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6-22 ドッキリ大成功! で、済むわけがない

 司は無理やり予定を調整して、遠征の準備を進めていた。


『兎神、1週間後から少し出かける。予定を調整してくれ。緊急の案件は前倒しで頼む』


『わかりました。念のため、お聞きしますが……どこへ行かれるのですか?』


『無論、くそじじいの討伐だ』


 聞かなくてもわかりきっていたが、何とも解り易い答えだった。



『兎神、司のことだから直に気づくじゃろ。その時、わしに会いたいと言ったら止めなくてよい。自分が撒いた種なんじゃから、わしが引き受けよう』


『本当に良いのですか? 恐らく、怒り心頭で殴り込みに行きそうなのですが……』


『ハハハ! 直接乗り込んできて殴られるくらい本望じゃ。土下座して詫びろと言われれば、喜んでしてやるわい! 今からその時が楽しみじゃ!』


 あの時の源の笑顔を兎神は今でも忘れない。渾身の悪戯をしかけるような無邪気な笑み。いつか気づいてほしい、そんな思いもあったのかもしれない。



 静かな怒りをバネに、怒涛の勢いで仕事を処理していく司の元へ、


「司さーん! 舞さんがお見舞いに来てくれましたよー!」


 リリが来客を告げにきた。しかし、リリがそれを言うのは何か変な気がする。きっとリリはお見舞いされる側である。


「んん? 舞がお見舞い? あ!?」


 司は何かを思い出した。そして、猛烈な勢いで汗をかき始めた。一瞬の思考停止を経て、慌てて舞の待つ応接室へ走る。


「司さん? リリのお見舞いに来たのですけど、もう元気になっているようなんですが?」


 応接室に入った途端、舞から開口一番にそう言われる司。


「ご、ごめん。連絡するのを忘れてました……」


 リリが昏睡していた期間、司はあらゆる予定をキャンセルしていた。当然、舞との約束も全てである。


「はぁ、そんなことだろうと思ってました。連絡、もらいましたよ? 兎神さんから」


 舞は兎神からリリの体調不良の連絡を受けていた。

 そして、司が心理的にパニック状態になっているだろうことも予想していた。

 だから、司の心にある程度の余裕ができるまでは、敢えて連絡しなかったのである。


「まさか治ったという連絡まで、兎神さんからもらうとは思いませんでしたけど」


 舞が不満なのは、これなのである。


 リリがピンチの時、司がいっぱいいっぱいになるのは良しとしよう。会えなくなるのも、電話できなくても良しとしよう。


「司さんにとっては、私はその程度の存在なんでしょうね……」


 病気のリリより、自分の予定を優先しろとは言わない。でも、リリが治ったのなら、司から連絡が欲しかった。

 舞だってリリの事を心配して、待っていたのだから。

 なのに、治った連絡をくれたのは兎神だった。忘れてた司に代わって。

 だから、司に文句の一つも言いたくなってしまうのだ。


「本当にごめん……舞の事は大切だよ。今回はちょっと突然の事だったから」


「その割には、今の今まで忘れてましたけどね」


 ぐさっとくる一言である。

 舞は意外と根に持つタイプなので、扱いを間違えるとリカバリーが大変なのだ。


「舞さん、舞さん、そのくらいで許してあげてください。司さんは悪くありません。急に体調を崩した私が悪いんですから」


 あまりにあんまりな状況になってきたので、見かねたリリが司に助け舟を出す。


「ふふふ、今回はこれくらいで許してあげますよ。可愛いリリを悪者にするわけにはいきませんから。ですが、もう忘れちゃダメですからね?」


「すまん」


 司にとっては、ほっと胸を撫でおろす瞬間である。

 リリが介入してきたことで、悪ノリしていた舞も自分を戒める。正直、ちょっとやりすぎた感があったのだ。


 それにしても、随分と司の扱いが慣れてきた舞である。所詮、男は女の掌の上でコロコロされてしまう運命なのか。


「リリが元気になってよかったです。原因は何だったんでしょうかね。ああ、そう言えば、この1週間でトレーニングを始めましたよ」


「トレーニング? 何のだ?」


「ほら、あの3人のです。約1名はサボりがちですが」


「あ、アレって冗談じゃなかったんだ。じゃ、宗司さんが見てるのか?」


 司が外部との連絡を絶っていた間にどういうやり取りがあったのかわからないが、澪たち3人が地獄の特訓を始めたようだ。


「宗司兄が、それは楽しそうに『観て』ますよ。最初が肝心、ですからね」


「最初って、全身筋肉痛で動けなくなるやつだろ? 一般人が大丈夫なのか?」


「何を言いますか、私が耐えれてるんですから大丈夫に決まってます。慣れですよ、慣れ」


「あ、そう……」


 舞は幼い頃から慣れているから何も思わないようだが、一般人からすれば宗司の特訓は相当きつい。


 それは司が根を上げそうになるくらいに。司だって全身筋肉痛になった後、2日はベッドから全く動けないのだから。


「これは、一回見に行っておかないとダメそうだな……取り返しがつかなくなる前に」


「? どこか行くんですか?」


 正直な話、この系統において宗司と舞の感性は当てにならない。

 宗司は筋肉の為ならどこへでも行く人だし、舞も武神流脳のせいでとても好戦的。

 2人とも特訓という言葉が大好きな生き物なのだ。ある意味でドМである。


 問題が解決して早々に発生した新たな問題に頭を悩ませる司だった。

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