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5-59 成長期に突入したリリ①

 司と舞がプラントエリアで見学を行っている頃、地上の干支神家ではリリとクーシュが試作フードの試食会を堪能していた。橙花が何種類も用意したものから、1つ1つ食べた感想を述べている。種類が多いので1つ当たりの量は5グラムほど。色とりどりの5ミリ角くらいの固形物だ。所謂、カリカリフードと呼ばれるものである。


「それでは、次はこれを。No.3ですね」


「もぐもぐ……これも美味しいです! 2番目に食べたものよりもあっさりしているかも? 司さんに食べさせてもらったササミに似ている味でしょうか? サクサクしているので、いくらでも食べられそうですね」


「ぴっぴー!」


 橙花はリリの感想を1つ1つメモしていく。クーシュはどれを食べても美味しそうなニュアンスなのでハッキリ言ってこういう作業には向かないかもしれない。第一、もし感想を言うにしてもリリを介さなければ伝えられないので、この場に必要なのかどうかも謎である。


 ちなみにナンバリングには法則があり、肉の種類が牛、豚、鳥、魚、鹿の順番で配合されている。基本的に無添加素材中心で他にも色々混ざってはいるが、今回のメイン配合はたんぱく質と炭水化物。


 司に拾われたの頃のリリはやせ細っており、十分に栄養が取れているとは言い難い状態だった。野生で生きていたのだからしょうがない事ではある。故に、まずは標準体重に戻すことと消化を助けるためにサツマイモなどの芋類の配合が多めであった。しかし、これからは筋肉などを作るための配合を重視するのである。


 尤も、カリカリフードの他に追加で茹でたササミやサラダ、リンゴを毎日のように食べていたので食事バランスとしては最高の状態に近かった。さらに運動量も半端なく、毎日の散歩、冒険という名の自主的な運動、ヴォルフたちとの狩りの訓練などを日課にしているし、司たちと彼の世界に行くときは凄まじい速度で何時間も走り続けている。よく食べ、よく寝て、よく動くことで筋力がメキメキと付き、身体が成長期に突入しているのである。


「では、次はこれを……」



 順番にいくつもの試食を終え、リリからの評価を聞き終わった橙花。内容と評価を勘案して、これからの方向性を決定するのだが、


「リリ様は全体的に鳥肉がお好きのようです。次点としては鹿ですかね」


 どうやらかなり趣向に偏りがあり、脂質よりもしっかりとした肉質を好むようだ。しかし、栄養価的に悪い方向性ではないので問題はないだろう。


「ササミ? は、司さんに初めて頂いたお肉なので、大好きです! お腹が減って、動けなくなった私のために、貴重なお肉を分けて頂いた感謝は一生忘れません!」


「さすがは司様です」


 リリの発言を聞いた橙花が満足そうに頷く。


 別に将来のことを考えて司は鶏肉を食べさせたわけではない。リリを保護した当時、冷蔵庫にたまたまササミがあったから、リリに与えただけである。一般的な知識で、子犬に脂身は少ないほうがいいだろうとは思ってはいたので、選択的には鶏胸肉かササミくらいしか近所のスーパーには売っていなかった。


 しかし、リリにとっては、お腹が減って減って、完全に飢えていた状態で与えられた初めてのご馳走であった。更には地球産の旨みの凝縮した鶏肉である。それを食べた時の衝撃は計り知れない。リンゴだけは別格だが。


「これで全部の試食が終わりました。ありがとうございます。味覚の傾向から、リリ様には鶏肉ベースで配合したものが良さそうですね。これだけでは脂質が不足しやすくなるので、次に評価の良かった鹿ベースのものも2割ほど混ぜるように致しましょう」


「ごちそうさまでした!」


「ぴぴ?」


 今回の評価でリリの味覚傾向が判明したのは実施した価値があるだろう。クーシュはまだ食べたりなさそうだが、君の場合はただ食べているだけなので追加はありません。もう終わり? おかわりは? という顔をしても出てこないので諦めるように。


「主食用と比較して、オヤツ用の評価は芳しくありませんでしたね。やはりリンゴ等の果実類はそのままお出しするのが良さそうです」


 間食用にサツマイモとジャガイモをベースとして、リンゴやバナナなどの果実を混ぜたものを作ってみたがリリの反応はイマイチだった。やはり、そのもののほうがリリの琴線に触れるようだ。


「美味しくないわけではありませんけど、リンゴはあのシャクシャクとした食感がお気に入りなのです! それにたくさんの味が混ざっていて、何を食べているのかがわからないのが残念かもです?」


「わかりました。それについては次回以降の課題ですね。保存という1点については、フードのほうが優れているので、いつかはリリ様が満足される品を作りたいものです」


 食感が似ても似つかないのと、水分を除いて圧縮している分、糖度は高いが味が呆けてしまうのが問題のようだ。人間と味覚の構造が違うのだから、この辺は要調整となる。


「リリ~、そろそろ試食は終わったか? こっちは舞の案内が終わったぞ~」


「司さん! こちらも終わりました!」


「わっ、ととと」


 試食が終わって、水をペロペロと飲んでいたリリだが、食堂に司たちがやってくるのを見つけると即座に飛びつく。不意打ちでもきっちりとキャッチできるのは、普段からの賜物である。

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