5-28 天空を翔る母鳥③
改めて、あけましておめでとうございます(*´ω`*)
今年もリアモフ!をよろしくお願いします。
久しぶりのお風呂を堪能した一行は、皆がほくほく顔だ。特に、舞にとってお風呂はかなりの死活問題だったせいもあって、ご機嫌と言っても差し支えないレベルだった。
「とっても気持ちよかったです。帰りにも、是非、寄っていきましょう!」
そして、帰りの予定にも温泉が内定した。……舞の一存で。
まぁ、リリが舞にうんうんと頷いている時点で、司は賛成するしかない。そして、宗司が舞に反対することはほとんどない。温泉ペンギンに至っては、司にくっつき虫である。つまりは、反対意見がないイコール舞の意見が通るということなのだ。
ちなみに、こういう場合は男子陣に発言権はないのをよく覚えておくと良い。男子がすることは、何も言わず、ただ素直に女子の意見を了承するのみ。多数決とかは、この場においては全く関係ない。長い物には巻かれよ、である。
それぞれの準備が終わり、一行は母鳥の背中に乗り込む。姉妹たちは母鳥のお腹に入り、クーシュは司の胴体にくっついた状態である。もはや、ここが定位置になりつつある。
「今から向かえば、日が暮れるまでには着くであろう。では、まいろうか」
そう言い終わると、司たちが背中に乗ったことを確認して母鳥は再び空に舞い上がる。
現在は太陽が中央を回った辺り。こちらの世界も、地球とほぼ同じ時間軸で動いているのがわかっているので、あと数時間も活動すれば夕暮れになるだろう。
クーシュたちにとっては昼だろうが夜だろうがいつも変わらないのだが、司たちはそうはいかない。人間には食事、睡眠、お風呂、トイレなどの生理現象という名の制約がある。驚くべきことに、母鳥はそう言った司たちの生態をこの短時間のうちに把握しつつあるのだ。
移動も後半ともなれば、司たちも慣れたもので、各々が自由気ままに空の旅を過ごしていた。司はクーシュのベッド状態にはなってはいるがそれなりに寛いでおり、舞はリリのブラッシング作業に勤しんでいるし、宗司に至っては筋トレをし始めていた。飛んでいる母鳥の背の上で、である。このメンバーの環境適応能力は異常なのではなかろうか。
母鳥は背中の司たちを気にする様子もなく目的地へと進んでいた。どうやら飛ぶことに集中をしているようだ。
ただ、温泉地を飛び立ってからは何回も方向を修正しながら……まるで、何かを追いかけているような動きで飛んでいるのが不思議だった。母鳥のことを信頼してしまっているのか、そんな動きに司たちは気づいていないようだ。
「今日は随分と動いておるな……何か、嫌なことでもあったのか」
母鳥がぽつりと溢す言葉が、言い知れぬ不安を掻き立てる。それからしばらくは無言で飛行が続き、時間的にそろそろか? というところで司たちに注意があった。
「そなたたち、目的のものについたがゆえ、ここからは少し手荒な移動となる。振り落とされぬように注意しておくがよかろう」
「え?」
司が気の抜けたような返事をしたかどうかくらいで、これまでとは世界が一変した。
「えええええ!?」
「舞! しゃべるな! 舌をかむぞ! あと、死ぬ気で捕まっていろ!」
周囲の空間が歪むかのような急激な加速。そして、母鳥は90度以上あろうかという綺麗なターンを見せた。ただし、方向は真上に、である。
それはジェットコースターと例えるには生ぬるい。戦闘機のアクロバット飛行でもここまではやらないであろうとも思える。空気抵抗以外を完全に無視し、安全性を度外視した3次元の絶叫マシーンであった。
謎の力で守られているとはいえ、母鳥の宣言通りに、司たちは振り落とされないようにしがみ付くのが精いっぱいの状況だった。手を放した時のことは想像もしたくない。
あっという間に雲を突き抜けて、文字通り太陽が1つだけしかない世界。つまりは成層圏へ達すると、それまで畳んでいた翼を大きく広げてピタッと減速する。謎の力が働いていなかったら、反動で身体がバラバラになってもおかしくない。
「ひぃぃぃぃ」
時間にしては1分くらいだろうか? 大凡、現実世界では体験できない恐怖、生身で音速の域を味わった司たちだったが、意識を手放さなかったことだけは褒めてあげてほしい。
「あれが、そなたたちが求めるもの。目的の場所だ」
母鳥が指し示すところにあるもの。それは、一言で言えば空を飛ぶ岩の塊であった。3人と1匹にとってみれば、まるで現実味がない代物。もはや、夢物語である。
司たちは目の前の光景が信じられずに、馬鹿みたいに口を開けて呆けていたが、そんなことを気にせずに母鳥は空飛ぶ岩山の上方部に向かって飛んでいく。
そして、そこで司たちが見たものは、これまたわけがわからないものだった。
「これは……バカでかい甲羅? 何これ」
そう呟いたのも仕方のないことだろう。




