表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

212/278

6-9 凛のお小言

 舞は正座していた。


 何故ならば、命令をされたからである。誰に? 舞に命令ができる人物は数えるほどしかない。場所は武神家の道場で、目の前には父親の巌と母親の凛が対面で同じように座っている。時間は20時頃なので、道場には3人以外は誰もいない。


 お察し。つまりは、そう言う事である。


「舞ちゃん、今日のアレはどういうことですか? 私たちが決めたとは言え、あなたは司君の許嫁でしょう? なのに、何ですか、あの体たらくは。やる気があるんですか?」


「まぁまぁ、そこまで言わんでも……舞だって頑張っているんだぞ? わしは、舞が司君を家に連れてきて、一緒に食事ができることすら奇跡だと思うくらいだ。あの舞が、家に彼氏を連れてきてるんだぞ? 彼氏だぞ? 信じられるか?」


「甘い、だだ甘です。そんなことで司君を、あんなに条件の良い男の人を手に入れられると思っていますか? お顔も身体つきも問題無し、お家は資産家、大切にされているリリちゃんを見ていれば、性格は文句のつけようがありません」


「実際に司君に会ってみた感想も良好です。礼儀はしっかりしているし、人当たりも良い、舞ちゃんのことも憎からず想ってくれているのがわかります。今時、あれほど完璧な物件は早々お目にかかるほうが難しいのです」


 2人から散々な言われ方をされているが、凛が怒っているのは舞の行動に不満があったからのようだ。巌のほうは娘の成長を目の当たりにして感動しているようだが。


「それなのに、なぜ、あなたは何事もなかったかのように、司君を帰しているんですか? 普通、ここは何だかんだ言って泊まらせて、既成事実を作る絶好のチャンスだったじゃありませんか!」


 ブフォ! いきなり何を。


「お母様? 私、まだ16なんですけど……いくらなんでもそれはどうかと思いますよ? 第一、司さんに迫ったりしたら逆にドン引きされる」


「あなたこそ、何を言ってますか。日本では女性は16歳から結婚できます。つまりは同意の上であればオッケーだということです。そう言う事は雰囲気です。雰囲気さえあれば問題ないのです。後は野となれ山となれです。男とは、本能とはそういう生き物です」


「いかんぞ! いかんいかんいかんいかん! 舞は、まだそんな破廉恥なことをするような年でh……ぐはっ!」


「巌さんは少し黙っていてくれますか? おほん、私とて、その辺の有象無象とくっ付けと言っているわけではありません。あなたは大切な娘なのですから。そこまでのことを許可しているのは、相手が司君だからこそです」


 超肉食系発言の凛と、娘ダイスキーで奥手な巌の闘いは、禁じ手である影打ちで巌の1Rノックアウト。しかし、やや奥手、今まで恋愛経験ゼロで過ごしてきた舞にとってみたら難易度の高い話。尤も、司にも同じことが言えるので、何らかのきっかけが必要なことは間違いないだろう。


「私としても色々と試してはいるところですが、司さんの反応がいまいちなんですよね。まぁ、身近にリリちゃんとクー……けふんけふん、がいるので、それをほったらかして私と、というのは考えにくいのもありますが」


 そうなのである。これが一番、頭が痛い問題で、司の側には常にリリかクーシュがいる。司の性格上、2匹の面倒を優先して見てしまうのはどうしようもない。彼女たちにとって司は父親のようなもの、一緒にいることは極当たり前なのだ。


 そして、実際に司自身も父親のような気分になっているのだから、ここに無理やり割って入るのは相当なパワーを必要とする。よくペットを飼うと婚期が遅れる、という迷言を聞くが、強ち間違ってもいないのかもしれない。


「確かに、その一因は認めましょう。しかし、それをいつまでも良しとすることはできませんよ。いつどこで、横からしゃしゃり出てきた泥棒猫に掻っ攫われるか、見ていてとても不安になります」


「あー、それは私も少し思う事ですが、司さんはその手の女が嫌いなので大丈夫なんじゃないですかね? 今日の感じでは、私はそこそこ大切にされているようでしたし?」


「そう言う自惚れが一番ダメです。女は慎みが大切だとか、待っていたら、そのうち男性から告白しに来るでしょ、というのはもう終わったのです。これからは欲しいものは欲しいと自己主張して、己で勝ち取る強かな女が生き残る時代です。手始めに、今度、澪ちゃんが何かイベントをするそうですね? それをきっかけにして司君との仲を進展させましょう」


「……何で、それをお母様が知っているのかは凄く謎ですけど、まぁ、ありますね。先日、私も聞いたばかりなので内容も何も知りませんけど」


 舞も知らなかった事実を凛が知っていることに、何とも言えない戦慄を覚える。


「では、それに向けて家族会議です。巌さんもいつまでもいじけてないで」


「しくしくしく……」


 武神家の女たちは兵揃い、着々と外堀を埋めにかかってきている。


 頑張れ司、負けるな司。ここで男をビシッと見せないと、今後の評価に多大な影響を残してしまうぞ。日本の男の未来は、君の双肩にかかっている!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング  ← 1日1回ぽちっと応援下さると嬉しいです(*´ω`*)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ