1-15 灰色の男はファンタジーな生き物と出会う⑦
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「さてご飯も終わったところで、少し話を聞きたいのだが、いいか?」
子犬?がご飯を食べ終わり、食休みもできた頃に、俺は唐突にそう切り出した。
「あの、ご飯ありがとうでした。不思議な味でしたが、おいしかったです」
子犬?なのに律儀にペコリと頭を下げた。きちんとお礼が言えるなんてえらい。普通の犬とは違うのだろう、頭も相当賢そうだ。まぁしゃべってる時点で違うんだろうが。
「おう、それはよかった。まず、何て呼べばいい?名前はあるのか?」
まず簡単なことから聞くべきだよな。
「わたしの名前はリリです。ウルの森の民です。あの、あなたはだれなのでしょうか?ここはどこなのでしょうか?」
「そうか、じゃあ、これからリリと呼ばせてもらう。俺の名前は司だ。ここは日本という国で、ここは俺の家だ。で、そのウルの森というのはなんだ?リリの両親はそこにいるのか?」
名前はまあいいとしよう。まず問題が1つ、ウルの森の民という単語、ウルの森ってなんだ?民ってことは一族みたいなものがあるのか。しゃべる犬の一族……うーん、地球上にそんなところがあるのだろうか。あとでネット検索するか。
「司さん、ですか。日本?国?はよくわかりません。わたしは生まれてからずっとウルの森で暮らしていましたから、両親もウルの森にいると思います。……うう、おとうさん、おかあさん……わうわうわうわう」
子犬?が突然泣き始めた。えっ、俺なんか悪いこと聞いたのか!?!?もしかして、両親になにかあったとか?そうだとしたら、まっず、俺、地雷踏んだ?
「すまん、言いたくなかったら言わなくていい。それよりも大丈夫か?」
「………いえ、大丈夫です。両親にはしばらく会えないと思いますが、大樹様が無事だとおっしゃってましたから大丈夫です。あと、わたしは大樹様に言われて、ここに来たのだと思います。この日本?というところで大樹様の若木を育ててほしいとおっしゃってましたから」
あぶぶぶぶ、これで両親が死んでたとしたらやばかった。とてもじゃないけど、俺に子供を慰めるスキルなんてないから。あと、また問題、どうやらこいつはタイジュ様?とやらの指示で日本に来た事、そして日本で若木を育てることが目的らしい。疑問がいっぱいだが、とりあえず近々の課題からだな。難しいことは先送りにしておこう。兎神とかにでも考えてもらえばよさそうだし。
「そうか、これから行くところはあるのか?ないなら、しばらくは俺の家にいるといいぞ。外はまだ雨が降っているしな。あと、タイジュ様の若木というのはどうやったら育てられるんだ?」
「こんな立派なおうちにいていいんですか?若木のことはわかりません。大樹様が若木と本を下さるとおっしゃってただけですから。わたしには何のことだか、これからどうすればいいのかも……わうわうわう」
家にいていいと聞いた時にはピーンとした耳が、若木の話になったら、途端にへにょんとしてしまった。ついでにしっぽもへにょん。本当になにをすればいいのかわからないんだろう。急な環境の変化で混乱もしているだろうしな。
「ま、まあ、これからのことはおいおい考えていけばいいさ。そのタイジュ様とやらも、リリにできないことを言うようなことはないだろう。まずはお風呂に入ろうか。リリが外にいるときに雨に濡れてたからな」
「……はい、ありがとうございます。あと、お風呂って何ですか?」
「お風呂とはお湯で身体を洗うことだな。今まで身体が汚れたらどうしていたんだ?」
「普段は何もしていませんでした。すごく汚れてしまった時は、昼間の温かい時間に池で水浴びをしたくらいです。お湯?というのもよくわからないです」
まぁ、野性の生物だとそんなもんだよな。自分の匂いも消えてしまうしな。むしろ水浴びだけでもしていることのほうが珍しいくらいだ。しかし、ここは日本だ。郷に入れば郷に従ってもらおう。
「では、早速、風呂場にゴーだ。リリを拾った時には泥だらけだったからな。少しは拭いたからマシにはなっているが、ちゃんと身体を洗わないと家が汚れてしまうからな。リリには毎日とは言わないが、これからはできる限りお風呂に入ることをお勧めする」
俺はそう言うと、リリを持ち上げて風呂場に向かうのだった。俺もついでに風呂に入ってしまおう。
近々の課題としては、あとはトイレどうするかだよな……どうしよ。




