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2-2 武神の少女は考える

 このしかめっ面、もといお父様は今何とほざきやがりましたか。私の許嫁を決めた?いえ、舞、早とちりはいけません。私の聞き違いかもしれませんよ。私は思い込みが激しいのが玉に瑕なのです。きっと聞き違いに決まっています。ふううううう。深呼吸をして心頭滅却。


「あの、お父様、ごめんなさい、先ほどの話を聞き逃したようです。もう一度お願いできますか?私に、何を、ですか?」


 一瞬でクールダウンした私は一縷の望みをかけて、もう一度お父様に問いかけた。


「ん?そうか、ではもう一度言う。実はだな、舞に、許嫁を、決めておいたぞ。私たちの知り合いの人の孫で、年は18になったばかりらしい。舞も、先日16になったばかりだし、丁度よいと思ってな。ふはははは」


 はい、聞き違いじゃなかったあああああああああ。


 しかも、今度は律儀に、単語を区切って、強調しながらいいやがりました。この脳筋タヌキ親父め。くっ、普段から私とろくにコミュニケーションもとらないくせに、今ここぞとばかりに全くと言ってうれしくもないベクトルで余計なお世話をしてきやがりました。なんとかして断る流れを作らないと。このままでは、話の通じないこの脳筋タヌキ親父に押し切られてしまいます。


「あの、今のご時世で、許嫁は、あまりにも時代錯誤ではありませんか?できればお断りをしたいと思う次第ですが?なにせ、私まだ16ですし。これから彼氏の一人や二人どうとでもなると思うのですよ。ええ、きっとこれから素敵な出会いがあり、素敵な恋愛ができると思うのです。その時に、名ばかりで、お会いしたこともない、許嫁の方には、大変、失礼にあたると、思うのですよね」


 私は震える身体を必死に抑え込みながら、お父様にそう告げました。とくに、最後の一文を力強く、特に文節を強調して。とりあえず、まずはジャブを繰り出して様子を見ましょう。いきなり全否定で拒否から始めるとこの脳筋タヌキ親父は逆切れしますからね。


「お前、さっき今は稽古が楽しいから彼氏なんていらないって言ってたじゃないか。しかも、お前の性格は親の私たちはよくわかっている。舞がそんなことを口に出して言うときは、そのことに対して全く興味がない時だな。お前、今そんなことサラサラも思ってないだろう?」


 くっ、普段は頭の中まで筋肉ゴリラのくせに、こんな時だけなんて鋭い。いつの間に余計な知恵をつけやがりましたか。


「まぁまぁ、舞、お会いして考えればいいじゃないですか?まだ、お相手の何も知らない状況でお断りをするなんて、それこそ失礼です。一度お会いして、舞がどうしても合わないとおっしゃるのでしたら、私たちも考えましょう。もしかしたら、あなたの未来の旦那様になる方かもしれませんから、自分の眼で見て判断なさいな。もちろん、先方の方にも選ぶ権利はありますから、相手方がこんな娘はノーサンキューとおっしゃる場合もあります。私としては、正直こんな性格の娘で相手方に申し訳ない気持ちでいっぱいなのです。でも、私たちにあなた以外の娘はいませんし、お父様も泣く泣くご許可頂いたのです」


 最後にさらっと毒を吐いてきましたね…割と私の胸にグサッと突き刺さるような言葉です。


 まぁ、私自身がこんな性格なのは百も承知していますので、その点には何も言い返せないのがくやしいです。今度、何か対抗策を考えておきましょう。しかし、さすがはお母様、話がわかるひとです。どこかの頭の中まで筋肉ゴリラとはわけが違います。でも、これで言質を取りましたよ。要は相手と会って、相手側にあーこれはないわ、と思わせるような対応をし、さらに相手側からこの話を断られるような環境を意図的に設定できればベストということですね。ふふふ、希望が見えてきましたよ。



「あ、そうそう、言い忘れましたが、あなたから意図的にご破算にするように画策するのはおやめなさいな。無駄に悪知恵の回るあなたのことですから、きっと今頃はそんな算段をしているころでしょう。一応、念のために忠告しておきます。ちなみに先方のお孫さんには『影』の方がついていらっしゃるようですので、あなたがオイタした場合は、私たちにも内容が伝わるようになっていますからね。武神家の者として、くれぐれも、相手側に、失礼のないように。良いですね?」



 ちっ。流石はお母様、鋭いです。

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