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6-28 さぁ、討伐の旅に出発だ!

 今回のメンバーが地下の門の前に集合していた。


「えええええ、司だけズルい! 私はダメなの!?」


「ダメに決まってます。何を勘違いしてるかわかりませんが、あなたは捕虜ですよ」


「一人前にもなってないメイドの分際で、あなたにそんな暇はありません。それ以上騒ぐなら仕留めますよ?」


 外野がややうるさいが、行くのは司、舞、リリ、ヴォルフ、ルーヴである。


「それでは司様、お気をつけて。お館様によろしくお伝えください。こちらはいつも通りですので、いつお戻りになっても構いませんと。舞様たちもお気をつけて」


「わかった。ちゃんと会えたら伝えておく。いい歳なんだから、家出とかアホなことするなって言っておくよ」


「兎神さん、橙花さん、蒼花さん、行ってきまーす! あ、カノコさんも」


「家からの用事には対応よろしくお願いします。宗司兄が迷惑おかけするかもですが」


「留守の間、ウルの一族をよろしく頼む」



 門を潜れば、たった一歩で世界は変わる。

 そして、世界に溢れる魔素を取り込んで、即座に本来の姿を取り戻す。


「こっちにくるのは久しぶりです!」


「リリは前回振りか? 私たちは狩りで定期的に訪れていたからな」


「それでも、最近は農業のほうに夢中で全然でしたけどね、ふふふ」


 体長5メートルの深緑の古狼が2人、3メートルの薄紫の子狼のリリ。

 地球では抑えられてた力が解放されたウルの民は、圧倒的な存在感を放つ。


「久しぶりに見ると、凄まじい覇気ですね。野生の環境で、このレベルの生物に遭遇したら生きて帰れるか……」


「まぁ、見た目は兎も角として、中身はいつものリリたちなんだけどな」


 舞の感想は正しい。


 のほほんとしている司だが、最初にヴォルフに遭遇した時は手も足も出ず、さらに逃げることもままならなかった。手加減されていたにも関わらずだ。

 リリが持たせてくれたお守りが無かったら、ヘタをすればヴォルフの食料になっていた可能性すらあった。


 強靭な筋力と持久力を併せ持つ彼らの身体能力は、地球の陸上生物を遥かに凌ぐ。

 リリでさえ電車と同じくらいの速度で、何時間も走り続けることができるくらいなのだ。

 本気で駆けたヴォルフは目視すらできず、片脚の力で司を吹き飛ばした。


 穏やかな性格の彼らだが、人間から見れば驚異的な生物であることに間違いない。


「では、行こうか。舞はルーヴが運ぶ。司は私が……ではなく娘に任せよう。私は先行して周囲を警戒する」


「司さん! ついに私がお役に立てる時が来ました! さぁ、早く乗ってください!」


「ルーヴさん、よろしくお願いしますね」


 目をキラキラ光らせて期待しているリリを前にして、自分が運ぶとは言えなかったヴォルフ。しょうがないので、警戒役を買って出たようだ。


 司は苦笑するが、リリの視線には耐えられずに促されるまま乗り込む。

 リリも司を乗せるのは初めてなので、とても気合が入っていた。主に尻尾に。

 あっさりと成人男性プラス荷物を背負う。80キロ以上はある重量をものともしない。


「いつもは私が抱っこされてますけど、今日は逆ですね! さぁ、行きますよ!」


「待ちなさい、リリ。慌てすぎです。舞さんを置いて行く気ですか?」


 意気揚々と飛び出そうとしたリリは、あちゃーという顔をして振り返る。

 いつもしっかりもののリリにしては珍しいポカである。


「ふふふ、嬉しそうですね」


 舞がルーヴに乗り込んで準備している間も、早く走り出したくてソワソワ。余程、司を乗せたのが嬉しいらしい。


「よし、では行こう。私が先行するから皆はついてくるように。司、まずは海とやらへ向かえばいいのだな?」


「ああ、手記によれば南、あっちのほうだな。行けば海があるらしい。頼む」


「わかった。道中のトカゲ共は邪魔そうなものだけ私が退かそう。では、出発だ」


 ヴォルフ、リリに乗った司、ルーヴに乗った舞の順番で隊列を組んで進む一行。

 食えないトカゲことアーススイーパーは基本無視し、邪魔なものはヴォルフが先行して退かす。文字通り、力技で。


 ついついテンションが上がって前に出そうになるリリを宥めながら、荒れた荒野をバイクも真っ青な移動速度で駆け抜けていくと、あっという間に環境が変化する。


「司さーん! 海の匂いがしてきましたー!」


「リリ、ありがと。ヴォルフたちがいると早いなぁ、ご先祖様の記録だと、人間の足で数日はかかるはずなんだが……」


「えっへんです!」


 リリは知っているが、そろそろ地面が砂地に変化するので、足元に注意するようにヴォルフたちに伝える。

 ヴォルフたちならどうにでもなりそうだが、万が一に足を取られて転倒すると上に乗っている司たちが面白いことになってしまう。


「ほほう、これが砂か。初めての感触だが、問題はない」


 砂地に足を取られるので速度は落ちたが、あっという間に適応するヴォルフたち。

 出発から僅か1時間ちょっとで海までたどり着いた。


「水が……本当に塩味なのだな」


「ええ、それに何ででしょう? 水が来たり帰ったりしてますね。不思議です」


 司はヴォルフとルーヴに海を教えるために休憩を兼ねて説明会を行った。

 とは言っても、月の引力で満ち欠けして云々などの具体的な原理は端折ってだ。

 ヴォルフたちに必要なのは、魚がたくさん生息している大きな塩の水たまりくらいの知識でいいのだ。


 その後は、司のご先祖様の手記通の情報通り、砂浜には大きな貝がいたので数個を確保して、焼いて食べてみるのだった。


 文字通りの浜焼きである。

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