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1-14 灰色の男はファンタジーな生き物と出会う⑥

4/26 文章の行間を微修正。

 夜中に気配を感じて、寝てた意識が半分覚醒する。しばらくすると、なんか周りでゴソゴソと物音が聞こえ始めた。む、まさか泥棒か? よしこら、フルボッコにしてやろう。暗闇の中でいつでもすぐ動けるように周りの気配を探る。幸い、今まで寝ていたし、この暗闇で目は暗順応していてうっすらと見えるからな。


「…………わん?」


 なんかとても犬らしくない鳴き声が聞こえた気がした。そして、それが聞こえた瞬間、体の力と緊張感が一気に抜けた気がした。なんだ、そのとってつけたような、語尾のわん? は。犬はもっと、こう鋭く、野性的でたくましく鳴くものじゃないのか?


「ん、起きたか」


「……あの、ここはどこでしょうか? あなたは、だれでしょうか? ……わん?」


 暗闇で姿はあまりうまく見えないが、声を聴く限り、すさまじく不安そうな声だった。




 ん? 声? …………えっ!?




 いまなんとおっしゃりました? この子犬? がいきなり人間の言葉をしゃべったように聞こえたんだが。えっ、こんな衝撃を受けたのはかつてない。こんなことがあっていいのか? いやないはずだ。しかし、これは現実に起きていることで。次の俺のリアクションは一体どうすればいいんだ、というかこれは突っ込んだほうがいいのか? まさか俺の知らないうちに、世界にはしゃべる犬が発見されたのか? 俺は無知だったのか、ガーン、ショックだ。うーん。うーん。うーん。


 思考がぐるぐるとテンパっている俺を他所に、ぐうっと、けっこう大きな音が鳴った。名誉のために言っておけば、断じて、俺のお腹からなった音ではない。そうなると犯人はおのずと一人しかいないわけだ。


「……おなか、空いたのか?」


「……はい、ここしばらく何も食べてないのです。……わん」


 心なしか声に元気もない。本当に何日もご飯を食べてなくて力もでないような、こんなへにょんとした声を聞いたら、さっきまで考えていたとこなんてどうでもよくなってきた。


「そうか。ちょっと待ってろ。明かりをつけるから驚くなよ?」


「……何か食べるものを頂けるのですか? ……わん」

 

「この家にある、ありあわせのもので悪いがな。今、用意しよう」


 俺はそういうと立ち上がって照明のスイッチを入れる。いきなり明るくなったから目が痛いな。子犬?が明るさに驚いて暴れださなければいいのだが。


「わわわわ、急に夜が昼になったです。……わん」


 軽くパニックになっているようだった。そりゃそうだよな。まぁ、驚いて急に暴れないだけマシだった。噛みつかれフラグは未成立で回収だな。


「落ち着け、これは周りを明るくする道具だ。まだ外は夜で真っ暗だ」


 子犬? に声をかけつつ、あらかじめ用意していたマッシュポテトをフライパンからお皿に盛りつける。あと切ったキュウリ、トマトを冷蔵庫から取り出す。念のため空き皿1枚を用意して、お皿3つをもってリビングへ戻る。子犬? はまだ驚いているようで、周囲を見回しながらアワアワしていた。


「まずは食べるといい。今はこんなものしか出せないけどな」


 そう言って、マッシュポテトとキュウリトマトのお皿を子犬? の前に置く。野生の生き物は食べているときは周囲を警戒するって書いてあったからな。もう1枚の空のお皿を机に置いてキッチンへ戻り、水の入ったペットボトルを冷蔵庫から取り出して持っていく。


 戻ったリビングでは、子犬? がマッシュポテトを凝視して固まっていた。


「食べないのか? ネットで調べて作ったから食べられなくはないはずだぞ、たぶん」


 声をかけると、子犬? は石像から戻ったかのように、こちらを見上げてきた。


「これは……どういう食べ物でしょうか?初めて見ます。……わん」


「これは芋を茹でて潰したやつだな。こっちの緑のやつは野菜のキュウリ、赤いやつはトマトというものだな」


 子犬? は恐る恐るといった感じでマッシュポテトをペロペロして味見していたが、思い切ってぱくりと一口食べた次の瞬間、猛烈な勢いで食べ始めた。マッシュポテトをパクパク食べたと思ったら、キュウリをポリポリ、トマトをはぐはぐ、またポテトをパクパクととても忙しい。食べっぷりを見る限り、相当お腹が減っていたのだろう。これ、明日はもうちょっとマシなものを食べさせてやりたいな。あとで調べておくか。


 そんなことを考えていると、ものの2分もかからず完食となった。食べ終わったのを見て、空のお皿に水をいれて、目の前に置いてやると、うれしそうにペロペロと飲みだした。


 さて、次は風呂に入れてやりたいのだが、問題は素直に入ってくれるだろうか。

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