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5-51 友人のお願いと不可思議現象、どちらも不可解

 澪からの突然の連絡から翌日。


 予定になかった来客があったため、司は干支神家の応接室に座っていた。橙花がお茶と茶請けを出して一礼して退出していく。


「急にお伺いしてすいません~。あ、ありがとうございます~」


「司さん、久しぶり~、元気だった? まぁ、舞から少し聞いてたから元気なのは知ってたんだけどね! でも一応聞くのが社交辞令だよね!」


「うまうま」


 司の前には例の3人がいる。この光景に何かデジャヴを感じるのは気のせいだろうか。昨日の電話といい、舞がいないことといい、嫌な予感しかしない。


「で、今度はどんな用なんだ? 俺も暇じゃないから、要件だけ教えてくれると助かるんだけどな」


 実際、今日は不在にしていた2週間の間に溜まった雑務とリリたちの相手、そして昨日突如として発生したプラントエリアの異変に対応しないといけなかった。もはや、一分一秒が惜しい状況になっているのだ。


「まぁまぁ、そうおっしゃらずに~。女の子のお願いは、ちゃんと聞いてあげないとモテませんよ~」


「またまた~、そんなこと言っちゃって! 本当は時間あるんでしょ?」


「あ、これ、おかわりある? もぐもぐ」


 言いたい放題である。司の立場としては、舞のお願いなら優先事項として聞くことも吝かではない。だが、舞の友達からの『怪しいお願い』に対しては、かなり聞きたくないというのが本音である。面と向かって言う事はないが。更に、澪には前回の旅行でお世話になっていることから無下にすることも憚られる。


「前置きはいいから、本題に入ってくれ。今日は本当に忙しいんだよ……」


「あらら~? これは本当に忙しそうですね~。では、さくっとお話しますね~」


 若干、嫌な顔はするものの、律儀に話は聞こうとする司。忙しいにもかかわらず、門前払いしないところが、司の人の良さの表れだろう。


 ちなみに、3人はこの後、きっちり2時間居座って話し込み、おかわりを要求し、全てを平らげてから帰っていった。発言内容とは裏腹に、遠慮という文字は一切ないのだった。




 あの3人のお願いも大概だったが、司が現在進行形で抱える問題も、またやっかいだった。今、司の目の前には青々と生い茂る木々が映っている。ちなみに、ここはプラントエリアである。


「1日で、どうしたら、こうなるんだよ……」


 しかも、現在進行形で絶賛繁茂中である。訳が分からない。


「司、果樹の育成が確認できた。大樹様の近くを除いて、奥を森に、手前に果樹と木の実の樹を育てようと思うのだが、良いだろうか?」


 ヴォルフが頭の上に小竜を乗せて嬉しそうに司に報告してくる。ウルの民は森の民、彼らは森の在り方にも非常に造詣が深かった。学問ではなく本能や勘のようなものだったが。


 事の始まりは橙花が彼の世界産の植物を育成しようとしていたことからだが、それまで芽すら出していなかった植物たちが一斉に発芽し、あっという間に成長した結果がこれである。昨日まで橙花が色々手を尽くしていたのだが、土が合わないのか、育成条件が合わないのか、状況は芳しくなかった。


 では、どうしてこうなったのか? 主犯は小竜である。


 橙花が試験的に作った畑。試行錯誤しても成果がでていないそれを見た小竜は、何を考えたか地面に向かって魔素の水をかけ始めた。こちらに来る前に大量に飲み込んだ魔素水を吐き出す姿は、酔っ払い親父がリバースするようなビジュアルでとても見れたものではないのだが、効果は抜群だった。


 魔素水をかけられた種たちは、一斉に発芽。文字通りメキメキと成長して、あっという間に成木まで巨大化。あの硬いヤシの実を複数実らせた。それを見ていたヴォルフたちはすぐに橙花を呼び、情報を共有。どこで何を育てるかを審議して、プラントエリアの大規模農園化計画がスタートした。


 本来の橙花であれば急速な環境の変化に躊躇しただろう。だが、今回は事情が違う。彼の世界の実りが得られるということは、魔素補給が継続的に見込めるという事なのだ。それは、司たちを危険に晒す可能性が減るという事。橙花にとっては最優先事項であった。


 ウルの民が総出で強靭な脚を持って地面の土を掘り起こし、種を植えていく。土をかぶせられた種たちに、小竜が少量の魔素水を注いでいく。今度は、発芽はしたが、急激に成長しなかった。かける魔素水を調整した結果である。これは発芽した状態から、魔素水なしでも成長するかを確認するためでもある。


「まぁ、ヴォルフたちが嬉しそうだから、このままでいいか」


 相談に来たヴォルフと小竜に許可を出し、珍しくウキウキした様子で戻っていくヴォルフの背中を見送った司は、目の前に広がる問題を見ない振りすることにした。尤も、これのおかげで司の仕事がさらに増えるのだが、今は知らないほうがいいのである。

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