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5-53 続々と届く吉報、そして新たな問題発生

 寝ていた司は、身体に不自然な重みを感じて目を覚ました。ここ最近、いつもなら布団の中に入って寝てるはずのリリとクーシュにしては珍しい行動だ。目を開けると、まだ部屋の中は暗かった。随分と早い時間のようだ。


「ん?」


 そして、おかしいことに気づく。布団の中には、2つの温もりを感じる。主に右脇と左脇付近から。ちょっとだけ布団をめくって確認するとリリとクーシュだった。外気が入って肌寒くなったのか、むにゃむにゃ言いながら暖を取るように司の身体に密着してくる。


「司殿、司殿、少し相談したいことがあるのですが……良いですか?」


 この声には、もちろん聞き覚えがある。目が暗闇に慣れたおかげで姿も確認できた。


「ああ、珍しいな。ちょっとだけ待っててくれ。あっちで話そうか。リリとクーシュはまだ寝ているからな」


 バスケットボール大の生き物は了承するかのように布団から降り、ぽよんぽよんと跳ねて移動していく。動き自体は兎かカンガルーのようだが、見た目が球体なのでスーパーボールが弾んでいるようにしか見えない。司は寝ている2匹を起こさないようにゆっくりと布団から抜け出して、その後を追った。



「それで話しってなんだ? 何か問題でもあったか?」


 ちなみに、この毛玉の球体に個別の名前は無い。が、それだと呼んだりするときに不便なので、種族呼称はつけることにした。ハムスターが丸まった姿のような毛玉、略してハムダマ。リリが命名。


 はい、そこのあなた、ネーミングセンスを疑わないように。


 相談に来たハムダマは1つ、おそらく父親だろう。部屋の隅から寝息が聞こえてくるので、どうやら母ハムダマと子どもたちはまだ専用のベッドでお休み中のようだ。


「いえ、生活に何も問題はありません。いつも感謝しています」


 父ハムダマは律儀にペコリと頭を下げる。ただ、見た目は毛玉が前転しようとして止まったようにしか見えない。この辺は空気感で想像するしかない。


「それでですね、安全で、食事も十分に頂けているので、番が新たな子を得ることが出来まして……」


「おお、それはよかったじゃないですか」


 周りが寝ているのを配慮したので声は小さいが、司の声には喜びが伺える。先日、マッドチャリオットも子供ができたようだし、ウルの民たちも新しく番が2組できていた。もしかしたら、出産ラッシュが起こるかもしれない。


「それで、我々は出産が近くなりますと、外敵から身を守るために、雌は暗くて狭いところから出てこなくなり、周囲の警戒で気性が荒くなります。近づけるのも同族くらいでしょう。なので、子を産むまでの間の場所をお願いできないかと……こんないい暮らしをさせて頂いている立場でアレなのですが」


 見た目はアレだが、ハムダマだって小動物のカテゴリー。妊娠をすれば、自分の身を守る以上に子を守ろうとする意志が高まることは容易に想像できる。いまのところ暢気に闊歩しているのはマッドチャリオットの番くらいである。


「わかりました。今日にでも場所を確保しましょう。家の者達にも注意点を周知しておきます。食事についても、この部屋で父ハムダマさんに渡して、番の方に届けてもらうということで。他にも何か必要なものがあれば言ってください」


 父ハムダマは司に感謝するようにペコペコとお辞儀をして、彼ら専用のベッドに戻っていった。後ろ姿を見送った司は、ある問題を考えていた。


「これからの事を考えると、もし何かあった時のために医者とか生物学者的な人材がほしいなぁ。もしかしたら、もっと機会が増えるかもしれないし」


 兎神、執事や外務全般を担当、基本的に暇な時がない。橙花、食事や地下プラントの果樹の世話などの内務全般を担当、基本的に暇な時がない。蒼花、戦闘や防衛に関する管理全般を担当、基本的に暇な時がない。


 圧倒的に人員不足だった。むしろ、これまでたった3人で回ってきたところがおかしいのである。この先の事を考えると、早急に求人をしないと不味いかもしれない。


「でも、守秘義務とか専門知識とか、そもそもリリたちと仲良くやれるのかとか、問題がな~。全部をクリアして、うちに来てくれる人なんて都合よくいるもんかね?」


 そう、干支神家は外部から見れば異質そのもの。常識の外側にある世界である。


 条件を全てクリアできるピンポイントな人材が、その辺を都合よく歩いているわけがない。そして、求人広告のように募集すればいいわけでもない。最低限、司たちに理解があり、秘密を守れて、裏切らない、これが不可欠なのである。


「完全にうちだけの問題だし、舞たちに相談するのもな~」


 尤も、もし裏切れば兎神たちが秘密裏に消しそう、という怖い問題も絡んでくる。迂闊に知人を巻き込むのはリスクが高すぎるのだ。


 新たな問題に司はしばらく頭を抱えるのだった。

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