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5-45 干支神家でのアレコレ②

 一方、兎神に拘束されて移送中の舞と宗司は、不思議な空気に包まれていた。宗司はケラケラと笑っているが、舞は悲壮感に苛まれていた。兎神の表情はうかがい知れない。


「うううう、お母様に何て言い訳すればいいんでしょうか……」


「ははは! 素直に話して、怒られればいいではないのか? あ、まさか……母さんに黙って出てきたとかじゃないよな? 違うよな? な?」


「黙って、じゃないですよ? でも、急な話だったので、許可をもらう前に家を飛び出しちゃいましたけど……」


「……」


 話しの途中から宗司が不安になったのが現実となった。まさかの、家の許可を得て舞がついてきたわけではなかったという事実。だから、戻り次第身柄を拘束せよ、という命令が下されたのか。それを知った宗司の顔は無表情を通り越して、完全にお通夜だった。


 舞の母親、凛の性格から考えると、黙って出てきた場合は身も凍るようなお説教、またはそれに準ずるような苦行が約束されていることは間違いないだろう。そして、宗司が巻き込まれる可能性が高く、お互いに執行猶予が与えられるはずもない。死刑執行の時は、刻一刻と、確実に近づいてきていた。


「そんなにご心配なさらなくても、そんなに無体なことは成されないでしょう。我々にお話になった時も笑いながらおっしゃってましたから」


 兎神はフォローするが2人はそれを素直に受け取ることはできない。凛の子供だけあって、小さい頃から自分の親のことはよくわかっているのだ。凛の笑顔の裏には、時として般若が隠れていることに。


「舞様、宗司様、このたびはありがとうございました。また明日の10時にお迎えにあがりますのでよろしくお願いします」


 帰りの道中をドナドナされるが如く、戦々恐々としていた舞と宗司だったが、ついに運命の瞬間を迎えることとなった。ちなみに、兎神は2人を降ろすと最低限の業務連絡だけをして帰っていった。


「門の前、オールグリーン……」


 しかし、いつもは門の前に仁王立ちして待っているはずの父、巌の姿が見えないことに一抹の不安を感じる。


「庭、オールグリーン……玄関、オールグリーン……現時点では敵性勢力確認できず」


 不自然に静まり返る武神家に足を踏み入れる2人。忍者の如く、ほぼ無音で歩いて行く。


「これより戦地に潜入を試みる……尚、強大な敵性勢力との遭遇が予想される。任務達成が困難な場合は即時撤退せよ。繰り返す、遭遇時は即時撤退せよ」


 どこのMピーSか。それにしても、何気に潜入技術の高い2人。武神流に忍術のような技術はなかったはず。一体、何と戦うことを想定しているのか謎である。


 敵性勢力が待機していると思われる台所と道場方面を避けて、廊下をスルスルと抜け、自分の部屋へと向かう舞。あれ? 宗司はどこへ?


 玄関を入って、時間にして数十秒、誰とも遭遇することなく自室にたどり着くことができた。僅かな安堵のため息と共に、ふすまを開けて……。


「……おかえりなさい。舞」


 凍り付いた。ふすまを開けた体勢のまま、ほんの少しの身動ぎ無く、まるで彫刻の様に。


 部屋の真ん中、舞の視線の先にいたのは母親の凛。どこにも見かけないと思ったら、先回りして部屋に潜んでいたようだ。流石、母親、娘の行動はお見通しであった。


 それからというもの、言葉に表すには憚られる様な出来事が起こったりはしたが、舞は無事に武神家に帰宅を果たしたのだった。


「すまん、妹よ……兄はあれだけは今でも苦手なのだ……」


 裏切りの宗司がこの後どうなったかは、誰も知らない……。




「それは災難というか、何というか……まぁ、でも結果的には許してもらえてよかったじゃないか」


「ええ、本当にえらい目に遭いました……過去最大級の危機でした。しかも、どこかの誰かさんは、いつの間にか1人で逃亡していますし。まさしく孤軍奮闘でしたよ」


 次の日、舞は約束通り干支神家を訪れていた。


「なるほどな~、それで宗司さんはこうなってるわけね……」


「いやいや、司よ。納得していないで何とかしてくれんか? そろそろ足が厳しくなってきたのだが……」


 宗司はというと、床に正座をしていた。


「宗司兄の戯言は無視して結構ですよ。まだまだ誠意が足りてないように感じますし」


 舞が割と無体な発言をしたところで、客間にトタトタと足音が近づいてきた。


「舞さーーーーん!」


「ぴぴーーーー!」


 開けっ放しの扉から室内に駆け込んできたのは、ちびっ子2人組だった。舞を目掛けてジャンプしてきた物体を綺麗にキャッチ、正体はリリだった。もう1つは司を目指してジャンプしようとして、こけた。


「がふっ」


「ぴぴ?」


 手元が狂って、クーシュは正座している宗司にタックルした。本気の一撃ではないにしろ、クーシュはかなりの攻撃力を有しているので激突された宗司は堪ったものではない。あれ? 間違えた? と言わんばかりに首を傾げたクーシュは、宗司にタックルしたことは何事もなかったかのように司に飛びつき直した。今度は距離が短いのでかなりマイルドな一撃だった。まさに、不意打ちの交通事故である。もらった宗司はピクピクしている。


「さて、それでは報告会を始めましょうか」


 最後に兎神が入ってきて、遠征の報告会が始まった。

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