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5-58 異世界ハチミツのために

予約が1日ずれてた(;´∀`)申し訳ないです。

5章58話公開しました。

 司が舞を案内していると、珍しく蒼花がプラントエリアにやってきた。ここは橙花の管轄エリアなので蒼花が単独で作業しているのは稀な事なのである。


「舞様、こんにちは。地下のご案内中ですか?」


「こんにちは。ええ、余りにも非現実的すぎて混乱している最中ですけど」


「蒼花はどうしたんだ? 珍しいな。荷物なら俺が運ぼうか?」


 見れば、木箱のような物を2つ抱えて運んでいる。特に重そうには見えないのだが、中身は何なのか。


「いえ、ほとんど重量がありませんので大丈夫です。例の件で、今は橙花の手が離せないので、私が代わりに運んでいるだけですよ」


「今はリリたちと試食中か、確かに手が離せないだろうな」


「それの中身は何なのですか?」


「中身はミツバチですよ。これは巣箱なんです」


 ミツバチと聞いて司はピーンと来たようだが、舞はクエスチョンマークが浮かんでいた。


「舞様もご覧になられたかと思いますが、現在プラントエリアでは目覚ましい変化を遂げております。このミツバチたちは左奥一帯の成木たちと、これから育つであろう右奥の木々たちのために必要になるのです。その試験体第一号ですね」


 蒼花のそれを聞いても舞の顔には疑問が浮かんでいた。今時、専門職でもない限りは、これが普通の反応なのでしょうがない。想像できるのはミツバチ、養蜂、ハチミツげっと~くらいだろうか?


「舞様、植物たちが実を付ける原理はご存知ですか? 学校ではおしべとめしべが書かれた絵を見たことがあると思いますが、所謂、被子植物と呼ばれる種類の植物は、花の中央に子房を持ち、中の胚珠が受粉することで成熟し、実を付けます。そのためには花粉を相互にやり取りしなければならないのですが、完全に風任せ、とはいかないのです」


「そこで活躍するのが、このようなミツバチです。ミツバチは花の蜜を吸う際に身体に花粉を付けます。そして、その身体についた花粉を他に移すことで受粉を促進するのです。持ちつ持たれつ、木々と虫たちは相互扶余の関係にあることが多いのですよ。このミツバチたちはそれを担えるかどうかの確認用ですね。もちろん、彼の世界のハチミツを期待して、という理由もありますが」


「へ~、それでミツバチを試すんですね~」


「ただ、問題もあるんだ。このエリアに咲く花々は、構造自体は虫媒花に限りなく近い。だけど、舞、あっちで蜂みたいな虫を見かけたか?」


 それを聞いて、舞もハッとした表情になった。そう、彼の世界には虫が、ミツバチのような蜜を食する虫を見ないのだ。そう言えば、蟻などの小型昆虫も見かけない。これはどう考えてもおかしい。


「そう言われてみれば……見てませんね。私としては、いなくてラッキーくらいに思ってましたが、考えてみれば確かにおかしいですよね」


「あんなにも木々が実を付けた森に、虫がいない。地球で考えれば、これは明らかに変だ。虫を必要としない独自の進化をした、というのも考えられるが、だからといって虫がいなくなるということはないはずなんだ。地球だって人間が生まれる何千万年も前から蚊が存在している。恐竜が絶滅しても蚊は生き残るくらいだ。その生命力は半端じゃない。多少生態系がおかしいが、同じような進化の過程を辿ったのであれば尚の事な。なのに、彼の世界には、明らかに虫がいないんだ」


 何やら難しい話になってきて、舞の脳の処理能力はいっぱいいっぱいになりつつある。


「ま、今ここでこんなこと考えても理由なんてわからないけどな。俺たちだって難しい事考えてやってるわけじゃなくて、一番はハチミツが欲しいって理由さ。うまくいけば、新しいデザートができるかもしれないからな」


「! そ、それは良いアイデアですね。あの……」


 ハチミツとデザートという単語を聞いて、あっという間に歓喜の表情を浮かべる舞。現金というか、なんというか、でもこれくらい素直なほうが可愛いものである。


「もちろん、安全性が確認できれば舞様にも試食頂く予定ですよ。こういったものは、女性の方に意見を伺うのが一番参考になりますので。司様では当てになりませんから」


「ありがとうございます! 絶対にお伺いします!」


 蒼花の直球な意見に苦笑するしかない司。だが、的を射ているだけに否定もできない。約束を取り付けた舞はニッコニコである。異世界ハチミツ、それはどんな味がするのか。未知の物への不安よりも、スイーツへの期待感が凌駕しているので、今の舞は誰にも止めることはできない。


 ただ、1つだけ問題もあった。リリとクーシュ。ハチミツの存在がばれた時に、彼女たちが食べたいということは目に見えている。それをどう対処するか。彼女たちにハチミツを食べさせても良いものか。その時の光景を思い浮かべて、司は今日も苦悩している。

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