口だろうか、わずかな光が見える。とりあえず、光があるほうへ進もうか。
どうやら道が岩で塞がれており、岩の隙間からわずかに外の光が差し込んでいるようだ。この大きさだとかなりの質量があるから、どかすのがめんどくさそうだ。
「どうすんだ、これ。いきなり行き詰ってんじゃないか」
思わず岩に手をついた瞬間に、ゴゴゴゴとすごい音と振動を伴って、岩が自動ドアのようにひとりでにスライドした。差し込む光が急激に増えたことで、視界が一瞬真っ白になった。
「………oh」
目の前の出来事に驚いて、反応が外国人になってしまった。なんとまぁ、天岩戸のふさぎ岩もびっくりな仕様だった。外に出ると、これまたひとりでに岩の扉が閉じてしまった。動力とスイッチが何かまったくわからない、謎の開閉技術がここにあった。これ、帰りはどうやって開けるんだろうか?と思って岩に手をつくと、またゴゴゴゴっとスライドして扉が開いた。なるほど、大自然系自動ドアですね。便利便利。
そして、洞窟の外の景色を一目見た感想。見渡す限りの荒野。うん、以上、感想終わり。
ほんっとに何もないな。辺り一面、見渡す限りの赤茶色の景色が続いている。後ろを振り返ると、『鳥居』の出口のあった洞窟の岩山みたいなのがぽつんとそこにあるだけ。気を取り直して、えーと、最優先は飲み水の確保か。水のある所に行かないとだが、南は海っぽいから、まずは東のほうにあるオアシスっぽいところへ向かうか。資料通りならだが。
赤茶色の荒野を30分ほど歩いただろうか、それは唐突に現れた。現れたというか、そこにもともと居たというか、風景に擬態していたというか。まぁ、そんな感じだ。
記念すべき、第一村人発見です。
その見た目は、赤茶色をしており、頭部だけが巨大なワニ、身体には鱗のようなものがあり、鱗の隙間からは黄土色の羽毛が生えている、脚だけが筋肉で異常に太いがダックスフントのような短足4足歩行の生物。身体のバランス悪っ。目は2つなのだが、その目も頭に比例してでかい。しかも、こちらをギョロギョロと凝視しているように見える。そして半開きの口にはサメみたいに並んだ鋭利な牙と滴る涎。うん、360度どこから見ても肉食系、友好的な生物じゃないのは一目瞭然だネ。
双方に一瞬の緊張が走り、互いに硬直が解けた、次の瞬間、そいつのニタリと気持ち悪く笑った顔を視界の端にとらえながら、俺はもう全力でスタートダッシュを決めていた。もちろん、真後ろの方向にだがな!フハハハハハ、唖然としているヤツの顔が目に浮かぶようだ。バカめ、俺がお前に襲い掛かるとでも思ったか?ないない、その選択肢はない。こいつは食えない。
先人たちがこいつにつけた名前は『アーススイーパー』、通称『地面の掃除屋』。資料によると、性格は貪欲で雑食。名前の如く、それこそ何でも食う、非常時には共食いもする。脚の筋肉が発達しており、一度捕まるとそう簡単には振りほどけない。しかし、力はかなり強いが外見の通り、脚は鈍足。普段はこちらから近づかない限りは地面に擬態している場所からほとんど動かない。いつもろくでもないモノを食っているため、肉質が悪く、硬い上に激マズらしい。そして、こいつの最も厄介なところはその『繁殖力』。オスもメスもおらず、雌雄一体で、十分な食事をとったときに増えるらしい。どこぞのGの如く、1匹見つけたら近くに30匹はいると思え。
こいつの最も良い対処方法は周りに何もないところに放置すること。放っておけば勝手に共食いして数を減らし、周りに食べるものがなくなれば、そのうち餓死する。例え、倒したとしても、マズくて食えたものじゃないヤツと争うなんて時間と労力の無駄使いだ。それに、ここには獲物の死体を買い取ってくれるなんていう、便利な冒険者ギルドなんてものはないんだからな!
あ、思ったんだけど、この辺が見渡す限り一面の荒野なのは、こいつらが原因じゃね?




