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7-16 激変する世界

 朱い鳥居を抜けると、肌に伝わる空気の質感が変わったのがわかる。

 そして、薄暗い洞窟の先には岩壁の隙間から僅かに光が見える。


「こっちに来るのも久しぶりだな」


「司さんはまだ病み上がりなんですから、気を付けてくださいね?」


 司たちが岩壁に触れると、スライドする謎扉。


「任せてください! 司さんが疲れたら、私が運びますから大丈夫です!」


「ははは! リリちゃんは相変わらず元気だな!」


 そこには、1年前と変わらない景色が広がって……


「「「「えっ!?」」」」


 いなかった。




 司たちが『彼の世界』と呼んでいた世界は、少し見ない間に様変わりしていた。


「何で砂漠? でも、太陽の位置は……変わってないよな? どうなってるんだ?」


 始まりの祠と呼んでいた岩山の先はアーススイーパーたちが蔓延る赤茶けた荒野が広がっているはずなのに、司たちの目の前には果てしない砂の海があった。


「司よ、ここは確かにあの場所に間違いないぞ。若干、前と座標が変わっている気がするが、地球と同じで地軸が少しずれただけだろう。よくあることだ」


 どこから突っ込めばいいかわからない……なぜ、宗司にそんなことがわかるのか。


「百歩譲って宗司兄の言う通りだとしたら、僅か1年ほどで砂漠化したということですか? まさか、そんなことがあるわけが……」


 しかし、どんなに否定しても目の前の現実は変わらない。


「ふんふん。あっちのほうに、いつもの石のお家の匂いがします」


 リリが指し示したのは東。


「ここで考えていても埒が明かないか……よし、まずは周辺調査から地道に行こう」


 見た目はかなり変わってしまったが同じ世界だと仮定して、司たちは記憶を辿りながら移動を始めた。


 祠を起点として東へ向かえば、しばらくして来れば見えてくるのは河。

 リリが言っていたのは、そこで自生している水上樹に囲まれた石材の家だろう。


「河が枯れてる……」


 以前は多くの水量を讃えていた河も、今は土色の窪みが存在するだけだった。

 石の家の近くに自生していた水上樹も枯れ果てて、家自体も地面に落ちて所々が砕けていた。もはや朽ちた遺跡のようで見るも無残な体裁だ。


「それにしても暑い……日光を遮るものがないからだけど。外よりはマシだから、ここで少し休んで行こうか。予想以上に体力を使ってる」


「そうですね。それに水が手に入れれないのが辛いです。みんなの手持ちだけだと数日持つかくらいですから。場合によっては一旦戻ることも検討しないと」


 司たちは崩れた石の家を日除けにして日陰に滑り込む。


「リリも水飲んでおいて。この日差しだと俺たちよりもリリの体調が心配だ」


「それならこっちをどうぞ。水分補給もできる栄養ゼリーです」


「舞さん、ありがとうございます。あむあむ」


 舞がウイダーなゼリーを口に含ませると、リリは美味しそうに目を細める。


「少し先を見てきたが、やはりダメだな。ところどころに枯草が生えているだけの荒野になっていた。豊かな草原だったところが今は見る影もないな。砂漠になっていないだけマシだが……どうする? 司」


「以前と環境が違いすぎますね……今日と明日の2日間だけ周辺の調査をしましょう。明後日には地球へ帰還で。対策してから出直しになります。これはヴォルフたちやフェルスに移動を頼まないと、とても生きていける環境じゃありません」


「そうですね……物資の補給が見込めない状況で、砂漠や荒野を延々と進むのは自殺行為ですね。私たちが移動できる速度はたかが知れてますから」


 その後、司たちは2日で周囲の調査をしたが結果は変わらなかった。

 植物群はほとんど枯死しており、それを食用としていた草食動物も周囲には見当たらない。死骸もないことから食べる物を求めて移動したか、それとも遠方で死滅してしまったか。

 それよりもあれほど悪食でたくさん生息していたアーススイーパーが1匹も見当たらないのが異常事態だった。


「気温の上昇、水源の消失、植物群の枯死、生物不在か……まるで死の世界だよ」


 どうしてこうなったのか、まるで理由はわからない。

 しかし、少なくとも祠の周囲の環境が、おおよそ生物の住める環境でなくなってしまったことだけがわかった。


「トカゲさんたちの気配が全くないです。それに森の匂いも周りにありません。どうなっちゃったんでしょう……ウルの森は大丈夫でしょうか?」


 リリの嗅覚でも同じ結果が齎されたことで、今回の調査は終了。

 すぐに地球へ戻ることにしたのだが、見渡す限りの砂地に、ぽつんと佇む祠の岩山が異様だった。

 何れ、この岩山も無くなってしまうのではないか、そんな不安さえも感じさせる。


「次来るときは、ウルの森に行ってみような」


 心配そうなリリの頭を撫でながら、なぜか司の頭には別のイメージが浮かんでいた。

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