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7-21 世界を蝕むモノ

 司が大樹の枝から地上を見ると、着地した宗司が走り始める姿が確認できた。

 かなりの高さというか軽く30メートル程、ビルの10階相当の高さから普通に飛び降りた宗司の頭がおかしい。


「宗司さんも大概おかしい身体だよな……」


「まぁ、宗司兄に関しては心配するだけ無駄ですね。昔はとても知的で温和な兄だったんですけど、いつからあんなのになってしまったんでしょうか……」


 舞はそう言うが、彼の行動原理は至ってシンプル。

 今も昔も全く変わらず、自分の家族の安全を第一に考えている。

 今回は砂の下で蠢いている何かが危険なのかどうなのかを自分の目で判断しに行っただけである。


「リリは……しばらく動けそうにないから、時間はあるっちゃあるけどな」


「むしろ喰われてしまったほうが後腐れ無くなって清々しますけどね。それよりもリリの様子のほうが心配です。全然動かないですけど、大丈夫なんでしょうか?」


 宗司に関しては割とツンデレな舞であった。




 その何かは今も尚、砂と地面の境目で土を抉りながら、じりじりと大樹へ向かって進んで来ていた。


 大樹の根元へ降り立った宗司は、砂の下で蠢く何かのうちで最も近いものに狙いを定めて動き出す。己の気配を察知して襲われることを想定して、司たちに言ったようにぐるりと後方へと回り込んで接近を試みる。


「うーむ、近くで見ると、結構でかいな」


 砂の盛り上がりだけでも軽く2メートル程、クーシュの母鳥の背中から見た時はそれほど感じなかったが、実物を目の前にしてみるとかなりの大きさだ。

 この砂の下に、仮に生物が存在するとしたら最低でも10メートルクラスかもしれない。


 さらに、酷い音もする。

 ゴリゴリと、巨大なすり鉢で硬い石を磨り潰しているような気持ち悪い音だ。


「近づいてみたのは良いが、どうやって確認したものか……」


 宗司が考えていると、緩やかな砂の蠢きが止まり、砂の膨らみが平らになっていく。


「ん? どうし……ぬわぁ!!!」


 その異変を見ていた宗司が何かを呟く前に、目の前の砂が爆発的に膨張して弾け、何かが姿を現した。


 砂の下から鎌首を擡げたのは胴回り2メートル程、体長は何メートルあるのかわからない細長い身体。

 どことなく見たことのあるそのボディは肌の色こそ黄土色だが、つるりとした光沢のある独特な見た目をしていた。


 しかし、割とよく見かける姿とは違うのは、その口。

 サメでもここまでないだろうと思わせる乱杭歯がずらりと並び、黄緑色の粘着質な液体でぬらぬらと不気味に光っていた。


「巨大なミミズ……だと!?」


 驚いているのもつかの間、巨大なミミズモドキはその凶悪そうな口を目いっぱい広げて宗司に襲い掛かった。




 今までは聞こえなかった変な音に気付いて、その音源に目を向けた司と舞が見たのは何かに襲われる宗司の姿だった。


 砂の中にいた何かは、逃げる宗司に頭部と思われる部分を愚直に叩きつけているようだった。外したとわかると、即座に反応して宗司を追いかけているところを見ると、何らかの意思を持って襲い掛かっているのは明確だった。


「うへぇ、何だ、あれ……」


「惜しい! そこ! もっと右! ああ、流石は宗司兄、あの身のこなしは脅威ですね。確実に倒すつもりなら逃げ場がないくらいの物量が必要そうですか」


 逃げる宗司の後を追いかけて地面に突っ込むミミズモドキ。

 すると、着弾と同時に凄まじい地響きと音を伴って地面が割れて、大小様々な岩が周囲へと飛び散っていた。

 硬い地面を、まるでウエハースのように齧って破壊していく様子は恐怖だった。


 宗司は大樹からは反対方向へミミズモドキを誘導しながら逃げていたが、司たちの視界からは同じような砂の盛り上がりが所々に見られる。


「あれが砂漠化の原因だとすると、取り除くのは無理そうか。というか、どうやって倒せばいいかわからないし」


「単純に殴ればいいんじゃないです? あ、宗司兄が1匹倒したようですよ。あれだけ簡単に倒せるなら割と柔らかいんじゃないですかね?」


 どうやら物理攻撃は効くようだ。

 しかし、まだ生態も詳しくわからず、常時砂の下にいるのだから1匹1匹を個別におびき出して倒していたら途方もない時間がかかる気がする。


「とりあえずはリリが落ち着くまで宗司さんに近いのからやってもらおうか」


「そうですね、それが良いと思います」


 刻一刻と砂漠化が進行していく中、具体的な解決策が見いだせずに悩む一行だった。

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