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5-23 クーシュのお家にご招待!①

 司たちが、クーシュの母鳥に連れてこられたのは山の頂だった。そして、山頂にぽっかりと口を開けている火口から中へと降りていく。


「ええええ、だだだだ、大丈夫なんですか? ここに入って……」


「ぴぃぴぃぴ!」


 うろたえる舞にクーシュが大丈夫だと説明しているように見える。自分の巣だから大丈夫だと言いたいのだろうか。本当か? 司はすでに悟ったような目をしているし、宗司は何か考え事をしているようで無言だ。


「案ずるな、人の娘。この山は眠っておる。今、おぬしが懸念しておるようなことにはならぬよ。尤も、眠っておるだけで、死んでおるわけではないがな」


 クーシュの母鳥が説明してくれるが、根本的な不安の解消にはならなかった。むしろ、不安感がより煽られてしまったような気もする。気のせいだと思いたい。



 火口のど真ん中に降り立った一行が目にしたのは、凹レンズのように大きく窪んだ地面だった。その地面の中央には、スケールを数十倍以上に大きくしたツバメの巣のようなものが見える。


 巣の近くで降ろされた司は、クーシュに急かされるように中央部へと向かう。巣にはクーシュと同じような形をした、丸々と太った灰色のペンギンのような生物が2匹、寄り添ってすぴすぴと寝ていた。色は違うが、どうやらクーシュの姉妹のようである。


「そなた、我が子が迷惑をかけたな。ここまで届けてくれて感謝しておる」


 無事に巣まで帰ってきたクーシュは司からスルスルと降りると、ポテポテと姉妹のところまで歩いて行き、2匹に抱き着くようにして自分も寝息を立て始めた。気丈に振る舞っていたクーシュも離れ離れになっていた寂しさがあったのかもしれない。それを見届けた母鳥が司を労ってくれた。


「これで一件落着ですね。よかったです」


「ああ、やっぱり家族と一緒が一番だからな」


 舞は3匹が重なって寝ている光景を見て、少し目に涙を浮かべていた。そして、お腹に感じる重みが無くなってしまった司は少しだけ寂しそうだった。


 それを察したリリが司に駆け寄って身体を擦り付ける。リリの優しさを感じながら、身体を撫でているとすぐに気持ちも落ち着いてくる。クーシュの事は気になるが、司たちにもやるべきことがあるのだから。いつまでも落ち込んではいられない。


「宗司さん、これからどうします? って、宗司さん?」


 司は振り返って宗司に声をかけるが、宗司は相変わらず難しい顔をしたままだった。思い返せば、火口に降りるときくらいから、ずっとこの調子である。


「母鳥殿、少し伺いたいことがあるのだが、いいだろうか?」


「なんだ? わらわにわかることであれば答えよう」


 意を決したように宗司が母鳥に問いかけて、


「私の記憶違いでなければ、以前ここには泉があったはずなのだが、ご存知ないだろうか?」


「ああ、竜の涙のことか。それならば、だいぶ前に枯れたよ」


「竜の涙? そうですか、泉は枯れましたか……」


 宗司はある程度、回答の内容を予想していたようだ。そして、どうやら目的地はここだったのだが、肝心の泉が無くなっている。宗司の表情を見る限り、これでは当初の目的が果たせなさそうだ。それにしても、泉なのに竜の涙とはこれ如何に。宗司もその名前は知らなかったようだ。



 今日はクーシュの巣の近くでキャンプをすることになった。今後の事も話し合わなければいけないし、場合によっては帰還も検討しなければならない。宗司は記憶の中の情報を整理して、司たちに伝えることにしたようだ。それをするためにも時間が必要だった。


 それに、ここでなら外敵の心配もほとんどないため、3人は壁際にテントを設営して食事の準備を行っていく。食事をして糖分を摂取しないと考える力も低下してしまうためだ。特に、宗司は先ほどの戦闘でかなりのカロリーを消費しているはず。


「ぴっぴー!」


 食事を作り終わった段階でクーシュが起床した。ポテポテと巣を抜け出すと、司によじ登って定位置に収まる。そして、空腹だと言わんばかりに鳴き始めた。


「わらわたちの一族は気脈からの力を取り込むのでな。そのような食事を必要としないはずなのだが……ハァ、すまないが、迷惑でなければ世話をしてやってもらえないだろうか?」


 母鳥も困ったような顔をしていたが、司たちにクーシュを任せることにしたようだ。母鳥、姉妹とも毛並みの違うクーシュは変な個性を持っているようだ。突然変異なのだろうか?


 司たちとしてはクーシュが1匹増えても負担がそれほど増えるわけではないので、母鳥の提案を快諾する。食料は有限で手持ちの備蓄は減るのだが、お腹を減らしている子供を隣にして、自分たちだけが食事をするような猛者は3人にはいない。


 司の手からナッツと水を強奪したクーシュは満腹になったのか、司に抱き着いたままの状態ですぴぷーと寝息を立て始めた。


 クーシュの姉妹2匹は、その食事風景を不思議そうに眺めていたのだが、最後まで欲しがるような素振りを見せることはなかった。むしろ、何でそんなの食べるの? と言わんばかりの表情をしていた気がする。クーシュが寝ると姉妹たちも巣の中央へ行って丸くなった。


 どうやら、クーシュは相当の変態ならぬ変鳥のようだ。

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