6-19 双子の成長
いつもお読み頂きありがとうございます(*´ω`*)
回想編? は今回で終わりで、次話から本編へ戻ります。
目が見えるようになった。少しだけど、自分で歩けるようになった。
初めて見えたのは、私を助けてくれた人。その人は、白いお髭のおじいちゃんだった。
私を抱き上げてくれて、撫でてくれるけど、たまにお髭が当たってチクチクする。
宗司さんみたいに逞しい身体をしていて、森に行ってお肉を取り、海に行ってお魚を取り、ご飯を作ってくれる優しい人。
お家は、海に面した崖の上にあった。周りを見回すけど、ぽつんと1つだけしかない。1人で住んでて寂しくないのかな? 今は、私と2人だけど。
おじいちゃんの朝は早い。
日が昇る前に起きて、寝たふりをしている私の頭を優しく撫でてくれる。司さんよりも大きな手で、ちょっとごつごつしてる。
それが終わると、静かにお家を出て、1時間くらい帰ってこない。
最初はご飯のために狩りに行っているのかと思ったけど、それは違ったみたい。
お家の先、崖の端にある場所で、屈んだまま動かなくなる。毎日だ。
あそこで、何をしているんだろう?
しばらくずっと、その状態が続くんだけど、日が昇るくらいになると起き上がって、お家に戻ってくるみたい。
その時の、歩いて帰ってくるおじいちゃんの顔が悲しそうで、私もちょっと悲しくなる。
聞きたい気持ちはあったけど、触れちゃいけないような雰囲気で、理由は聞けなかった。
日課が終われば、ご飯の時間。
おじいちゃんはお肉が好き。私もお肉が大好き。
でも、たまにはお魚も食べたくなって。そういう時は、両方食べちゃう。食べ過ぎ? 違うよ? 私は育ち盛りだから必要なの。
ご飯はお肉、お肉、お魚、お肉たまに草。
橙花さんみたいに立派なお料理じゃないけれど、おじいちゃんが食べやすいように小さく切ってくれている。優しい。でも、たまに出てくる草は嫌い、苦いから。
おじいちゃんは私がたくさん食べるのを、いつもニコニコと嬉しそうに見てる。
いつも同時に食べ始めるけど、まだうまく噛めなくて、私のほうが食べるのが遅いから。
前はおじいちゃんが齧って細かくしてくれてたけど、私の歯が少し生えてからは自分で食べられるようになった。
お水はちょっと大変だった。
海のお水は塩辛い。司さんも飲んじゃいけないって言っていた。
ウルの森に居た時は、川のお水や湧水の場所を覚えていて、いつもそこへ行っていた。
お家には木の樽があって、お水はそれにはいっているんだけど、だいたい2日くらいで無くなっちゃう。
でも、私がお水を飲みたくて困っていると、おじいちゃんはどこからかお水を持ってきてくれる。おいしい。
お家の近くには川はないのに、どこから?
聞いたら、ちょっと離れたところに洞窟があって、湧水があるみたい。運んできてくれてたんだ。おじいちゃん、いつもありがとう。
おじいちゃんの生活は面白い。
晴れは食べ物を取りに行く日。
森へ行ってお肉を、海に行ってお魚を、実の生る木を見つけて果物を、草原へ行って食べられる野草を見つけてくる。
草は苦いから、美味しいお野菜は育てないのかな?
曇りは身の回りのものを作る日。
おじいちゃんのお家には物がない。ベッドも、机も、椅子もない。
寝るときは囲炉裏を囲んで毛皮に包まって寝る。私は一緒に寝れて嬉しいけど。
だから、籠も桶もおじいちゃんの手作りだ。何でも作れて、とっても器用。
雨が降ったら洗濯の日。
おじいちゃんは服を脱いで、空いてる桶を持って外へ出る。私もすぐに後を追う。
お家の屋根から落ちてくる水を1か所に集めて、それで身体を洗っているみたい。それが終われば、服も洗う。私も一緒に、水をかけてもらってごしごししてもらう。
洗って冷えた身体は、囲炉裏の火の側で温める。
おじいちゃん、寒みーって震えてるけど、私はこの時間が一番好きかも。
2人で火を見ながら、ゆっくりと時間が流れてる。この時間が。
そんなこんなで何年も経って、私も大きく成長した。
「お前って、ただの狼じゃなかったんじゃなぁ。こんなに大きくなるとは……」
どれくらいって? おじいちゃんを背中に乗せて走れちゃうくらい。
1人でご飯もとれるようになって、これからおじいちゃんの役に立つぞ~って思っていた矢先に、別れの時は訪れた。
「わしは、しばらく家を留守にする。いつ戻れるかはわからんし、もしかしたら戻れないかもしれない。お前も立派になったから自由にするがいい」
どうして? おじいちゃんどこにいくの? 私はついていけないの?
ダメだった。私の行けない場所だって。
だけど、おじいちゃんは戻るかもって言ってた。じゃぁ、私はこの場所を守ってる。いつか、おじいちゃんが帰ってくる日まで。
1人は寂しいけど、おじいちゃんのお家を守ってる。
だから、なるべく早く帰ってきてね。おじいちゃん。
それから、どれだけの時間が過ぎただろう。
ずっとお家を守っているけど、1人で待つのも飽きちゃったよ、おじいちゃん。
でも、この日はいつもと違った。
懐かしい匂いがして、すぐに気づいた。おじいちゃんが帰ってきたんだ。
家を出ると、おじいちゃんは笑顔で私を迎えてくれた。
あの声で、大好きなあの姿のままで。




