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5-25 クーシュのお家にご招待!②

 今日も今日とて、司の朝はクーシュの餌付けから始まった。


 母鳥が言うには、本来は食事をとる必要が無いはずだが、なぜクーシュが欲しがるのかはわからない。しかも、舞や宗司が与えようとしても見向きもせず、司が手渡ししないと食べてくれない。隣で、無言のままジャーキーをガジガジしているリリの視線が怖い。



「さて、これからどうするかなぁ……」


 食事も終わったのでこれからの事を話し合う3人と1匹。


 今回の依頼は、紅い石を泉に浸して状態を確認することである。宗司の記憶では目的の泉は山の頂上、火口の中央にあったらしい。現在はクーシュの巣があるところで、その姿は見る影もない。母鳥の話では、竜の涙と言っていたが、泉はかなり前に枯れたようだ。


 では、次。宗司の身体を治した泉とは何なのか。地面から沸くでもなく、雨が降って溜まったわけでもなく、ある晴れの日の夜、僅かに天空から滴る雫が作る泉。まるで星月から光が零れ落ちるが如く、不思議な色をしていたようだ。


 不思議なのは、その成り立ちや色だけではなく、泉で行水する者に語り掛ける事。それは周りにいる者には聞こえず、本人の精神に直接響く声音。しかし、宗司には共鳴したが、巌にはしなかったことから、万人が得られるわけではないようだ。本当に泉なのかどうかも怪しい。


 では、次。宗司の身体が治ったのはどうしてなのか。宗司曰く、声と契約した結果だそうだ。詳しくは、宗司もよくわからないのだが、宗司の場合は頑強な身体を望む替わりに寿命を失ったらしい。正確にはわからないが、声のニュアンスとしては恐らく半分くらいとのこと。宗司本人は動けない身体で一生を過ごすより、50まででも満足して生きたほうが楽しいとあっけらかんと話していた。しかし、舞にとっては十分に大問題である。


「なんか危なそうな感じですね。生命を代償とする契約なんて、悪魔契約みたいじゃないです? それ、本当に大丈夫なんですか?」


「声の感じは悪い印象ではなかったな。むしろ、事務的すぎて機械と話しているかと錯覚するくらいだ。大丈夫かどうかなんてわからん! が、私が五体満足なのだから効果は折り紙付きだろう?」


 司の懸念も尤もだが、宗司の言い分も説得力がある。どういう力が作用したのかはわからなくても、実際に宗司の身体は治っているのだから。


「情報は整理できましたけど、肝心の泉が無くなってしまったのでしたら、依頼のお仕事を含めてどうしたらいいんでしょうか?」


「いいんでしょうか?」


 舞とリリがクエスチョンマークを浮かべる。首を傾げる動きがシンクロしていてとても可愛い。


「それなんだよなぁ」


 その疑問には司も宗司も答えられない。しかし、助け舟は意外なところから現れた。


「なんだ、おぬしたちは竜の涙に用があったのか?」


 クーシュの母鳥である。


「ええ、ですが、泉自体が無くなってしまっているので、途方に暮れているのですよ」


「なるほどな。しかし、アレに用があるならば、大元に会いに行けばいいのではないか? あんな力の残滓に頼る必要はないだろう」


 泉の大元とは何なのか。余計に頭がこんがらがってきた。


「ここ以外にも、その竜の涙があるのですか?」


「昔、いくつか見たことがある。だが、今もそこにあるかはわからないし。時間と共にいつか消え去るようなシロモノだ。いつどこに現れるかわからないようなものを探すだけ時間の無駄だろうな」


「それでは、大元とは何なのでしょうか? 私たちはアレが泉としかわからないのです」


「あれは竜の涙なのだから、持ち主は竜だろうに」


 母鳥の答えは明確だったが、宗司たちにはさっぱりだった。宗司が見つけた泉は、竜が作ったものだったのだろうか。


「あなたは、そこに行くことができるのですか? もし、俺たちが望んだ場合は……」


「まぁ、おぬしの頼みであるならば、手を貸してやろうぞ」


 母鳥は司とクーシュを見つめてそう言った。司が母鳥に尋ねるよりも早く、求めている答えが返ってきたことに驚きを隠せない。そして、なぜここまで協力的なのかも。


「おぬしには馬鹿娘が懐いておるからな。わらわは、その子の行く末を見てみたいのだ」


「ぴっぴぃぴぴぴ!」


 答えの真偽はわからないが、このまま手掛かりなしで帰るよりはこっちに賭けたほうが良い。3人は視線だけを交わして、瞬時にそう判断すると同時に頷いた。1匹、盛大に文句を述べているクーシュがいたが、母鳥にはあっさりと無視されてしまっていた。


 改めて母鳥に依頼をすると、3人はキャンプを片付けて出発する準備を整える。ここからの移動は母鳥の背中に乗せてもらえるようだ。貴重な航空戦力をゲットである。


「おまえたちは、こっちに入りなさい」


 母鳥は子供たちごと移動するようで、巣にいた2匹をお腹の袋に収納した。クーシュは司にコアラ状態なので背中のほうに乗るようだ。


「では、まいろう」


 その後、司たちを背中に乗せた母鳥は素早く大地から舞い上がると、あっという間に火口を抜けて天空に飛び立った。

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