2-12 武神の少女による girl meets boy and fantasy②
時間は流れ、家族全員での昼食が終わり、そろそろ例の家の掃除に向かおうと準備をします。今日は動きやすい恰好がいいですので、薄手のパーカーとワイドパンツとスニーカーで行きましょうか。私、普段家では和装なのですが、そのまま外にでると人目を引くので休みの日は洋服を着ないといけないのがめんどうくさいですね。まぁ、他に準備といっても清掃道具などはすべて現地に置いてありますから、特段持っていくものもありませんので、あとは必需品くらいですが。何か足りないものがあれば、すぐ近くにお店がありますから調達し放題です。そう考えるととても立地はいいところですね。おっと、財布とスマホと家のカギだけは絶対に忘れないようにしないと。これをうっかり忘れると大変なことになりますからね。慣れとは恐ろしいモノです。
準備も終わり、家を出ようと玄関へ向かったところで、ばったりと兄に出会いました。なんでこのタイミングで会うんでしょうか。しかも、なんか遠目には私を待ち構えていたように見えたのですが気のせいでしょうか。まぁ、適当にあしらってさっさと家を出ることにしましょう。そうしましょう。
「舞よ、今日もいい天気だな。どうだ?これから道場で手合わせしないか?」
「宗司兄、私、今日は掃除の日。いまは付き合っている暇はなし。では御免、さらばだ」
「待て待て待て、最近兄にそっけないではないか。私は何か気に障ることでもしたか?家の雰囲気も何かよそよそしいし、父も母も何か隠しているようだし。まぁ、嫌な感じではないからそう問題にすることでもなさそうだが。さらに舞に至ってはここ数日間、私と話そうともしないどころか視線も合わせようとしないではないか。どうかしたのか?」
ちっ、これだから脳筋ゴリラはめんどうくさいんです。しかし、無駄に勘だけは鋭いですね、さすがは野生で生きているイキモノです。今、自分が置かれている現状を家内の雰囲気と人の気配だけで的確に察知してきやがりました。第六感というのはとんでもないですね。しかし、詳細を話して兄を暴走させるわけにはいかないので軽くスルーしましょう。
「宗司兄、私は特に思うことはないです。たまたまです。そう、偶然なのです。今日はお母様から引き継いだお家に掃除があるので本当に時間がないのです。手合わせが必要であれば他の門下にお願いします。あ、もうこんな時間に、ではさらばだ」
私はスマホの時計を確認するフリをして、気持ち急いでいる素振りで玄関を後にします。
「ああ、あの家の掃除の日か、じゃあしょうがないな。また明日にでも手合わせを頼む」
今日の兄は、さっさとこちらから話を切り上げないといつまでたっても捕まっていそうですからね。兄を無視して玄関を出たところでぽつりとなんか変な言葉が聞こえました。
「あ、そうそう、舞、司によろしくな」
こいつ……本当は全部知ってるんじゃないの?こわっ。
私の家から私の足で徒歩15分弱、例のお家に到着しました。玄関で兄に捕まってしまったので、今日は着くのが少し遅くなってしまいましたね。おや、誰もいないはずの家に洗濯物が干してあります。洗濯物を見るとどうやら男物の服とバスタオルがたくさん?のようですね。司さんとやらが来ているのでしょうか?それとも不法滞在者とかでしょうか。空き巣は洗濯物なんて干さないでしょうから、物取りではなさそうですが。まぁ、順当に考えれば司さんとやらでしょうね。しかし、不審者だった場合は即座に制圧できるように油断なく行きましょうか。
「おや、こんにちは、舞ちゃん、今日は掃除の日?えらいねぇ」
「ええ、おばさんもこんにちは。あの、私の眼にはあのお家に洗濯物が干してあるように見えるのですけれど、家に誰がいるか知っていたりますか?」
お隣のおばさんに偶然声をかけられたので、挨拶がてらにさらっと情報収集しましょう。まぁ知らない可能性のほうが高いので何とも言えませんが、知っていたらラッキーくらいの気持ちで。
「そうそう、前にここに住んでいた司ちゃんが少し前に帰ってきたのよ。昔はこんなにちっちゃくて可愛いかったのに今は背も伸びて格好良く成長してたわ。今は別のところに住んでいるみたいだから一時的って言ってたけど。舞ちゃんが毎週お掃除してくれていたからちゃんと生活できているみたい。ありがとうね」
おばさんすごいうれしそう。昔から知ってる近所の子供が無事に戻ってきたことに本当に喜んでるみたいですね。おばさんの様子や喫茶店のマスターの話を聞く限り、司さんとやらは周囲の人から見てかなり好印象な人のようですね。これから会う人なので少し安心しました。
「いえいえ、このお家の掃除は母から依頼されているお仕事ですから。それじゃ、おばさん、私はいつもの掃除があるのでここで失礼します」
「はいはい、お仕事がんばってね。司ちゃんにもよろしくね」
おばさんにそう返事をすると、私は玄関に向かいチャイムを押しました。さて、司さんとやらはどんな人なんでしょうか。少しだけ会うのが楽しみになってきました。




